第七十八章 傭兵と妖孤 Ⅱ
なあ、気づいてるか?
小説内では第五十一章から一日も経ってないんだぜ?←夜は明けたけど
そんな訳で更新です。
お楽しみください。
藍はスペルカードを掲げ高らかに宣言した。
式輝「四面楚歌チャーミング」
宣言と同時に縦に並んだクナイ弾の壁が現れた。それらは斜めに迫り、交差してシュウを四角い空間に捕えた。その空間はぐにゃりと曲がりながら右へ左へと移動を始めた。
(まさか、このまま押し潰すつもりじゃ…?)
シュウの脳裏に嫌な予感がよぎる。直後、その空間のサイズを優に上回るほど、ひと際大きな弾幕が壁を飲み込みながら飛び出してきた。前は大玉、左右と後ろは壁。逃げ場はどこにもなかった。
(逃げ場がないなら逃げねばいい!)
シュウは眼の前の弾幕を物質化すると練り上げた妖力で思いっきり射出した。その大玉は壁を蹴散らしながら藍に迫る。シュウもそれに続くように距離を詰めていく。そして、大玉は最後の壁突破すると同時に限界を迎えて砕け散った。砕けた大玉の影から現れたシュウを見て藍の表情が驚愕に染まる。
「なっ!?」
「っらあああぁぁぁぁぁ!!!」
シュウは手元に大き目の剣を創り出し、藍めがけて思いっきり突きだした。その剣は深々と藍を貫いた。しかし藍の表情は嗤っている。
「なにがおかしい…?」
「いやなに――「こんなに簡単に掛るなんてねぇ!」」
藍が叫ぶと同時にその姿は霧散し、背後から現れた藍がシュウを背後から頭を蹴り抜いた。常人ならば頭が吹き飛ぶほどの威力である。シュウの目の前には貫かれた「掛け軸」があった。
「がっ!?」
「元来狐は騙す事が大の得意なものでな…。それにこれは弾幕勝負なんてぬるいモノじゃなく殺し合いなんだよ」
藍はそう言うと追撃を掛けようとシュウとの距離を詰めた。しかしシュウはそれを迎え撃つ体勢を整える。ポケットから「木片」と取り出してチカラを流しつつ叫んだ。
「御柱よ!」
「なに!?」
すると藍の真正面から御柱がもの凄い勢いで飛び出した。藍は間一髪で右にずれて回避する。しかし追い打ちをかけるように次は天井から、それを退いてよければ背後から、と次から次へと柱が藍を襲う。そしてついに藍の周囲にはあらゆる方向から延びた柱が密集し、身動きが取れない様になっていた。そして、仕上げと言わんばかりに極太の御柱が真下から他の柱をへし折りながら突き上げて、藍を打ち据え、天井を破った。
藍が空高く打ち上げられていく。早苗やウサギ兵士たちが茫然とその様子を見上げる中、シュウは天井と折れた柱を全てチカラに変換して藍のさらに上へと瞬時に移動した。そしてそれらのチカラを運動エネルギーと妖力に構成して全力の拳を叩きおろす。
藍はもの凄い勢いで落下して御柱に叩きつけられた。まるで杭打ちのように叩きつけられた藍はそのまま御柱を縦に砕きながら落下していき、地面に衝突した。その衝撃はよほど凄まじかったのか御柱の破片と壁だけになった応接間を吹き飛ばして破片を散らしていった。
「恨むなよ?だってこれは『弾幕勝負じゃない』からな。そうだろ?」
しかしシュウは自らのテンションが上がり過ぎている所為で気がつかなかった。藍の落下した場所に通常ではあり得ないほどの妖力が流れている事に――。