表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
15/130

14 黒の導き

今日は午後の休憩時間に、ユーリさんのとこに行こうと思ってたんだけど、予定を変更して追跡中。

約束してたわけじゃないし。


何を追跡してるかっていうと…


「にゃー」


そう、黒ネコさん。きっと前も来たあのネコ、だと思うんだけど、今日はいつもと何か違ってた。

声に気付いてあたしが見ると、トコトコトコっと進んで、振り返る。

何となく来てほしそうだったから、近づくとまたトコトコトコっと進んで振り返る。

こうやってあたしの追跡調査が始まった。



普段あまり行くことのない、市場と反対側の方向へどんどん進んでいくネコを追いかける。

知らない場所だったけど、あんまり不安は感じなかった。

そうやって何度か角を曲がった先の細い通りで、ネコは止まった。

あたしとネコの前には、あたしよりもだいぶ幼い男の子と、もうちょっと小さな女の子がいた。

女の子は泣いてるみたい…ふとネコを見ると、ネコもこっちを見てた。

わざわざここまで連れてきた、んだよね…不思議なネコ…


「もう泣くなよー、兄ちゃんがちゃんと連れて帰ってやるから!」

「うぇぇ…おとーさん、おかーさん…ひっく、ぅぅ…」


…もしかして迷子かな?って思ったとき、ネコが同意するみたいに「にゃ」って鳴いた。


「誰だっ?!」

「あ…えっと……あたし、ミアだよ。」

「へ、変なやつっ!」


つっぱってるけど…膝ががくがくしてる…。お兄ちゃんがんばってるんだねー。


「どうしたの?迷子?」

「か、関係ないだろっ!」

「どこからきたの?」

「関係ないって言ってるだろ!あっちいけ!」


そういって女の子、妹かな?の前に両手を拡げて立ちはだかる。


「送ってあげよっか?」

「お前なんか怖くな…へ?」

「んー、だから、送ってあげようか?」

「お前、僕たちの宿がわかるのかっ?」


何か急に食いついてきた…やっぱり迷子だね。


「宿の名前とか教えてくれれば案内できるかもしれないよ。」

「名前…おぼえてな……いや、知らない人に教えちゃダメなんだっ!」


むぅ、わかんないっか…。どうしよう…。

いろんな人が来るところで聞けばわかるかもしれないよね。

とりあえず、泣きやんでもらって…って思ってたら妹はもう泣きやんでた。

その両手のなかでネコがたわむれてる。


「おにーちゃん…にゃんこさん。かわいい♪」

「メリー、どっからそのネコ…」

「あ、だいじょうぶだよ。あたしをここまで連れてきてくれたネコだから。」


お兄ちゃんの目が丸くなる。あたしも自分で体験しなきゃネコがこんなことするなんて信じられるわけないけどね。


「さ、それじゃメリーちゃん?と、お兄ちゃんは何ていうの?」

「ばっ、こ、子どもあつかいすんなっ!」

「ごめんね、で、名前は?」

「…アル。」

「アルくん、ね。それじゃいこっか。」

「宿も知らないのにどこに連れてくんだよ…」


相変わらず突っかかるような言い方だけど、左手をメリーちゃんとつないであたしについてくる。

メリーちゃんの左手は、ネコのしっぽと遊んでたけど。


「とりあえず、教会に行ってみようかな。近くに1こあるし。」


この間、近所のおばさんとお話ししたときに、教会にたくさんの人が来るって聞いてたから、そこに行ってみようと思った。

うちだと、クルトさんもマリーさんも忙しくて、教会に行く暇がないんだよね…だからあたしも初めてだったりする。

教会の鐘楼は高いから、ちょっと大きな通りまで出れば割とすぐ見つかる。

あたしは2人と1匹を連れて教会に向かった。




教会には無事ついたけど、そこからあんまり考えてなかった。

だって…勝手に入って怒られたら困るよね…。

入り口でうろうろしてたら、お姉さんが声をかけてくれた。


「どうされたのですか?」

「あ、すみません。えっと、この2人が迷子なんです。」


「迷子じゃないぞ!」というアルくんの叫びを聞き流して、お姉さんに尋ねる。


「泊ってる宿も分かんないみたいなんですけど、どうやって探したらいいのかなって。」

「そうですね。衛兵さんに尋ねてみるのはどうでしょうか。

 もしかしたら連絡が入っているかもしれません。

 とりあえず、お2人も一緒に中に入りませんか?」


たぶん2人ともだいぶうろうろしたんだろうし、ちょっと休ませてもらった方がいいよね。


「それじゃお願いします。」

「ではこちらへどうぞ。」


お姉さんの案内に歩き出そうとすると、アルくんが止まった。


「どしたの?」

「だって、早く帰らないと…」

「うん、でもむやみに歩いたって疲れるだけだよ。今から衛兵さんの所に行って、聞いてきてあげるから、休んでなよ。」

「…うん、わかった。」


たぶん、だいぶ疲れてるみたい。ちょっとほっとした感じになったアルくんの手を引いて連れて行く。

そのアルくんは、もちろんメリーちゃんの手を引いているから、ずらっとつながったみたいになる。


「あ、にゃんこさんが!」


教会に入ろうとすると、ここまで着いてきてたネコが、パッと走って行ってしまった。


「うぅぅ、にゃんこさんがー…」


あらら、また泣き出しちゃった…どうしよう…

そのとき急に誰かが教会へ飛び込んできた。

あれ、衛兵さん?お姉さんもびっくりして声をかける。


「あわててどうなさいました?」

「あ、シスター、実は子どもが迷子になっていて情報を聞いて回っ…あ~~~!」


衛兵さんの大きな声に、お姉さんも、あたしも、アルくんとメリーちゃんもビクッとなった。


「…す、すみません…。」


衛兵さん、真っ赤になって縮こまる。でもすぐに、アルくんとメリーちゃんの方にしゃがみ込んだ。


「アルフォンスくんと、メリンダちゃんだよね?」

「え、何でぼくたちの名前…」

「君たちのお父さんから、捜索依頼が出ていたんだよ。…君が2人を連れまわしていたのか?」


立ち上がった衛兵さんは、あたしの方を向いて、ちょっときつい口調であたしに尋ねた。


「えぇ?あたしはただ…」

「そのねーちゃんは僕たちを送ってくれたんだ。」


急なことに言葉が出なかったあたしに代わって、アルくんが衛兵さんにそういった。


「ねーちゃんがいなきゃ、僕たちまだ迷子だったと思う。ねーちゃんは悪くないぞ。」

「ふむ、そうか。いや失礼しました。依頼主から誘拐の疑いもあると聞いていたもので…申し訳ない。

 すみませんが、話をお聞かせ願いたいので、ご同行していただけますか?」

「あ、でも…そろそろお仕事に戻らないと…」

「困ったな…どちらでお仕事されてるのですか?」

「白枝亭っていう冒険者の宿です。」


今までやり取りを聞いていたお姉さんが「あぁ!」と声を上げた。


「大丈夫ですわ。白枝亭に新しく入った女の子ってあなたのことですね。

 衛兵さん、あとで白枝亭にお伺いされてはいかがですか?」

「ふむ、そうですね。それではそうさせていただきます。まずは子どもたちを帰してあげないと。

 それでは後ほど、お伺いさせていただきます。」


そう言って、衛兵さんはあたしたちに敬礼して、アルくんとメリーちゃんを連れていった。


「お姉さん、ありがとうございます。それじゃあたし、仕事に戻らなきゃいけないので。」


お姉さんにお辞儀して、教会を後にする。ん~、ちょっと走って帰らなきゃだめかも。



そして…今夜はいろいろと忙しくなるのでした。





いつもより、長めになってしまいました。

うまくまとめられるようになりたいです…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ