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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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119 みんなにお願い

夜、みんながそろってご飯の時間になった。

薪割りの台は、クルトさんにちゃんと謝って許してもらったんだけど、むやみに力を使わないようにって釘を刺されちゃった。

みんなで、今日の様子とかを報告し合いながら、いつも通り賑やかなご飯になった。

街の方も、総出で後始末してるから、大きな被害が出たところ以外はだいたい目途がついてきたみたい。

すごいよね、ほんと。


ご飯が一段落して、お茶を用意してからあたしはみんなにお願いをするために、お昼にミディアドーレに話してもらったことを伝えることにした。


「ちょっと聞いてもらいたい…ううん、お願いしたいことがあるんです。」


それぞれに話をしていたみんなが、あたしの方に注目してくれた。


「悪魔がこの街を襲う前から、数が増えてきてるっていう話があったと思うんですけど、魔界の封印が綻んできてるみたいなんです。

 それで、その封印を新しくするって役目が与えられたんです。」


みんなは静かにあたしの話を聞いてくれてた。

あたしはこの話を聞いたとき、パニックになったのに…みんなすごいな…


「それで、まずはフェリックスさんとレイアさんも持ってる[根源たる色彩オリジナルカラーズ]を全部そろえなきゃいけないんです。

 あたし1人じゃ時間がかかるし、何より持ち主のお2人には協力してもらわないとダメだから…」


そこまで話したけど、みんなからの返事はなかった…

やっぱり急にこんなこと言っても信じてもらえないよね…

思わずうつむいてしまった…

そうだよね…あたしだってできるかわかんないことを、誰もできるなんて思わないよ…

ただ1つ帰ってきた返事はミディアドーレだった。


(主よ…うつむいていてはいけません。)

だって…あたしだけじゃ…できるわけないよ…

(…では世界のことを諦めるのですか。

 1人ではやりたくないと。

 誰かが一緒でないならやらないということは、結局あなたにとって世界は…)

「違うもん!

 あたしは…!」


ミディアドーレの言葉に、思わず大きな声が出たけど、それ以上は涙が出てきて声にならなかった。

でもあたしは、見ず知らずのあたしを助けてくれて、受け入れてくれたこの街が好きだから、たくさんの大切な人がいるから守りたいって思ってる。

なのにそんな言い方するなんて…


そのとき、あたしの左手がにぎられた。

横を見るとクルトさんが優しく笑ってた。


「ミア、ほら…」


クルトさんが指した方を見ると、みんながこっちを向いてうなずいてくれてた。

みんな、あたしに協力してくれるみたいだった…

ふと気がついてミディアドーレの方を見ると、目があった瞬間に顔をそむけて、丸くなっちゃった。

もしかして…ハメられた?


「それで、俺たちは具体的にはどういうことを手伝えるんだい?」


フェリックスさんが代表して、あたしに聞いてくれた。


「えっと…あ、ちょっと、ミディ?

 教えてくれなきゃわかんないよ…」

(ふむ…元気になりましたね。

 それはさておき、まずは[根源たる色彩]を集めなければなりませんね。

 あなたには[根源たる色彩]がある方角を探る力があります。)

「へ…そんなのあったんだ…」

(とにかく、私の言葉は他の方には聞こえないので、伝えてください。)

「あ、そっか…ちょっと不便だよね…

 えっと、まずは[根源たる色彩]を探さなきゃいけないんですけど、どの方角にあるかはあたしが調べられるみたいです。」

「すご…それ知ってたらわたしたちももっと楽に見つけられてたのかな…?」


って真剣な顔でつぶやくのはエステルさんの頭を、レイアさんがペシッと叩いてた。

叩かれたエステルさんも、エヘヘって笑ってるし、別に悪い雰囲気じゃないけどね。


(主よ、今から試してみますので、地図を用意してもらってください。)

「あ、うん。

 えっと、ミディが今から試すって言ってるので、地図ってありますか?」

「我々の持っているものが、割と精度のよいもののはずだ。

 クレメンテ、持ってきてくれるか?」


フィランダーさんがそう言うと、クレメンテさんがさっと動いてくれた。

2階に上がってすぐに降りてきたときにはもう手に紙をもってる。

テーブルの上に地図を広げてもらうと、それは割と大きなものでだった。


「少しの間、触らないでくださいね。

 それでは…〈向きを合わせよ〉」


クレメンテさんが魔法語で命じると、地図が少しまわってぴたっと止まった。


「はい、終わりました。

 もう使ってもらって大丈夫ですよ。

 一時的にテーブルに固定されているので、動かすときはまた言ってくださいね。」

「それ、もしかして[大地の標]なのか?」

「ええ、そうですよ。

 まあ複製品の方ですけどね。」

「それでもすごいよなぁ…」


フェリックスさんたちが珍しそうに見てる。

変わった地図なのかな?


(おそらく地図の方角を、実際の方角と合わせる力があるのでしょう。

 それでは調べていきましょう。

 まずは、色のイメージを持って、目を閉じて集中してください。

 黄の武具は所在が分かっているようなので、試してみましょう。)

「わかった、それじゃやってみるね。」


ミディアドーレに言われたとおり、目を閉じて黄色って考えてみる。


(そのまま、敵を打ち砕くイメージをつけてみてください。)


言われたとおり、黄色い光が敵をやっつけるイメージを…


(最後に名前を…黄の武具の名は[高鳴る黄ランブリングイエロー]です。)


その黄色い光に名前で呼びかけたとき、遠くで黄色い輝きが主張するのを感じることができた。


「あ、あっちだ…でも結構遠いかな?」

「あっちって…?」

「えと、[高鳴る黄]のある方角をまずは探ってみようかって思って…

 こっちの方角の結構遠いところに感じたんですけど…」


レイアさんの問いかけにそう返すと、フィランダーさんたちがうなずいた。

ってことは、あってるみたいだね。


「だいじょぶそうですか?」

「はい、間違いなくエルメートの帝都、ハーメステルグの方角ですね。」

「よかった、じゃ、他のも試してみるね。」


同じように、まだ見つかってない黒の武具[純粋なる黒パーフェクトブラック]のある方角を探してみた。


「んー、方向はこっちで…さっきよりちょっとおとなしい感じかな?」

(おそらく距離の感覚でしょう。

 黄の武具よりも遠くにあるということだと思います。)

「そっか…じゃ、黒はこっちの方角で、黄よりも遠いところです。」


あたしが指した方向を、クレメンテさんがさっと書き込んでいく。

続けて青の武具[永久なる青エターナルブルー]、緑の武具[輝ける緑ラディアントグリーン]のある方角も同じように探ってみた。


「えっと、青はこっちの方で、黄色と同じかもうちょっと近い感じです。

 緑はこっちですね。

 青や黄色よりずっと近いみたい。」

「距離は難しいですね…

 さらに別の地点から同じように調べれば、交点を考えられそうですが。」


さっきと同じように書き込みながら、クレメンテさんがそんな提案をした。


(クレメンテ殿の考えが一番確実でしょう。

 そのように進めていきたいとお伝えください。)

「うん…えっと、ミディがそのように進めていきたいって言ってるから、そうしたいです。」


ミディアドーレの言ってることはいまいちよくわかんなかったけど、クレメンテさんはわかりましたって言ってたから、たぶん通じてるよね。

とにかく、少し別のところからまた調べるってことでまずは話が落ち着いたんだけど、魔法士ギルドに報告したりとか、旅の準備とかもあるからってことで、すぐに出発はしないことも決まった。

話してる間に、結構時間も過ぎてたから今日はこれで解散することにして、明日もう一度予定について話し合うことに決まった。

何だか忙しくなりそうだけど、まずは明日、魔法士ギルドに行かなくちゃね。

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