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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
18/130

17 来客

「マリーさん、おはよーございます!」

「おはよう。今日もしっかり頼むよ。」


昨日の晩は何かいろいろあったけど、今朝もいつもと同じように始まったみたい。


「それじゃテーブルの準備お願いね。」

「はーい。」


さすがにもう慣れてるし、端のテーブルからイスを降ろして拭いていく。

マリーさんはカウンターの中でいろいろ準備中。


「終わりましたっ。厨房入りますね!」

「ご苦労さん、頼んだよ。」


いつも通りマリーさんは、顔を上げて笑顔で見送ってくれた。



「クルトさん、おはよーございます!」

「おはよう、ミア。そろそろお客さんも来るころだね。がんばっていこうか。」

「はいっ!」


手早くお皿を並べていくと、クルトさんがどんどん盛り付けていく。

今日も忙しくなりそうだね。がんばるぞっと!




朝の食事の時間も終わり、片付けに入る。

まずはマリーさんと、食堂の方から。

床を掃いたり、テーブルを拭いたり。

それが終わったら、厨房で洗い物をしているクルトさんのお手伝いに。

でも、クルトさん、お料理だけじゃなくて、洗い物も早いから、あたしが行くときには半分以上終わっちゃってることも多いんだよね。



一段落して、ちょっと休憩ってときに、扉がノックされて、1人の男の人が入ってきた。

こんな時間にお客さんが来ることはあんまりないんだよね?

それに、その人は普段あんまり宿では見ないような、身なりのいい感じのものだった。


「いらっしゃい。」

「失礼、こちらにミアさんというお嬢さんが居られると伺いましてな。」

「ふぇ?…あたし?」


何だろう、って思ったとき、また扉が勢いよく開いて、見たことのある男の子が飛び込んできた。

さらにその後ろからもう1人男の人が…。


「ねーちゃん!」

「アルくん…何でここに?」

「アルフォンス…馬車で待っていろと言っただろう。」

「すみません旦那様、お坊ちゃまが急に飛び出しまして…」


少しきつい口調で男の人に怒られたアルくんは、「だってぇ…」って、口をとがらせてる。


「まぁよい。…お見苦しいところを見せてしまいましたな。

 もうおわかりかもしれないが、私はアルフォンスとメリンダの父親で、グレン・ヴァルヴィックと申します。

 昨日は、息子と娘がご迷惑をお掛けしたようで。」

「あ、いえ、そんな、ぜんぜん…」


グレンさんが頭を下げちゃうから、慌てて両手も首も横に振りまっくった。


「宿から出ないようにときつく言っていたのですが、どうも目を盗んで抜けだしたようで。」

「ふぇ…」

「ミアさんには、あらぬ疑いも掛けてしまったようで申し訳ない。誘拐されたという可能性も捨てきれなかったもんでね…」


クルトさんとそんなに変わらなそうな歳だと思ったけど、そういったグレンさんはちょっと疲れてて、何か歳をとってるように見えた。大変そうだなぁ…


「で、でも無事でよかったですね…」

「おまえもミアさんにきちんとあいさつをしなさい。」

「は、はい父上。ごめいわくをおかけしてもうしわけありませんでした。」


急に堅苦しいしゃべりになるアルくん…


「さぁ、お前はもう馬車に戻りなさい。」

「えぇ~!」

「…戻るんだ。」


しぶしぶといった様子で、外に出ていくアルくん。おうち、大変なのかな…


「まったく…申し訳ない。それで、お礼の方なのだが。」


そういって、お付きの人に合図すると、お付きの人が小袋を差し出した。

金属が触れ合う音がしてる。もしかしてお金…?


「えぇっ?!そんなお礼なんてもらうようなことしてませんっ!」


またぶんぶんと手と首を横に振ってみたんだけど、お付きの人は困ってる…

グレンさんもちょっと眉をひそめてる。うぅ、機嫌損ねちゃったかな…

でも、お願いされてやったことでもないし、受け取りづらいな。

困ってると、マリーさんがしゃべりだした。


「ヴァルヴィックって、あのヴァルヴィック商会でしょう?

 払わずに済むのならそれでそれでいいのでは?」

「ふむ…まぁ、私としては息子と娘が世話になったことに感謝を表すための手段の1つだったわけだが。

 恩人に、いらぬ恩を売るものでもないですな。

 他ならぬ『白の舞姫プリマ・ホワイト』の助言、受け入れさせていただこう。」


マリーさんに軽く会釈したグレンさんは、手で合図して、お付きの人を下がらせる。

あれ、何かマリーさん、ちょっとグレンさんにらんでる…?


「忙しいときに、邪魔をいたしましたな。それでは失敬する。」

「あ、す、すみませんでした!」


思わず頭を下げたあたしを見て、グレンさんの表情が少し崩れた。

厳めしい顔をしてたけど、今は優しそう。


「あなたは…不思議な感じがするな。」

「ふぇ?!」


何だかよくわかんないけど…ま、いいよね。

グレンさんについて外に出ると、立派な馬車が停まってた。

お付きの人が扉を開けると、グレンさんが乗り込む。

閉められた扉の窓から小さな顔が2つ覗いた。


「ねーちゃん、ありがとー。またなー!」

「おねいちゃん、ばいばい。」


笑顔の2人にあたしも手を振る。


「もう勝手に抜け出しちゃだめだよー!」



ところで…ぷりま・ほわいとって何だろ?




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