第七十章 傭兵とラビットハンティング
「狩りの時間だよ!」
てゐは扉の方に飛び退って鎌をこちらに向けながらそう叫んだ。するとシュウ達とてゐの間に扇状に展開していた武装ウサギたちが一斉に銃を構えた。その眼は赤く怪しく輝いている。シュウは銃口を向けられるよりかすかに早くスペカを発動した。
完全武装「バトルセット」
シュウは自らの生体情報を書き換えて皮膚を覆うように不可視の装甲を展開した。そして両手に充分なチカラが充填される。それと同時に武装ウサギたちの銃器が火を噴く。直後、シュウと早苗を銃弾の嵐が襲う。
『シュウさん!』
「大丈夫だ、皮膚をそのスーツより頑丈に作り変えた」
『…心配して損しました』
銃弾の嵐の中、平然と会話をする二人。武装ウサギ達はその光景を信じられないと言った様子だったが、銃撃の手を止める気配はない。それをみていたてゐは腹立たしげに叫んだ。
「えぇい!何やってるんだい!ちゃんと狙いな!」
「当たっても効きません!」
「ロボ撃ってどうすんだい!」
「生身の方も効きません!」
「…下がる訳にはいかないよ。銃撃はやめるんじゃないよ!少しでも足止めしつつ増援を待つよ」
そう言うとてゐも自動小銃で二人の足を打ち始めた。増援を呼ぶためか伝令ウサギが何匹か走り去って行った。
『シュウさん、相手は諦めモードみたいですね。増援待ちのために足止めに徹底するようです』
「なんで分かるんだ?」
『集音機ついてますから』
今更ながら河童の技術に感嘆しつつ呆れたシュウは肩をすくめた。
「…そうかい」
『でも、ゴーグルを保護しないといけないんで戦うのが面倒なんですよね…』
「ゴーグルは脆いのか?」
『目に迫ってきて怖いだけです』
シュウは、それは保護するのではなく目を覆ってるだけではないのか?と思ったりしたが、口には出さず、代わりにため息をはいた。
「はぁ…とりあえず俺が倒せばいいんだろ?」
『お願いします。私は二日酔いが抜けてないので後ろで休んでます』
「はぁ…」
『冗談ですよ?』
今度は聞く耳を持たずにシュウはウサギ達の方へ向き直った。
(…さて、どうするかね…?この装甲展開するのも疲れるし、早くカタをつけたいところだが…)
そうしてしばらく適当に銃で応戦しながら鉄の雨の中で考えていたシュウだったが、ある作戦を思い付いたようだ。
(一番近いのは…あいつか)
もっとも手近にいた武装ウサギ少女に狙いを定めるとスペカを取り出した。しかし、シュウはなかなか作戦を実行する事が出来なかった。なぜならこの作戦はシュウの中で確立しつつある仮定に基づいたモノだった。
(もし、俺の憶測が間違っていたら…。いや、それは今考える事じゃない)
シュウは迷いを振り切るようにスペカを発動した。
ラビットハンティングはウサギの狩りとウサギ狩りのダブルネーミングです。日付変わるまでに間に合わなかったのが「傭兵と」の後を考えていたからです。すみませんでした。