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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
2章 力の解放
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106 事情を説明(ミディアドーレが…)

改めてセルヴィアナさんを見てみる。

がっちりと鎧で身を守ってて、ミディアドーレとよく似た鎌を持ってる。

って思ったら、ぱっと鎌が消えて、セルヴィアナさんの肩に白い鳥が乗ってた。


(ミディアドーレ、お前がいるということは…)

(はい、お察しの通り、こちらが我が主でございます。)

(やはりティスミアなのか…)


あいかわらず2人の会話は心に直接聞こえてくる感じだった。


「…あれ?

 ティスミア…って?」

(あなたの元の名前です、主よ。

 今は記憶に施された封印を解くことはできないので、覚えていらっしゃらないとは思いますが…

 先程使われた《死者蘇生リザレクション》の詠唱の中にも名前が出ておりました。)

「じゃ、じゃあ…あたしミアじゃないの?」

(…いえ、覚えておられないのですから、今のお名前でよいかと。)

「そっか、よかった。」

(勝手に話を進めないでほしいのだが?)


ミディアドーレとしゃべってたら、セルヴィアナさんの怖い声が聞こえてきた。


「ひぅ…ごめんなさい…」

(申し訳ありません、セルヴィアナ様。)

(それで…なぜティスミアがここにいる?)

(例の一件はご存じだと思いましたが…?)


例の一件…?

何のことだろ?


(そういうことではない…)

(なるほど、そういう意味でしたら、まったくの偶然です。

 いや、あるいは上の意思かもしれませんが、少なくとも私には知らされておりませんでした。)

(そうか…それで、どうして力だけが戻っている?)

(元より、力の解放については私に一任されておりました故…

 ただ、私は主ができる限り平穏に過ごすことができればと思っておりましたが。)

(一任されていた…?

 そんなことがあるはずは!)

(…では直接お尋ねになればよいでしょう。)


何か…ちょっとケンカみたいになってきてない…?

だいじょぶかな…


(…レアトキステス、頼む。)


ちょっとだけ考えてたセルヴィアナさんは、肩に止まってる鳥に声をかけた。

そしたら鳥はぱっと飛び立っていっちゃった。


(それではもう1つ。)

(はい、何でしょうか。)

(《死者蘇生》…あの魔法は…)

(…私は主のことだけを考えております。)


2人のよくわかんない会話は、ミディアドーレの言葉で止まってしまう。

セルヴィアナさんは、じっとミディアドーレの方を見て、ミディアドーレもセルヴィアナさんの方を見てる。

しばらくそのままの状態が続いたけど、セルヴィアナさんが先に視線をそらした。


(報告はさせてもらう。)

(わかっております。)

(できればもう…いえ、私が言うことではないな…)

(お心遣い、痛み入ります。)


そのとき、白い鳥が帰ってきた。

さっきと同じように、セルヴィアナさんの肩に止まって…何かしゃべってるっぽい?


(そうか…ミディアドーレ、お前の言った通りだった。

 それにしても…今回は運がよかったな。

 ティスミアがいなければ…)

(セルヴィアナ様、我が主の名はミア様にございます。)

(…街が壊滅してもおかしくなかったはずだ。)


あ、セルヴィアナさん、ミディアドーレのこと無視した…

セルヴィアナさん、今までずっとミディアドーレの方を見て話してたのに、急にあたしの方を見る。


(まさかこんな形で再会できるとは思ってなかったが…

 貴女がここにいるのも必然なのかもしれない…)


さっきよりもちょっと優しい表情になったセルヴィアナさんがお辞儀した。

何となくあたしもお辞儀を返す。

ミディアドーレも頭をペコっと下げてた。

顔を上げたとき、セルヴィアナさんの背中には、翼があった。


(再び道が交わることがあるならば、相見えることもあるだろう…)


そういうと、セルヴィアナさんはぱっと地面をけって飛び上がった。

飛んでいくのかなって思ったら、飛んでいく途中でどんどん姿が薄れて消えてしまった。


「ふわ…」

(さて主よ、今度は皆様に説明しなければいけませんね。)

「あ…そだね…

 でもあたしまだ全然よくわかってないんだけど…」

(それは仕方のないことです。

 私がサポートいたしますので。)

「うん、お願いね。」


とにかく宿に戻らなきゃ。

マリーさんだいじょぶかな…

アリサさんもいるしきっとだいじょぶだよね。


さっきの戦いのせいで、宿の建物も、周りも、壊れちゃってるところがある。

街中、そんな感じかもしれないな…

そんなことを考えながら、お勝手口から入る。

後ろからミディアドーレもとことこついてきてる。

もちろん厨房には誰もいない。

そのまま食堂の方をのぞいてみたけど、こっちも誰もいない。

ってことは、マリーさんは寝室かな?


マリーさんたちの寝室の扉を小さくノックして、そっと開けるとベッドの横にアリサさんとクルトさんが座ってた。

ベッドにはマリーさんが寝てる。


「ミア…大丈夫かい?」

「え…うん、マリーさんは?」

「今は眠っているよ。

 命の危険はないと、アリサも言っているから大丈夫だよ。

 ミアのおかげだ、本当にありがとう…」


クルトさんが頭を下げてそう言った…

けど、あたしは自分にできることをしただけだから。

マリーさんだからしようと思っただけだから。

伝えたかったけど、なぜかうまく言葉にできなかった。

そんなあたしの頭を、クルトさんはぽんぽんと軽くなでてくれた。


「ミアちゃんー、ここはー、クルトさんにー、おまかせしましょうー。

 追々ー、みんなもー、帰ってくるとー、思いますー。

 お疲れだとー、思うのでー、わたしたちでー、簡単なー、料理をー、準備しておきましょうー。」


それって、すっごくいいアイデアかも!

ちょっと疲れてるけど、それはみんな一緒だもんね。

でも、クルトさんに許可もらわなきゃ。


「…クルトさん、いい?」

「ミアに任せるよ。

 もしわからないものがあれば聞きに来ればいい。」

「うん!

 アリサさん、行きましょう!」

「はいー、頼もしいですねー。」


そんなわけで、眠っているマリーさんとクルトさんを残して、あたしたちは厨房に向かった。

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