第八十一章 傭兵と全力の魔法
シュウと藍が再び戦闘を開始してからしばしの時間が経過した。空は鮮血の如き深紅に染まり、夜の気配がすぐそこにまで迫っていた。そしてそれ以上に二人は紅々と染まっていた。
周囲の木片の一部は藍の妖術によって妖孤へと姿を変え、弾幕を放ってくるようになっていた。これらの妖孤はいかなる攻撃を加えても物ともせずに襲いかかってきていた。そして、妖孤の放つ弾幕にまぎれるように鋭利に折れた木片がシュウを襲っている。藍は度重なる式の打ち込みとそれらの使役に妖力を取られて疲弊してきていた。シュウは少なくない量の弾幕を受け、木片によってあちこちを切り裂かれていた。シュウは数え切れない式を撃ち落としていた。それが藍の負担になる事を理解していたからだ。
(藍は確かに疲弊してきている。だが、このペースじゃどっちが先に倒れるか…。ペースをあげる!)
シュウは式の包囲網を抜け出し振り返った。太陽が沈み、周囲がうす暗くなった。大量の木片が迫ってきている事を気配で察知する。それを確認するとスペルカードを発動させた。
火流「ラヴァトレント」
周囲に展開した魔法陣から火炎の奔流が溢れだす。それらは木片を残らず焼き尽くしていく。シュウはすかさず魔法陣を物質化させる。直後、式の妖力弾が魔法陣に直撃し砕けていく。炎が晴れる直前、大量の妖孤が待ち構えているのを照らしだした。
(っ!拙い!)
妖孤が一斉に弾幕を張る。全方位から隙間なく放たれた弾幕はシュウの視界を赤、緑、青などさまざまの色に染め上げていく。シュウは半ばやけくそに最上級スペルを叫ぶように宣言した。
「どうにでもなりやがれ!『混沌「七色の恐怖」』!!」
宣言と同時に周囲に三本の竜巻が出現する。一本は圧縮され、鋭利になった風でカマイタチを起こしていく。二本目の竜巻は鋭利な氷塊を巻き上げ、内部をめちゃくちゃに切り裂いていく。最後の竜巻は炎を目いっぱいに湛え、全てを焼き尽くさんとする。
これらの竜巻は弾幕を吸い込み、ことごとく破壊していく。しかし、全てを撃墜できる訳ではなく、数発の弾幕がシュウを襲う。が、何発弾幕を喰らおうと、集中を切らそうとはしない。
暫くすると地面に漆黒の、空には白銀の巨大な魔法陣が出現した。直後、周囲に異常なまでの重力が掛かる。漆黒の魔法陣からは瘴気が立ち上り、その瘴気に妖孤達は引きずり込まれていく。そして瘴気に完全に呑みこまれる寸前、地面から岩石で出来た槍がそれらを打ち据え、上空へと突き上げる。上空では魔法陣のさらに上に生まれた雲が竜巻で掻き乱され、雷雲に成長していた。その雲に放り込まれた妖孤は雷の洗礼を受け、落下していく。
そこに追い打ちを掛けるように白銀の魔法陣から神威の光が降り注ぐ。強すぎる光は時に全てを焼き尽くす。そして光が強いほど影は濃くなり、一層強くなった引力によって瘴気へと妖孤が呑まれていった。
まるで地獄絵図の様な攻撃が終わると妖孤も消えうせ、魔法陣の形に木々の消えた竹林が残った。シュウは力を使いすぎた上に相当量の弾幕を受けて意識が朦朧としている。シュウの身体が重力に従って落下しようとした時、竹林に隠れていた藍が真下に現れた。彼女の顔は悄然としながらも勝者の笑みを湛えていた。
「私は、この時を待っていた…っ」
藍は式で網を編み上げるとシュウをその式で捕える。シュウが網に触れた瞬間、彼の身体は仰け反り、硬直する。その身体に電流が爆ぜる様な感覚が迸る。その衝撃でシュウの意識は半強制的に覚醒した。
「これは、一体…?」
「ついに捕えたぞ…シュウ。よくも手こずらせてくれたな…」
藍がシュウを手に掛けようとした瞬間、二人の間に閃光が迸った――。
シュウの魔法系統の最強カードがでました。
自分の感想としては、
どうしてこうなった。
相変わらずのやりすぎでしたwwwもう毎度のことなんで今さら何をと言う感もありますがねww