114 助言がほしいの
「あ、アリサさん、ジョルジュ導師からギルド長室に来てほしいとの伝言がありました。」
「はいー、わかりましたー。
それではー、行きましょうー。」
魔法士ギルドについたあたしたちは、伝言の通りギルド長室に行くことになった。
前と同じように転送陣を使って、部屋にたどり着く。
アリサさんが扉をノックする。
「遅くなりましたー。」
「入りなさい。」
中からの声に従って、アリサさんが扉を開けて入る。
そのあとに、あたし、エステルさん、レイアさん、エメットさんの順番で入ってく。
部屋の中にはジョルジュさんとオーウェルさんの他に2人、アリサさんよりちょっと年上かなって感じの女の人と、ジョルジュさんよりちょっと若い感じの男の人がいた。
前は広いなって思った部屋も、さすがにこれだけの人がいるとちょっとせまく感じてしまう。
「さて、よく来てくれたの。
昨日の件についてと…そちらの方が来ておられるということは、[揺らめく赤]のことかな?」
オーウェルさんの言葉にあたしたちはそれぞれにうなずいて答える。
でもあたしのことは多分予想外のことになりそうだよね…
どうやって話そうかなって思ってたら、先にレイアさんが話し始めた。
「まずは[揺らめく赤]についてお話させてください。
昨日、宿の方に戻ってから、[無垢なる白]と触れさせてみたのですが、赤と白の光が空へ向かって放たれました。
その後、襲撃が始まったのではないかと感じたのですが…[揺らめく赤]と[無垢なる白]を狙って、とても強い悪魔が襲ってきました。」
「ふむ…どうにもそれだけでは光についてはわからんのう…
何かがわかるまではむやみに武具同士を合わせてはいかんのかも知れんの。
パスティス、至急調べてみるように。
申し訳ないがレイアさん、パスティスとともに動いてもらえるかな?」
オーウェルさんが指したのは、お姉さんの方だった。
指されたお姉さんが軽くお辞儀をして入口の扉を開けた。
「レイアさん、こちらへお願いします。」
「わかりました、よろしくお願いします。」
「ねね、わたしとエミーもそっちでいいかな?」
パスティスさんについていこうとしたレイアさんを見て、エステルさんが声を上げる。
オーウェルさんが、構わないって言ってくれたから、エステルさんとエメットさんはレイアさんと一緒に出ていった。
「さて、それでは襲撃の方じゃな。」
「はいー、ただー、今からー、お話する内容はー、公言しないでー、いただきたいんですー。」
アリサさんの言葉に、オーウェルさんとジョルジュさんは顔を見合わせた。
だけどちゃんと約束してくれたから、話してもだいじょぶってことだよね。
そのあと、アリサさんがそのまま昨日のことを説明してくれた。
ギルドを出た直後に光の柱が見えたこと、そのあと襲撃が始まったこと、戻る途中で強い悪魔に出会ったこと、それをあたしが倒してしまったこと…オーウェルさんもジョルジュさんももう1人の男の人も、すごくびっくりしてる。
さらに続けて、白枝亭ではもっと強い悪魔が、みんなを襲っていたこと、それを何とか撃退したことを順番に説明していった。
「ふむ…上級悪魔に中級悪魔…といったところかの…
しかし…ミアさんがのう…俄かには信じがたいが…」
「あとはー、ミアちゃんがー、話したいことをー、話せばいいですよー。
お2人ともー、約束はー、守ってくれますしー、何かー、アドバイスなどー、いただけるかもー、しれませんからー。」
うん、2人を信用してないわけじゃない。
昨日だってとってもていねいな対応をしてくれたんだもん。
けど、もう1人の男の人はまだよく知らないし、ぜんぶしゃべっても信じてもらえないことはあるよね…
見せられるところを伝えればいいかな?
「えっと、あたし、いろんな魔法が使えたみたいなんです。
見てもらってもいいですか?」
「かまわんよ。」
「ギルド長、ここではまずいのでは?」
「そうじゃな、儀式の間に行くとするかの。」
オーウェルさんがそう言うと、若い男の人がさっと動いて入口の扉を開けた。
そして先導する男の人に続いてオーウェルさん、あたしとアリサさん、ジョルジュさんの順番で廊下に出る。
男の人は、廊下の左側の扉、つまり前にあたしがオーウェルさんに封印を解いてもらおうとした部屋、を開けて待っていてくれた。
みんなでその部屋に入ると、オーウェルさんが最後に入ってきた男の人に言った。
「ネイル、閉めておいてくれるかの。」
男の人はうなずいて鍵を掛ける。
ネイルさん、っていう名前だよね。
「さてミアさん、この部屋なら問題なく魔法を使ってもらえるはずじゃ。
ただし、ワシらを巻き込まぬようにの。」
「はい、わかりました。」
まずは念じて腕輪を鎌にする。
それだけでアリサさん以外の3人は目が真ん丸だけど…
鎌は右手に持って、左手を自由にしておく。
「アリサさん、何か攻撃できます?」
「わたしですかー?
すみませんー、今はー、何もー、持ってきてー、ないんですー。
お師匠様ー、どうしましょうー?」
アリサさんがジョルジュさんの方を見た。
けど、ジョルジュさんも困った顔してる。
「いや、わたしも無理だ…
それに、白色で攻撃は防げないだろう。
回復をするにしても危なすぎる。」
「んと…とにかくだいじょぶなんですけど…
攻撃魔法とかでもいけると思います。」
「ほんとにー、大丈夫ですよー。」
アリサさんの口添えもあって、結局オーウェルさんが、ネイルさんに魔法を使うように言ってくれた。
「では、一番威力の弱いものを使いますので…
それでも当たると痛いですからね?本当にいいんですね?」
「はい、お願いします。」
ふうっとため息をついてから、ネイルさんが右手をあたしの方に向ける。
その手には腕輪がはめられていて、緑色の目立つ石がついてるから、きっとこれが発動体だね。
「では行きます。
《衝撃波》」
「《絶対防御》」
ネイルさんから放たれた風の玉は、あたしの左手の前で止まって消えた。
これで何度目だろ…また3人が目を真ん丸にして固まってる。
「ミアちゃんー、バッチリでしたよー。」
「あ、ありがとーございます。
というわけで…こんなのとかできるんですけど…」
んー…やっぱりちゃんと説明してからの方がよかったのかも…