第七十一章 傭兵と張りぼての部隊長
一話が短くなっているのは勘弁を。
シュウは手近なウサギに狙いを絞るとスペカを発動した。
引力「アビスグラビティ」
狙いをつけたウサギを中心に魔法陣が展開していく。ウサギ達は驚き、逃げようとして――捕まった。魔法系統闇属性範囲攻撃。魔法陣の内側に生じた闇の引力で地面に磔にして、瘴気で身体を腐蝕させる魔法。シュウが質量を変えずに動きを奪う事を考えた末に選んだものだった。瘴気が晴れると、そこには潰れて半分朽ちたウサギが数匹転がっていた。ウサギ達やてゐに衝撃が奔った。相手は格が違う、と。シュウはそのウサギ達をチカラに還元し、身体にまとった。その時、ウサギの構成を読んで、可能性が現実になった事に顔をしかめた。
(やはり…。俺の仮定はあっていたが…。これはこれで辛いな…)
「距離をしっかり保つんだ!」
てゐがウサギ達に号令を出す。ウサギは散り散りに散開しながらシュウの眼や、足元など行動を阻害しやすい場所を攻撃していく。シュウは振り切るように周囲を見回すと、纏ったチカラを運動エネルギーに変えることで、次から次へとッ目にもとまらぬ速さでウサギを分解して回った。すると数分もしないうちにウサギの大半はチカラの塊としてシュウの右手に集まっていた。
「ぐ、ぬ…」
「てゐっていったけか?」
「…なんだい?」
「どう言うことか説明してくれるか?主に目的とか」
「断る、っていったら?」
「始末する。どうせウサギ達と一緒で複製なんだろ?」
てゐは複製という言葉を聞いた瞬間表情を凍りつかせた。
「どうして…それを知って…」
「さぁな」
「う…ぐ…」
「説明する気はない。と言う事でいいな?」
そういうとシュウは手にためたチカラをてゐにぶつけて爆裂させ、吹き飛ばした。彼女は門を超えて飛んで行こうとして―門の上空で静止した。まさに越えようとした瞬間門の上から敷地を囲うように結界が現れ、磔にしたのだ。てゐは目を見開いて痙攣しているようにみえた。それを見ていた早苗はシュウのもとに駆け寄ってまくしたてた。
『シュウさん、なにがどうなってるんですか?それに複製って?なにか秘密を握って―』
「おちつけ、一つずつ答えていくから。それにしても厄介な結界だな」
シュウがてゐを見上げてそうつぶやくと、さらに質問を重ねようとした早苗の出鼻をくじくように声がした。
「師匠!」
聞き覚えのある声にシュウが振り向くと橙が門の少し外に立っていた。