表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
21/130

20 眠れない夜に

その日、あたしはなぜか寝付けない夜を迎えてました。

今日も1日、いっぱいがんばったから、体は疲れてるのに。

ちょっとお水を飲もうかなって思ったけど、水差しにお水を汲むのも忘れてたみたい。

しょうがないから、厨房まで行くことにした。



キキィ…

部屋の扉が音を立てて開く。

お客様もお休みだし、マリーさんもクルトさんももう寝てるはずだから、静かに行かなきゃダメなのに。

扉の音は意外と大きく鳴っちゃう。



あたしの部屋は2階の一番奥の、廊下の角を曲がったとこにある一番小さな部屋。

マリーさんとクルトさんがここを買い取る前に、やっぱり従業員の人が使ってた部屋だっていってた。

お客様が泊まるには、ちょっと小さすぎる部屋。

その奥の部屋から階段までは、お客様の部屋の前を通らなきゃいけない。

できるだけ音をたてないように、そろり、そろりと足を踏み出す。



無事廊下を通り、階段に差しかかる。

ギシ、ギシ…

普段はあんまり気にしてなかったけど、階段を踏み出すたびに音が鳴る。

真っ暗な食堂は、それでも窓の隙間や、扉の隙間から、わずかに差しこむ外からの光で、ぼんやりとその景色が見えてる。

イスはテーブルに全部上げてあるから、引っ掛けることもないはず。

テーブルの間を抜けて、カウンターの脇から厨房に入る。



厨房の扉から出た廊下の向かいには、マリーさんとクルトさんのお部屋や、物置のお部屋が並んでる。

音をたてないように…

お水をためてるかめは…これだよね。

ふたを開けてみると…


「あれ?からっぽ…?」


思わず口から言葉が出ちゃった!あわてて口を押さえてじっとする…

だいじょうぶ、誰かが起きた気配はないみたい。

それにしても、お水使いきったのかなぁ…

どうしよう…っていっても、すごくのどが渇いてきたし、お水なしでは眠れそうにない。

やっぱり井戸まで行くしかないよね…

厨房に水差しを置いて、代わりに桶を持ってお勝手口に向かう。

カチャ。

よかった、鍵はしっかり油も差してあるみたいで、そんなに大きな音もならなかった。



「ふわぁ…」


扉を開けると、よく晴れた空にたくさんの星と、少し欠けてるお月さま。

思ったよりも明るくて、これならあんまり怖くない…かな…

でもでもやっぱり、ちょっと走って井戸に向かう。

夜の街は、お昼と全然違う表情で、まるで別世界のよう。

淡い明かりの中を1人、すこし寂しいような、そんな気持ちも感じながら。



井戸をこぐとお水が出てくる。持ってきた桶に半分くらい。

そんなにもいらないかもしれないけど、こぼしたらやだし、半分くらい。

よぉし、それじゃいそいで帰らなきゃ。

桶を持ち上げようとしたとき、不意に強い風が吹いて、寝間着の裾がひるがえる。

慌てて押さえて、目をつむる。



風がやんで、目を開けると、あたりは暗くなっていた。


「あ、れ?」


急に不安が押し寄せてきた。

見上げると、空に黒い雲がかかってる。

さっきまで晴れてたはずなのに…

お水を汲んだ桶を持って、あたしは走り出した。



宿のお勝手口が見えたところで、やっとちょっとほっとした。

そうだ、あんまり音をたてないようにしなきゃ…

…あれ?扉閉めなかったっけ…ちょっと隙間が開いてる。

そっか、たくさんの星とお月さまを見て「ふわぁっ」ってなって…閉めるの忘れてた、かも?



厨房に入って鍵を閉める。

カチャリ。

部屋の中は外よりずっと暗い。しばらく目が慣れるまではじっとしなきゃ。

ぼんやりと部屋の中のようすが見えてきた。

桶からゆっくりと水差しにお水を注ぐ。

早く部屋にもどらなきゃ。



食堂を抜けて階段を上がってく。

やっぱり曇ってるせいかな、行きより暗い気がする。

ゆっくり、ゆっくり…ギシ、ギシ…

できるだけ音が立たないように。



あとは廊下を渡りきれば、部屋に帰れる。

そろり、そろりと進んでく。

角を曲がればあたしの部屋だ。



無事に部屋の前にたどり着いた。

あれ、扉閉めてなかったっけ…こんなのばっかりだ。

中に入って扉を閉める。

少し音が出たけど、きっとだいじょうぶだよね。



隅の台に置いてたコップにお水を注いで飲む。

汲んできたお水は、まだ冷たくて、のどにしみこむみたい。

ふぅ、満足できたかな。

ちょっと動いたからかな、眠れそう…かも?

台に水差しとコップを置いてベッドに向かう。



ベッドに入ろうとしたとき…








あたしに向かって…












何かが飛びかかってきた…










生あたたかい何かが…






















「ミア、遅いわね…?」


いつもならもうとっくに降りてきているはずなのに、今日はどうしたのかしら?

ちょっと見に行きますか…



コンコン。


「ミア?起きてる?」


返事がない…あら、鍵がかかってないわね。

ガチャ。



そこでわたしが見たものは…










床で寝てるミアと…










ベッドにちょこんと座ってる黒いネコでした…

せっかくなので怪談っぽく…

しようと思ったけれど難しかったですTT

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ