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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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128 海の上の一時

「ミアさん、平気ですか?」

「はい、だいじょぶです。」


朝一番の船で、あたしたちとフィランダーさんたちはアンフィト大陸に向けて出発した。

もうそろそろお昼くらいだけど、ここまでの船旅は順調だった。

何より…


「クレメンテさんが教えてくれたとこにずっといるから、あんまり気持ち悪くならないです。」

「そうですか、それはよかった。

 お昼はどうなさいますか?食堂でもよいですが。」

「持ってきたフルーツとパンでいいです。」


返事と一緒に、あたしは自分のカバンをぽんぽんと叩いてみせた。

そう、あたし、酔わずにすんでるの。

クレメンテさんが教えてくれた、船で酔いにくい場所でぼーっとしてるだけなんだけどね。

乗ったときに教えてもらって、ずっとそこにいるわけなんだけど、クレメンテさんが何度か様子を見に来てくれてるから、特に困ることもない、かな?

朝、船に乗る前に、ミディアドーレがじーっと遠くの空を見ながら、(まあ、この分ならば最後まで海も穏やかでしょう。)って言ってた通り、ここまではお天気も良くて、2人(1人と1匹?)でまったりゆったり状態、ミディアドーレもまるくなったままだし。

そんなあたしたちを見て、クレメンテさんはにっこり笑って、「では、私は隊長たちと食堂に行きますので、何かありましたら来てください。」と言って戻ってった。


「はー、うにゅー…」


ぐっとのびをすると、しばらくじっとしてたから、体のあちこちがちょっと痛い。

けど、何だかすっきりして気持ちいいね。

横を見ると、ミディアドーレもくわーってのびをしてた。


「のんびりぽかぽかだねー…」

(嵐の前の静けさ、でしょうか。)

「もー、不吉なこと言わないでよー…せっかくこんなに気持ちいいのに…」

(大襲撃以来、落ち着いているようには見えますが、またいつ何時活発に動き出すかはわからないのです。

 ゆめゆめ油断なされぬように…)


そうなんだよね…あれ以来、ちっとも悪魔族になんか会ってないから、ミディアドーレの言うとおり、ちょっと気が抜けちゃってるとこはあるかもしれない。

だからって、急に切り替わらないんだよねー…

結局、ゆったりしたまま、お昼ご飯をかじって、またぼーっとするっていう時間が続いてた。

ミディアドーレも横で一緒にご飯かじってたんだけどね…人のことあんまり言えないよね…

そんなとき、あたしたちの右手の方で歓声が上がった。

何だろうって思って、そっちを見てみると、海の上にでっかい噴水ができてた。


「すごーい…何で噴水があるんだろ?」

(あれはホエールですね。潮の吹き方からすると…ギガントホエールでしょうか。)

「何それ?」

(…まあ、ご覧になったほうが早いかと。)


何かあきれられた気がするけど、とりあえずミディアドーレのお勧めの通り、船べりの集団に近づいて、騒いでる人たちに聞いてみた。


「あの、あれってぎがんとほえーるですか?」

「お、お嬢ちゃんもなかなか通だね、潮だけでわかるってか。

 でもきっとお嬢ちゃんの言うとおりだな。

 しっかし、こんな海で見られるとは思いもしなかったけどなぁ!」


適当に聞いたら、親切なおじさんが答えてくれた。

おじさんを含めて、見てるみんなが興奮してるみたい。


「ねえねえミディ、何でみんなこんなに興奮してるんだろ?」

(ギガントホエールは本来この辺りでは見られないのでしょう。

 大陸の狭間にあるこのあたりの海は、割と浅い海ですが、ギガントホエールは深くまで潜ってエサを取る種類のはずです。)

「つまり…めずらしいってこと?」

(まあ、その通りですが…もう少し…いえ、何でもありません。)


…何となくむかっとする反応だけど、まあいいや。

せっかくだしめずらしいんだったらみんなにも教えてあげないとね。

って思ってたんだけど、残念なことにギガントホエールの噴水はそのまま収まってしまって、うんともすんとも言わなくなっちゃった。

どんなのだったか、見てみたかったのに…


お昼を過ぎて、お日様が少し傾いてくると、なんだか風が少し冷たくなってきた。

中に入ろうかどうしようか迷ってると、ちょっと甲板が騒がしくなってきた。

今度は何事かなって耳を澄ませてみると、上の方から「見えたー」って声が聞こえた。


(目的地が見えてきたようですね。)

「ふぇ、もう見えたんだ。」

(他の方々と合流しておきましょうか。)

「ん、りょーかい。」


荷物も全然広げてないから、ぱっと立ちあがって船の中へ入ってく。

食堂でお昼を食べるって言ってたけど、ちょっと時間が経っちゃってるから別のとこかなって思って、まずは客室に向かってみた。

そしたら、ばっちりみんながいて、無事合流できたよ。

結局、着いたのはもう少し時間がかかって、夕方になっちゃったから、船から降りてすぐにご飯に行きたいって駄々をこねるエステルさんを、みんなで引っ張りながらギルドに向かうことになった。

打ち合わせは明日の朝にもう一度ってことになって(エステルさんが、だいぶぐずってたんだよね…)、宿で手続きをしてそのままみんなで食事になった。

船に乗ってる間、みんなと離れてたから、エステルさんに何してたの?って聞かれたんだけど、ぼーっとして、お昼ご飯食べて、って話したんだけど、そのあとのギガントホエールの話に、フィランダーさんが入ってきたんだよね。

何でも、ホエール好きだそうで、話し終わった後、何で俺は甲板にいなかったんだ…ってぶつぶつ言ってた。

何かちょっと意外だったかも?

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