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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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116 これからどうしよう その1

朝ご飯の準備をしていると、エステルさんが厨房にひょっこり顔を出した。


「ミアちゃん、お客さんだよー。

 魔法士ギルドの人だって。」

「あ、ありがとーございます。

 すぐ行きますね。」

「わかった、伝えとくね。」


クルトさんが、先に行っておいでって言ってくれたから、食器の準備が途中だけど、一度作業中断して、応対に出ることにした。

それにしても、こんなに朝早くから来るなんて思わなかったけど。

玄関を見ると、見たことない人が来てた。


「おはよーございます。」

「あ、おはようございます。

 すみません、こんなに朝早くから…ジョルジュ導師から伝言を預かってきました。」

「ありがとーございます。」

「お昼前までにギルドの方へ来ていただけないかということでした。

 できれば早い方がいいとも…ご都合の方はいかがでしょうか?」


んー、特にやらなきゃいけないことがあるわけじゃないもんね。

お昼の準備も考えたら、あたしとしても早目の方が助かるし。


「だいじょぶだと思います。」

「そうですか、ありがとうございます。

 それでは導師にお伝えしておきますので、よろしくお願いします。」


それだけ言うと、その人は足早に去っていってしまった。

とにかくクルトさんに伝えておかなきゃ。


厨房に戻ってクルトさんに話してみると、今日は建物の修繕にも来てもらう予定で、お昼はみんなに外ですませてもらうようにお願いすることにしてたみたい。

みんなで朝ごはんを食べたあと、お茶を入れて回ってからクルトさんが話し始めた。


「今日の昼は、うちも修繕に入ってもらうから、食事の準備はできないんだ。

 申し訳ないが、外で済ませてもらえるかな。」

「そんな、俺たちこそあんまり手伝えてないのにお世話かけっぱなしだし、全然問題ないですよ。」


フェリックスさんの返事に、周りにいたみんなもうなずいてる。


「何か手伝えることがあったら言ってください。

 俺は今日は特に予定はないから。」

「我々も手が空いているものは手伝わせていただきたい。」


フェリックスさんに続いて、フィランダーさんもそう申し出てくれた。


「そうか、助かるよ。

 その分、夕食はがんばらせてもらうよ。

 ところで、ミアは魔法士ギルドに行くみたいだけど、他に出かける予定があるのは誰かな?」

「わたしはー、ミアちゃんとー、ご一緒させてー、いただきますねー。」

「あ、わたしもお願いします。」


ということで、あたしと一緒に魔法士ギルドに行くのはアリサさんとレイアさん。


「私とレックスは…今日も…お手伝いに行くって…約束してきちゃったから…」

「ああ、そっちもがんばってもらえると助かるよ。

 何せ街全体どこも人手不足だからね。」


エリカさんが申し訳なさそうに言ったけど、クルトさんが笑顔で返すと、エリカさんもレックスさんも、うんうんってうなずいてる。

これで今日のみんなの動きが大体決まったみたいだね。

朝ごはんの片付けが終わったら出発することにして、アリサさんとレイアさんには準備してもらうことにした。

あたしはあんまり準備することもないんだよね。

服はそのままでエプロン外せばいいだけだし、腕輪はずっと持ってた方がいいみたいだから、身につけたままにしてるし。

クルトさんは今、マリーさんのご飯に行ってるから、今のうちにできるだけ終わらせなきゃ。


洗い物もだいたい片付いたころ、アリサさんが厨房をのぞいてくれた。


「ミアちゃんー、わたしたちはー、準備できてますからー、いつでもー、出発できますよー。」

「あ、はい、こっちももう終わります。

 食堂の方で待っててもらっていいですか?」


返事をしながら、ふいた食器をどんどん棚に仕舞っていく。

アリサさんは、「はいー。」って言って、食堂の方に戻っていた。

そしてそのあとすぐに、全部食器を仕舞い終わったから、ちょっと横着して厨房の隅の棚にエプロンをたたんで置いておくことにした。


「お待たせしましたー。」

「あらー、早かったですねー。」


食堂に駆け込むと、アリサさんとレイアさんがおしゃべりしてた。

2人ともしっかり準備ができてるみたいだったから、そのまま出発することに。


外に出ると、今日もいいお天気。

街の人たちも、みんな動き出してるね。


「いいお天気…ちょっと眩しいくらいですね。」

「そうですね、とっても気持ちがいいです!」


レイアさんが、手をかざして空を見上げてる。

ほんとに雲がほとんどない真っ青な空…

あれ?何かいつもとちょっと違うって思ったら…レイアさんがフードをつけてなかった。


「レイアさん、今日はフードしてないんですね?」

「あ、そうなの。

 魔法士ギルドの人とお話してて、いろいろ考えたの。

 わたしたちにいい感情を持たない人たちがいるのは事実だけど、みんながみんなそうではないし、街のお手伝いをしてたときに、たくさん感謝の気持ちももらえたから…だから、この街の人たちなら大丈夫かなって。」


そいえば、あたしが来たときも、みんな自然に接してくれてたよね。

何だか嬉しくなっちゃうな。


「あ、でも…珍しいからって見られるのはしょうがないみたい。」


そう言ってはにかむレイアさんの表情はとっても素敵だった。

あたしも、ほんとにいい街にお世話になってるんだなって改めて感じちゃう。


魔術士ギルドにつくと、受付の人がギルド長室へ進むように案内してくれたので、いつものようにアリサさんについていく。

ギルド長室の扉をノックすると、聞きなれたオーウェルさんの声が聞こえた。


「どうぞ。」

「失礼しますー。」


アリサさんに続いて部屋に入ると、今日はオーウェルさんしかいなかった。


「まあ、3人とも掛けなさい。

 朝早くから使いを出してしまって申し訳なかったの。」

「あ、いえそんな…ところで急ぎの用事だったみたいですけど…」

「うむ、昨日の件について、魔法士ギルドの方で検討させてもらったんじゃが、とりあえずその力はあまり大っぴらにせん方がよい、という結論じゃ。

 まあ、昨日も言うたから大丈夫じゃとは思うが。

 それで、ここからが本題なんじゃが…

 あ、そうじゃった…とりあえず、ミアさんのことは何と呼ばせてもらえばええんじゃろうか?」


真剣な表情でいきなりそんなことを聞かれたから、あたし、一瞬何のことかわからなかったよ。

改まってそんな風に言われても、やっぱりあたしはあたしだもんね。


「今まで通りでお願いします。

 あたしはあたしだから…」

「あいわかった、ワシもその方が話しやすいわい。」


あたしの返事を聞いて、オーウェルさんはホッホッホと笑ってうなずいてくれた。

でもすぐにまた真剣な表情に戻って話を続ける。


「ミアさんが今後どうしたいかを聞いてみたくての。

 今まで通りなら、さっき言うた通り、力をあまり大っぴらにしないことで問題はあるまい。

 そうでないならば、どうしていきたいのか、教えてもらえるとうれしいんじゃが。」

「え…今後ですか?」


そんなことを聞かれると思ってなかったから、ちょっと詰まってしまう。

どうしたらいいのかなあ?

先のことなんて何も考えてなかったんだけど…


「まあ、あわてる必要はないんじゃ。

 急いで呼びだしたのは、力に関することじゃったからな。

 あの力はむやみに見せびらかせると、混乱を招きかねんからの。

 今後のことに関しては、じっくり考えるなり、相談するなりして、ミアさんが決めてから教えてもらえればええ。」

「はい…わかりました。」


雰囲気から、すっごく大事なことだってあたしも感じたから、しっかり考えて返事できるようにしなきゃいけないっていう気持ちをこめて返事をした。

オーウェルさんはそれを感じてくれたのか、優しく笑ってうなずいてくれた。


「さて、次は[原初の色彩オリジナルカラーズ]の方じゃな。

 ギルドからの依頼という形で、各国あるいは古文書を所有する機関に情報の提供を求めることになりそうじゃ。

 レイアさんや、お主はギルドに所属しておるし、何か情報が入れば連絡がいくはずじゃが、もちろん所有者として、今後ギルドに協力してもらうことは増えることになるじゃろう。」

「わかりました。

 よろしくお願いします。」

「いや、ワシらにとっても重要なことじゃからの。

 そうそう、アリサも、白の所有者にできる限りの協力をお願いしておいてもらえるかの?」

「はいー、わかりましたー。」


うむ、とうなずいて、オーウェルさんは立ち上がって、机から手紙のようなものを持ってきてレイアさんに渡した。


「これは…?」

「ワシの署名入りの書状じゃ。

 どの魔法士ギルドにも話は通してあるから、資料の閲覧などに使えるじゃろう。

 お主はアンフィト大陸の者じゃから、こっちの大陸のギルドで何かする際には使えるじゃろう。」

「あ、ありがとうございます!」

「さてと、用件はこれで終わりじゃ。

 ミアさんは今後のことが決まればまた来てくれるかの?」

「はい、もちろんです。」

「それでは待ってるからの。」


オーウェルさんにあいさつして、部屋を出たあたしたちは、この後どうするかを相談しながらギルドの外へ向かった。

お昼にはまだちょっと早いんだよね。

そんなことを考えながらギルドの外に出ると、ちょこんと待っている小さな影が2ついた。


(主よ、ただいま戻りました。)

「あ、ミディ、おかえりなさい。

 レアさんも一緒だったんだね。」


そう、待っていたのは黒いネコと白い鳥。

よく考えてみると、何か不思議な組み合わせだよね。


「レアさんは何かご用事ですか?」

(はい、ミディアドーレが戻ってきたので、[原初の器オリジナル]を返していただきに参りました。)

「あ、腕輪ね。

 ちょっと待ってね…はい、ありがとう。」


あたしが借りてた腕輪を外してレアさんに差し出すと、レアさんは器用に首にかけた。


(それでは、わたくしはこれで失礼します。)

「うん、わざわざ来てくれてありがとね。」


レアさんはペコっと頭を下げるとそのまま飛んで行ってしまった。

忙しそうだなあ…


「んー、やっぱりー、何かー、不思議ですねー。

 ミアちゃんがー、そうやってー、ネコくんたちとー、お話してるのー。」

「ふぇっ?そーですか…?」


レイアさんもクスクス笑ってる…何か変なことしたかなあ?

今の行動を思い出そうとしたら、ミディアドーレの声が聞こえた。


(主よ、少し相談があります。)

「ほへ…相談?」

(はい、とりあえずどこか落ち着ける場所へ行きましょう。)


んー、何だろう?

アリサさんとレイアさんに事情を説明して、あたしたちは河原に行くことにした。

ここからならそんなに遠くないし、落ち着いてお話しできるよね。

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