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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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127 海辺の町にて その3

「もー、時間かかりすぎ!

 早くお昼にしようよ。」

「うぉっ、暴れんなっつーの!」


駄々をこねてるような(ふりをしてるだけだよね…?)エステルさんに絡まれたエメットさんが、エステルさんにチョップをお見舞いしてる。

朝から冒険者ギルドで今後の予定を話してたんだけど、思ったより時間がかかったんだよね。

一応、今のところは3組に分かれて動く予定だから、それぞれどんなルートで行くのか、途中にどの街によるのか、なんてことまで詰めていってたんだ。

ギルドの方でも全面的に協力するわけだから、そのあたりのことがしっかりわかってないと困るっていうことで。


「しっかし、丁寧過ぎるっつうか、あそこまで厳密に詰める必要はあったのかなぁ…」

「まあ、これでいろいろと融通を図ってくれるわけだからしかたないな。」


顔をしかめ気味のフェリックスさんに、フィランダーさんが少し笑って答えた。

そう、この先の街でも、ギルドは宿の手配とか、必要なものの準備とかをしてくれるんだよね。

もちろん、ミューゼス王国だってバックアップしてくれてるんだけど、ギルドの方が直接動きやすいってことで、あたしたち専用の窓口みたいになってくれてる感じみたい。

明日の船も、ちゃんと押さえてもらってるしね。


「もーやだぁ!そこのお店で食べるっ!」


エステルさんが…まるで子どもみたいに…座り込んでる…

と、ため息をつきながらレイアさんが近寄って、何かしゃべりながらエステルさんを立たせた。

そのままフィランダーさんの方を見ると、フィランダーさんもレイアさんを見てため息をついてうなずいた。


「隊長がいいって。」

「ほんと?やったー!」


レイアさんの言葉に、うつむいていたエステルさんが急に元気な声をあげてお店に走っていった。

…やっぱり子どもみたいなんですけど。


「すまん、レイア。」

「ああなったら、どうしようもないもの。

 私もついていきますね。」


ため息をつきっぱなしのフィランダーさんに、クスッと笑って答えて、レイアさんはエステルさんのあとを追いかけていった。

多分、今までもこんなことがあったんだと思う。

クレメンテさんやエメットさんは、フィランダーさんを見て笑ってたから。

あたしを含めて他の全員が固まってしまったのは秘密です。

結局、2人を置いて、他のみんなは一旦宿に戻ることにした。

幸い(?)その後は脱落者が出ることはなかったよ。




「それでは行きましょうか。」

「はーい、よろしくです。」


ご飯を食べ終わって、それぞれに準備をすることになったんだけど、フィランダーさんの提案であたしはクレメンテさんにいろいろと教えてもらうことになった。

何を、ってそれは、あたし(とミディアドーレとレアさん)がみんなと別れた後も、ちゃんと旅が続けられるように、冒険者としていろいろ覚えるためなんだけどね。

とにかく、街を回りながら必要なものを見ていこうっていうことで、お出かけすることになったの。

そしてクレメンテさん…ううん、クレメンテ先生の特訓が始まった。


「さて、では街について補給を行うとしましょう。

 順番に必要だと思われる店に立ち寄ってもらえますか?」

「はーい。」

「ではお願いします。」


市場の入り口でこんな確認をして、いざ入っていったわけなんだけど…


「あ、果物売ってる!」

「そうですね、ただ生のものは日持ちしないものも多いですから優先度は低いですよ。」

「あうぅ…」


だとか、


「お花、きれい!」

「そうですね、でも活ける花瓶もありませんよ。」

「あうぅ…」


だとか、


「おいしそうなパン!」

「そうですね、柔らかいほうがおいしいです、が、保存には向きませんよ。」

「あうぅ…」


だとか、


「塩漬けのお肉ならだいじょぶだよね?」

「そうですね、ただお客さんに出すわけじゃないので、そんな塊を買ってもしょうがないですよ。」

「あうぅ…」


その度についてきてるミディアドーレもレアさんもため息ついてるし…

どーせ何も知りませんよーだ。

結局、一からぜーんぶ教えられてしまったよ…


「まあ、これでしっかりと覚えていけばいいのです。

 道具類も、と思いましたが、少し時間が掛かってしまいましたね。

 あとは宿の方で確認しましょう。」

「う、はい…」

「いろいろ言ってしまいましたが、旅をする、ということを考えればちゃんと答えにはたどり着けるはずですから。」


慰めてもらったんだと思うけど、考えられなかったら答えにたどり着けないってことだよね。

なんてちょっと落ち込んでたら、後ろから急に誰かに抱き着かれてびっくりした。


「ふにゃっ?!」

「ふにゃ、だって、ミアちゃんかわいー。」

「あ、れ?エステルさん?」

「うん、宿に帰ろうと思ってたらミアちゃんたちが見えたから。

 何してたの?」


エステルさんの腕から解放されて振り返ると、レイアさんも一緒にいた。


「クレメンテさんにいろいろ教えてもらってたの。」

「ほっほーぅ…クレム、いぢめてた?」

「まさか、そんなことするわけないですよ。」

「どーかなー?クレム結構笑顔でいぢめっ子な体質だと思うけどなー。」

「ふむ…では後で隊長にお伺いを立ててみま…」

「ゴメンナサイワタシガワルカッタデス!…ゆるしてぇ!」


エステルさんは必至だけど、後ろで笑ってるレイアさんを見たら、そんなに深刻なことでもないみたいだし、だいじょぶだよね。

結局この後、みんなで宿に帰ったんだけど、部屋でミディアドーレとレアさんに、みっちり仕込みなおされてしまいました…

ちなみにエステルさんの諸行は、フィランダーさんには報告されなかったみたいです。

されたらどうなってたんだろ…?

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