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弾丸と幻想郷  作者: 紀璃人
傭兵と終りなき終焉
93/94

侵略者「八雲紫の手記」

これは紫視点の日記の様なものです。

119季。5月18日。

私が冬眠から目覚めるとちょうど異変が終わったころであり、霊夢が突っかかってきていた。

久しぶりに大暴れしてみたものの、寝起きだったこともあり、いまいちだった。

何と言うか、動きづらい。


121季。11月23日。

このごろ、なんだがスキマを開くときに違和感を感じる。

開いた瞬間に周囲の気圧がさがる様な、そんな不思議な感覚。

ちょっと、藍に相談してみましょうか。


122季。10月1日。

守矢神社がやってきてから一週間。

それ以来なんだがスキマが開きづらい。

建てつけが悪くなった訳でもあるまいし。

あと、藍から聞き流せない様な情報を聞いた。

どうやら博麗大結界の内圧が高まっているらしい。

何による圧力なのか調査を始めようと思う。


123季。6月4日。

最近なんだが私の周りだけ天気雨が続いている。

藍もそわそわしているし。

なんだか気味が悪いと思ったら幽々子は上機嫌。

しかも常に雪。


123季7月22日。

明け方に博麗神社にて局地的地震があったらしい。

それにこれらの天気との関係も気になるところ。

幽々子のところの従者を天界にけしかける事にした。

ここのところの気質が天界に集められている事に関係があるでしょう。


123季。8月16日

どうやらあの天人の思う壺に嵌ったらしい。

なんせ皆で叩きにいったのだから。

それはそうとこの前の異変を通してパチュリーから警告を受けた。

気質や魔力の濃度が上がってきているらしい。

そして圧力もかなり上昇していて息苦しいと言っていた。

彼女曰くこのままでは博麗大結界も危ないのではないか。だそうだ。

そんなことは分かっている。今日だけで一体いくつの皹を直しに行ったことか。

スキマを開いたときの圧力が下がる感じも強くなっている。

それを利用して最近ではこまめにスキマを開いて圧力を下げようとしている。

焼け石に水だろうけどやらない訳にはいかない。


126季。8月15日

ついにスキマが開かなくなってしまった。

博麗神社に行って博麗大結界の一部を開けて貰った。

初めて土下座をした。とても屈辱的だった。

そとの世界に繰り出した私は解決策の模索を始めた。


西暦2064年12月31日。

この手帳を開くのも随分久しぶりなきがする。

一向に有効な手立てはなく、内圧の高まり過ぎた幻想郷には外から入りこむ事が出来ない。

外ではスキマが開けるのが唯一の救いだけど。

それにしても外はチカラの圧力が低すぎて、

スキマを開くときに周囲の力を集める必要があり、別の意味で大変。

でも愚痴ってる暇はないの。


西暦2100年。6月24日。

とある老人(波佐間崚というらしい)から興味深い証言を聞いた。

彼の友人の周りではいろいろと不思議な事が起こったらしい。

襲いかかってきた敵兵のナイフが忽然を消えうせたりしたそうだ。

でも彼は数日前に戦場の近くで指揮官の指導中に狙撃を受けて死亡したそうだ。

現場であるアフガニスタンへと私は向かった。


同年。6月25日。

火葬される直前の彼の遺体に面会する約束をこぎつけた。

面会は午後からだそうで。

時間が開いた私は幻想郷の様子を確認した。

皹が入っているのが外からも分かり、力が漏れ出していた。

その皹に沿ってスキマを開き、力を外に流す作業を面会まで続けた。


午後、彼の遺体は老人とは思えないほどに引き締まっていた。

ふと、足元に目を向けると足首が透明な結晶の様なものによって覆われていた。

私はハッとして先ほどのスキマを再び開いて彼の身体にチカラを当てた。

するとそのチカラは結晶となって固まって行く。

そして、それらは力を分散させることなく消えていった。

彼を、生前の彼を攫っていこう。

そう考え、充分にチカラを充満させてから70年前、彼が21歳の頃へと飛んだ。


2030年。8月2日。イラク。

私はシュウを幻想入りさせる事に成功した。

時間跳躍なんてものを久しぶりにやったからか頭がくらくらして、足元がおぼつかない。

今日はこっちに泊ろう。

そのまま私はイラクの町で一夜をすごした。


翌日。

帰ろうとしたが周囲に力が全くない。

これではスキマを開く事が出来ても時間をさかのぼるほどの術式を展開する事が出来ない。

仕方が無いので暫く駐留してチカラを蓄えましょう。


2034年。4月15日。

私はようやく元の時代に戻る事が出来るようになった。

念願の帰還。私は心躍らせてスキマへと飛び込んだ。


おそらく219季の春。2104年、4月――日。日本、幻想郷跡地。

私はこの日を忘れない。

私の幻想郷が産声を上げた日だった。

そして私の幻想郷が崩壊した日になってしまったから。


里のものは土地を失い、餓死したものが多かった。そうして人が消えたため、信仰が薄れた神々は消えていった。妖怪達は争いを始め、殆どが散っていった。

霊夢もいなかった。魔理沙も咲夜も。幻想郷での異変を始末していた実力者もいなければ、レミリアや幽々子、さとりなどのカリスマを持った者もまた、誰一人いなかった。

 ―私の幻想郷が、私が管理をして守り続けた幻想郷が、あとかたもなくなっていた―。


2104年、219季。初夏

私は藍と橙を連れてかつての幻想郷に飛んだ。

しかしそこには私が送った青年はいなかった。

私は必死にさがした。藍も橙も手伝ってくれた。

そして見つけたのは別の次元だった。そして彼らは笑っていた。

私も、みんなも。誰一人、欠けることなく。なんの憂慮もなく、笑っていた。

彼を返してもらう。彼を見つけたのは私。

彼の力の恩恵を享受する権利があるのは私なのに。

なぜ私たちは大事なものを失い、彼らは幸せの享受しているのか。

なにがなんでも奪い返す。全力で。

そう決意し、私たちは準備に取りかかった―。


2129年。

私たちはシュウ達がいる幻想郷へと向かった。

藍や橙には言っていないけど、私はもう手遅れだと思っている。

それでもやらない訳にはいかない。

きっと彼ならば、なんかしらの答えを示してくれるはず。

それが滅亡だとしても。

矛盾に満ちた幻想郷にすむ彼ならば、あるいは、私の幻想郷を取り戻してくれるかもしれない。

そんな虫の良い想像を抱いていた。


2004年、119季。09月1日。

私はシュウが辿りついた幻想郷にやっとの思いで到着した。本来同じ世界に同じ人物は存在出来ないんだけど、境界を弄って短時間だけど割り込む事に成功した。

さしあたってこの世界の八雲紫を始末する必要があった。

ちょうどその時こちらの紫と藍が迷いの竹林に入ってきた。人目につかずに始末できるのは今しかない。そう思った私はその場で不意打ちを掛けてこちらの紫をスキマで私が元いた世界に結界で身動きを取れなくしてから送り込んだ。藍は力の差があったので簡単に捕えることが出来た。そうしてこちらの紫と藍を始末した私は私の式の藍を呼び寄せた。その時こちらの世界の橙が竹林から出て行ったのが見えたが、こちらでは俯瞰で探す事ができないので断念した。


同年。9月27日。

終わらない夜が始まった。竹林の中で気配を殺して張っていたが来たのは紅魔館の主従コンビだけだった。

私は適当に理由をでっちあげて同行し、永遠亭を制圧した。その時に兎を何匹か確保しておいた。そして散々戦って消耗したレミリア、咲夜、永琳、輝夜、てゐをとらえたが、優曇華院を取り逃してしまった。

でも、藍がここからは出られない様に結界を張っているので取っておいた兎の意識の境界を弄って取り出した。出現時間を多元的にして一匹を兎を大量に複製し、彼女を追わせた。

シュウが奇妙なロボと乗り込んできたのはその時だった。

私はイラクでかき集めた銃器を持たせてロボの迎撃を指示しながら、理由のない焦燥に駆られていた。

おそらく彼が本当に現れて、いよいよ逃げ場を失い、覚悟を決めなければならなかったからでしょう。

戦闘音が近付いている。


覚悟は出来ている。

彼の示す決断に従いましょう。

それが私の死であろうと。



これで納得していただけたでしょうか。

…と言っても以前の「真実」の方で間に挟んではいるのですが。

次回、最終回です。

もしかしら入りきらずに次次回になるやもしれませんが。

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