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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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123 出発に向けて その4

明日はいよいよ出発ってことで、今夜はみんなちょっと早めに部屋に戻っていった。

あたしは晩ご飯の片付け中。

クルトさんは別にいいよって言ってくれたんだけど、何か落ち着かなくてお願いしてさせてもらうことにしたんだ。


(少し緊張されているようですね。)


洗い物をしてる足元で、ミディアドーレの声が聞こえてきた。

さっきまで邪魔にならないようにって、すみっこにいたのにいつの間に来たんだろ?


「そだね…緊張してるのかな。」

(不安ですか?)

「んー…」


不安、なのかな?

正直これからのことなんか想像もつかないから、不安かどうかもよくわかんないや。


(あまり気を張りすぎると、出発前に参ってしまいますよ。)

「でも、部屋に戻ったら何かもっと考えちゃう気がするの。」

(なるほど、それで片付け、だったわけですか。)


でもほんとにいよいよ明日なんだ。

ちゃんと使命を果たすことができるのかな…


(主よ、手が止まっていますよ?)

「あ…うん。

 っていうか、ミディが声かけてくるからでしょー…」


そう言いながら足元に目をやると、そこにミディアドーレはいなくて、いつの間にかさっきまでいたすみっこに戻ってるし。

でも、ミディアドーレにも心配かけてるんだろな…


「ミア、どうかな?」

「あ、クルトさん。

 もうちょっとで終わるよ。」

「それじゃ、終わったらちょっと部屋に来てくれるかな?」

「はーい。」


クルトさんはそれだけ言うと、また戻っていった。

何か用事かもしれないし、ちょっと急いだ方がいいかも。

集中して洗うと、残りも少なかったからそんなに時間をかけずに仕上げることができた。


「よっし、おーわりっと。

 ミディ、行くよー。」


声をかけるとひょこっと起き上ってミディアドーレがついてくる。

そのままあたしたちはクルトさんたちの部屋に向かった。

扉をノックして声をかけると、中からクルトさんが出てきた。


「ああ、早かったね。

 ちょっと入ってくれるかな?」

「はい。」


クルトさんに招かれて中に入ると、マリーさんがベッドに座って手を振ってた。


「マリーさん!

 もうだいじょぶなの?」

「ごめんね、心配かけて。

 もう大丈夫よ、明日からだって働けるわ。」


力こぶをつくるまねをしながら笑顔で答えてくれたけど、マリーさんはまだちょっとよわよわしい感じがした。


「ミア、ちょっとこっち来てくれる?」

「うん…」


マリーさんに手招きされてベッドに並んで座るとなぜかクルトさんが出ていこうとしてた。


「クルトさん?」

「それじゃ、私は行くよ。」

「え…と…?」

「我がまま言ってごめんね、おやすみなさい。」


あたしはわけもわからず固まっちゃったんだけど…

クルトさんの足元で、ミディアドーレがさっと走って出ていくのが見えた。


「えと…」

「あ、ミアもごめんね、ろくに説明もしないで。

 明日は出発でしょ?

 だから、今晩くらい久しぶりに一緒にいたいなって思って…

 それに…」


そう言って、マリーさんがあたしを優しく包んでくれた。

その腕は何だかちょっと細くなっちゃってるような気がしたけど、とってもあったかい。


「それにまだ、ミアにちゃんとお礼も言えてなかったしね。」

「お礼?」

「そう、わたしを助けてくれたお礼。

 あなたがいなければ、わたしは…

 わたしは今こうしてここにいることはなかったんだから…」


マリーさんの腕に力が入る。

気持ちはすごく伝わってきたけど、ちょっと苦しい…

思わず身をよじったら、不意に力がゆるんだ。


「ごめん、痛かった?」

「だいじょぶだよ。

 ちゃんと元気そうでよかった。」

「あら、そんなに見くびられてたのかしら?」

「だってちょっとやせちゃったみたいだし…」

「そう?ダイエットもできちゃったわね。」


なんて笑ってるマリーさんを見たら、何だかとっても安心した。

だいぶ遅くなってたし、あとはベッドに入ってお話することにして、あたしはクルトさんのベッドの方に移ろうとした。


「あ、ミア、せっかくだから今日は一緒に寝ることにしてもいい?」

「ふぇ?」

「しばらくミアに会えなくなるから、ね。」

「ん…」


マリーさんがベッドのはしっこを広く開けてくれてるから、何だかちょっとはずかしいけど、マリーさんの横にもぐりこむ。

とってもあったかい…


「それにしても、何でこんなことになってるんだろうね…」

「こんなこと?」

「あ…うん…ミアみたいに小さな女の子に大きな役目がね…」

「あたし、そんなに小さいかな?」

「あら、ごめんなさい。

 別にそういう意味じゃないのよ。」


笑いながらマリーさんが頭をなでてくれたのが心地いい。

思わず目を閉じてしまうくらいに。


「何だかあっという間だったわね…

 ミアが来てくれたのがついこの間のことみたい。」

「そ、かな…?」

「ええ、リックたちがあなたを連れてきたときは何かと思ったけど、いろいろ楽しかったわ。」


お話しながら、マリーさんの手はずっとあたしをなでてくれてるから、だんだん眠くなってきた。

遠くからマリーさんの声が聞こえてくる気が…


「おやすみ、ミア…

 必ず無事に帰ってきてね…」

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