第七十五章 傭兵と動き出した幻想郷
―白玉楼―
シュウが応接室に向かって駆けていた頃、永遠亭に比べて”時間が進むのが早い”迷いの竹林の外では橙がシュウと別れてから二日弱ほど経過していた。その間橙はシュウとの取り決めを忠実に遂行していった。
まずはレミリアと咲夜が捕えられた事を美鈴とパチュリーに告げ、次に妖怪の山に向かい、にとりに早苗と通信をつなぐように試みて貰った。河童の戦闘用機動部隊と萃香、そして文と椛にも事情を説明し、天狗たちとともに永遠亭から外部に攻撃部隊が出てこないか、いつでも迎撃出来るようにと監視してもらった。
―そして最後に、魔理沙とともに白玉楼に向かっていた。
魔理沙は白玉楼の長い階段を飛びながら何度目ともしれない問いを繰り返した。
「なぁ、橙。シュウの伝言は一体何なんだぜ?」
「妖夢さんと西行寺さんにも伝えなきゃいけないから、後で一緒にいうよ」
「それに『長時間戦えるような装備』って…。戦争するわけでもないだろうに」
「………」
橙は返事をしなかった。魔理沙の表情が硬くなる。
「まさか昨日から紅魔館やら妖怪の山が忙しく動き回ってるのは…」
「………」
「橙…?」
「最悪の事態にならない事を願うしかにゃっ…願うしかないよ」
「噛んだな」
「ほっといてよ」
橙が空気を微妙なものにしながらも二人は白玉楼に到着した。
しかし玄関は開いていなかった。しょうがないので上空から庭にはいると、縁側に二刀を抱きしめて俯く妖夢と、隣に扇とスペルカードを持ちながらも表面上はいつもの笑みを浮かべた幽々子が居た。橙は二人に声を掛けながら二人のそばに降り立った。
「お二人とも、お久しぶりです」
「邪魔するぜ」
「あら…どうしたの?」
「………」
こうして目の前に立ったにも関わらず妖夢に反応はなかった。むしろ先ほどよりも強く二刀を掻き抱いていた。不安を押し殺すように。その様子を見た橙が滅多にない反応に、そしてその様子そのものに絶句していた。二日もシュウが「戦場」から帰ってきていないのだ。その不安に押し潰されそうになっている妖夢はとても儚く見えた。
「…橙?」
「あ、すみません。えっと――シュウさんからの伝言を預かってきました。」
「「――ッ!」」
妖夢と幽々子の表情がこわばり、驚愕に染まった。半ば絶望していたのだろう。直後、妖夢は橙に詰め寄り、胸倉をつかんでいた。
「シュウは!?生きてるの!?今どうしてるの!?ねぇ!」
「お、落ちつけよ」
「妖夢、彼の言葉を聞かないと何とも言えないのだからその手を離しなさい」
魔理沙が妖夢を羽交締めにして、幽々子がたしなめて、ようやく妖夢は表面上は落ち着きを取り戻した。
「すみません。迷惑を掛けてしまって…」
「で、シュウはなんだって?」
魔理沙に促されて橙は話し始めた。幽々子がいるからか、はたまたこれから言う事が伝わるかどうかで緊張しているのか、一生懸命な敬語で。
「今回、永遠亭は別次元の者と思われるスキマ妖怪によって、制圧されています。内部には八雲紫、八雲藍、十六夜咲夜、レミリア=スカーレット、博麗霊夢。そして永遠亭の住民全員がとらわれて、います」
「そのスキマ妖怪は紫とは違うのか?」
「それは絶対。私がこの目で見たから…。紫様がさらわれるところを…」
魔理沙が苦い顔をして黙り込んだ。それを見た橙はここで一旦言葉を区切って、気持ちを切り替えてから言葉を継いだ。
「魔理沙さんには白玉楼の警護に参加してもらいます。その他の要所は他のみんなに頼んである…あります。私もここの警護に参加します。だからここは四人体制で―」
橙がそこまで言ったところで妖夢は刀を持って飛び出していた。
「おい!妖夢!どこ行くんだぜ!?」
「白玉楼は任せました!私は―
私はシュウの傍にいなきゃいけない気がするんです!!」
それだけ叫ぶと妖夢は魔理沙の静止の声を振り切って永遠亭へと駆けていた。
(シュウ…。生きててくれた…。待ってて…今から傍に行くから…。)
今回は割と難産でした…。
なんででしょうね?
と言うかこれで三話分ぐらいの力を使った気がします←
あ、今回のあとがきは長いので
「小説の内容だけ読めればいいや」
って人は飛ばして貰って結構ですよ?
ぶっちゃけ小説にあまり関係ないですから。
にしても今後は予定が詰まっておりまして、さらに更新頻度が下がる模様です。
なにはともあれうちの学校では明後日から文化祭。
そしてそのあとは大会シーズン入り。
直後に修学旅行で、
帰って来てから一週間もせずに定期テスト。
そのあとは舞台の予定があり、
そんなこんなで年末テスト(ここの定期テスト―年末テスト間は例年一カ月もあかないのです)
その頃にはもう年末で冬コミ準備or冬コミを断念して地元に帰省(連行)ですよ。
どんだけ過密スケジュールなの…?
え?クリスマスが無いって?予定があるわけないじゃないですか。
強いて言えば部活があるかもしれないぐらいですかね
あ、話飛びますけど今回と言うか夏休み明けてから更新頻度が下がったのにはこの文化祭も関連してて、出し物で戦争ゲーム(将棋の戦車版みたいな)ものをプログラムで作ってまして。
それが結構ギリギリだったのもあります。
言い訳です。
すいません。
でも楽しく描くのがいいと思うので←
あと、最近ザ・インタビューズなるものをはじめまして。
質問が来ないんです。原因を考えると宣伝をあまりしてなかったからではないか。
と言う事でやってます。
http://theinterviews.jp/maeri-kiri/interview
ここは完全匿名制なので
「DMとか感想とか個人を特定されるのはちょっと…」
と言う人はこちらを利用してください。
ちなみにあまり批判が集中すると凹みます。