15 忙しい夜 その1
「ミア、奥のテーブルの4人さんのとこに、エール2つ追加お願い!」
「はいっ!」
今日も夕食時の食堂はお客様でいっぱい。
あたしもジョッキやお皿を運んで行ったり来たりしてる。
「料理上がってるから、それ終わったら頼むよ。」
「はーい!」
お酒をとりに厨房に戻ると、クルトさんがあたしの気配を感じて言った。
台には湯気の立ってる料理が並んでる。
この時間帯が一番忙しい。もうちょっとすると落ち着いてくるんだけどね。
ある程度落ち着いてきたので、厨房に戻って汚れた食器の片付けをしてると、扉が開く音が聞こえた。
ちょっとして食堂の方から「ミアちゃーん、お客さんみたいだよー。」って常連さんの声が聞こえた。
誰だろ?クルトさんの方を見ると「いっておいで。」って言ってくれたから、手を洗って食堂の方に向かった。
「あー、昼間の衛兵さん!」
「どうも、すみません、お忙しいときに来てしまったようで…」
衛兵さんが困ったように笑う。
「ミア、何かあったの?」
「あ、いえ。ミアさんにはお昼にお世話になりまして、その時のお話を伺いに来た次第であります。」
マリーさんが、不思議そうな顔してる。
返ってきたのが結構ぎりぎりで、お話する暇、なかったんだよね…。
「えとね、お昼の休憩のときに、迷子の子を見つけて案内してたの。
それで、そのときに話を聞きたいって言われたんだけど、時間がぎりぎりだったから…」
「走って帰ってきたのはそういうことだったのね。」
マリーさんも納得してくれたみたい。入口近くの常連さんたちが「ミアちゃんえらいぞっ!」って拍手してくれた。何か恥ずかしいなぁ。
「そんなにかからないなら、今は落ち着いてるし、奥でお話すれば?
ここはあたしだけでもいけるから。」
そういってマリーさんは厨房を指差した。その入り口からはクルトさんも覗いてた。
気になって見に来てくれたのかな?
「はい、それじゃこちらへ。」
「すみません、それではお願いします。」
衛兵さんを連れて、厨房に入るとクルトさんがイスを用意してくれてた。
「クルトさん、ありがとーございます!」
「恐れ入ります。それでは時間もあまりないようですし手早く…」
衛兵さんからの、見つけた場所や状況なんかの質問に、答えれる限り答えていく。
ネコを追っかけて見つけたってところでは、衛兵さんも困った顔してたけど、事実だもんね…。
「ありがとうございました。お時間をとらせてしまってすみません。」
「いえ、こちらこそお昼は時間がなくてすみませんでした。」
「それでは、これで失礼します。お仕事、がんばってください。」
そういって衛兵さんは席を立って敬礼してくれた。
「あ、もう1つありました。依頼者、あ、迷子の2人の父親ですが、明日、あいさつに来たいと言ってましたよ。
午前中に寄せてもらいたいといっておりましたが…」
「たぶん、ここにいると思います。」
「わかりました、伝えておきます。それでは。」
そういって、今度こそ衛兵さんは帰っていった。
さてっと、それじゃ仕事に戻らなきゃ!
何人かの常連さんは、迷子の話を聞いてきたりしたから、食器を運びながら説明した。
ネコの話をすると、みんな「へぇ。」って驚いたり、「不思議なこともあるもんだ。」なんて言ってたけど。
そうこうしているうちに、お客様も帰ったり、部屋に戻ったりして、食堂も閉めることになった。
衛兵さんが来た以外は何もなく、今日も無事にご飯の時間は終わりっと。
でも、今日はこれで終わりじゃない。
アリサさんが来てくれるんだ。
うぅ、どきどきしてきたよぉ…
今日は2本立てです。
一晩のことだから一気に進んでみました。