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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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117 これからどうしよう その2

「あー。」


河原に向かおうと通りに出たところで、アリサさんが急に声をあげた。

あたしもレイアさんもミディアドーレも、その声に振り向く。

そこには1人でうんうんと何か確認してるアリサさんの姿が…どうしたんだろ?


「すみませんがー、少しー、用事をー、思い出しましたー。

 後でー、追いかけるのでー、先にー、河原にー、行っててもらえますかー?」

「ほへ、だいじょぶですけど…一緒に行きましょうか?」

「いえー、すぐすみますからー。

 あー、橋からー、見えるところにー、いてもらえますかー?」

「わかりました。

 それじゃ先に行ってますね。」


ではー、と手を振って、パタパタと広場の方へ走っていくアリサさんは、何だかとっても楽しそう。

何のご用事かなあ?

とりあえず残されたあたしとレイアさんとミディアドーレで、広場とは反対の方へ通りを進んでいく。


「そういえばこの道は、以前にミアさんと…」

「レイアさん!」


ちょっと強い口調でレイアさんの話をさえぎっちゃったから、レイアさんの肩がびくってなった。

うー…別に怒ったりしたわけじゃないんだけど…


「呼び方も前のままでいいですよ。

 っていうか、前のままにしてほしいです…あたしはあたしのままだから。」

「…ごめんなさい、そうですよね。

 わたしが意識しすぎたせいで…」


責めるつもりは全然なかったけど、レイアさんに気を使わせてしまってるよね…

あたしもちゃんと謝ろう。

そう思って、レイアさんの手をにぎる。


「あたしもきつく言っちゃってごめんなさい。

 でも、普通に接してもらえると嬉しいです。」

「わかりました、ミアちゃん。」


レイアさんが、あたしの手をにぎり返して、今度は前みたいに呼んでくれた。

やっぱりこの方がしっくりくるよね。


「はい!

 あ、それでお話の続き…ごめんなさい、途中でさえぎっちゃって。」

「ふふっ…そうでしたね。

 前にミアちゃんに案内してもらった道だなって思い出してしまいました。」

「そいえば、夜にお出かけしましたね。」


レイアさんが川まで水浴びに行ったときのことだ。

それも何だかずいぶん前のことみたいに感じちゃうな。

そのときのことを話しながら、あたしたちは河原にたどり着いた。

いつもよりも人が少ないように感じるのは、きっと街中が大忙しだからだよね。

それでも、川で作業をしている人もいれば、元気に遊んでる子どもたちもいたりする。


「橋から見えるところがいいんですよね。」

「うん、あ、あの辺りは誰もいないしあそこにしましょ。」


橋からさほど遠くないところに、あたしたちは腰を下ろした。

いつもより人が少ない分、秘密のお話(っていっても、ミディアドーレと話してるようすをあんまり見られないようにするのが主な目的かな?)するにはちょうどいいかもしれない。


「それじゃミディ、お願い。」

(はい、レイア殿には少しお暇になるかも知れないので、お伝えください。)

「あ、そっか…

 レイアさん、ちょっとミディと話してる間、集中することになるから…」

「はい、しっかりお話してくださいね。

 わたしはちょっと水を触ってますから。」


レイアさんはそう言うと、あたしとミディアドーレを残して、足の先だけ水につけて座った。

ちょっと寒くなってきてると思うけど、レイアさんは平気みたい。

気持ち良さそうに目をつむってる。


(主よ、よろしいですか?)

「あ、うんごめんね、待たせちゃって。」

(いえ、構いません。

 お伝えすることがいくつかあります。

 その前に、まず、あなたがどうして行くかということの確認です。

 力が解放されたことで、天界へと帰ることができるようになりました。

 このままこの世界に残るか、天界へと帰るか、まずはこれを決めていただきたい。)

「天界へ…って、あたし、記憶は戻ってないのに?」

(はい、記憶に関しては戻った時点で封印を施した方が、直接解放するということですので。)

「帰ると…どうなるの?」

(この件に関しては、これ以上私から伝えることは禁じられてしまい、答えることができないのです。

 申し訳ありません。)


ミディアドーレの耳が、へにゃっとなった。

んー、ミディアドーレも大変なのね…

でもあたしとしては、天界に戻りたいなんて全然考えたことないし、こっちにいたいんだけど…


(主よ、これについては思った通りに答えていただいて構いません。

 他のことは気にせずに答えてください。)

「…あたしはずっとここにいたい…な。」


あたしの言葉を聞いて、ミディアドーレが目をつむった。

そして、しばらくじっとした後、目を開いて話し始める。


(了解しました、それでは天界の意思をお伝えします。

 あなたが天界に戻ると決めた場合は、戻り次第、力と記憶の封印をすべて解放し、無条件で元の役割に戻ることとなります。

 ただし、その際にはあなたに関する記憶を、すべての者から消さなくてはなりません。)

「え…記憶を…?」

(主よ、お声が大きいです。

 …気にしているものはいないようですが。)


記憶が消されるってことは…

あたしはどうなるの?

みんながあたしのことだけ記憶がなくなるの?

そしたら…そしたら…


(主よ!)

「は、はひっ?!」

(…あなたはこの世界に残ることを望まれた。

 先程お伝えしたことは、あなたが帰るという選択をしたときのことです。

 どちらの結果も伝えることが、私に与えられた役目ですから。)

「あ…うん…。」


そっか、帰るって思ってたら、みんなの記憶から消えてたんだ…

でも、残るっ思ったからって、そうならないってことはないのかも…


「じゃ、じゃあ、あたしが選んだ方はどうなるの…?」

(あなたがこちらの世界に残ると決めた場合は、力と記憶の封印は解放されません。

 こちらの世界への干渉が過多になると、天界にとってもこちらの世界にも歪が生じますので。

 ただし、主が気にされていた、周りの者の記憶への干渉もありません。)

「ってことは…今のまま?」

(そうなりますね。)

「よかっ…たあ…」


安心したら何だか体中の力が抜けちゃったみたいに感じるよ。

ふーっとおっきく息をはいて、ゆっくり吸ったら、ちょっとは落ち着いたけど。


(この場合、この世界での肉体が滅んだときには、天界へと送還されます。

 まあ、あなたの力であれば、そう簡単に起こることではないと思いますが…)

「そっか…結局は帰らなきゃだめなんだ。」


天界かあ…

何か、全然実感ないんだよね…

どんなとこなんだろ?


(もうひとつ…あります。)

「ふぇ?」

(魔界の干渉の件です。

 干渉が過剰になれば、この世界の歪が大きくなり、その歪みは天界にも及ぶことになるでしょう。

 そうなると、この世界も、天界も、魔界さえも滅んでしまうでしょう。)

「魔界も滅んじゃうの?

 なのに悪魔はこっちの世界にくるの?」

(彼らの望む滅びは、対象に制限はありませんから…

 個々にはいろいろな意思を持つ輩も存在はするでしょうが。)


うー…とんでもないやつらなんだ…

何とかならないのかな…


(主よ、あなたが現世に残ることを認める代わりに、綻んだ魔界の封印を新たに施すという任が下りました。)

「ふーん…ってあたしが?!」

(…はい。)

「何で?っていうか…えー!?!?

 やり方とかわかんないし、どうしたらいいのよー?」

(主よ…落ち着いてください…)


だってそんな、まさかあたしにできるわけないっていうか、そもそも魔界とか初めて知ったみたいなものなのに!

もうどうしていいかわかんないよー!


「ミアちゃん!」


という声と同時に、あたしは後ろから誰かに抱えられてた…

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