第六十九章 傭兵と護衛
玄関前のウサギたちを掃討して中に進むとブレザーに身を包んだウサミミ少女が現れた。彼女はかなり焦っているようだった。逃げ回っていたのは彼女だろうと容易に想像できた。
「うそっ!?ウサギ以外に追手が!?」
その少女はそういうとスペカを取り出した。
『ちょ、ちょっと待ってうどんげ!』
「え…?その声…早苗?」
どうやら彼女は「うどんげ」と言うらしい。…愛称であるのはほぼ確実だろうが。
「早苗、知り合いか?」
『あ、はい。彼女は永遠亭の薬をいつも届けてくれるんです』
「そういうことか、それで―」
「とにかく匿って!」
シュウが言葉を続けようとしたのに合わせて「うどんげ」は叫んだ。それもそうだろう。先ほどまで逃げ回っていたのだ。いつ追手が来てもおかしくないのだ。三人は玄関に向かって走り出した。そしてそれを待っていたかの様なタイミングで追手が現れる。
「やっぱり基地が崩壊してる!」
「外に出られる前に追いつくよ!」
「「「おー!」」」
「なんだかな…」
『どうしました?』
「いや、追手の台詞がなんとなく緩い印象と言うか…」
『まぁ、少女の声ですし…』
そうこう言っている間に玄関に到着したが先陣を切っていた早苗がドアを開けようとした。しかし、どんなに力を込めても引き戸はビクともしなかった。
『どうして…!?スーツの力をもってしても出力が足りないの…!?』
「早苗!追手を潰してくれ!俺が代わる!」
シュウと早苗が立ち位置を変わる。早苗はガトリングでウサギたちを食い止めている。シュウは引き戸に手を置くと、その扉を「分解」した。分解された扉は砂になって足元に落ちる。
「今だ!」
シュウの掛け声で三人が一斉に外に出る。シュウは三人が外に出たのを確認すると砂を変換して扉があった場所にコンクリートの壁を創り出した。
「ふぅ…」
『なんとか出られましたね…』
「ありがとうございます…。あ、自己紹介がまだでしたね。私は鈴仙・優曇華院・イナバと言います」
「よろしく、俺は村島秀だ」(うどんげいん…どこかで聞いたな…)
一人何かを思い出そうとしているシュウを置いて、早苗は状況説明を求めた。シュウは思い出すのを諦めたのか、すぐに会話に戻ってきた。
『ねぇ、うどんげ。何があったのか話してくれない?』
「あ、うん。まず昨日私たちは月の使者から身を守るために月に細工をしたわ。正確には師匠がだけど」
「それが昨日の月の異変か」
「たぶん…。それで紅魔館の主とその従者とスキマ妖怪が一緒に攻めてきて…」
「紫が一緒に?」
『あのスキマが一緒に?』
「うん。で、師匠と輝夜様と紅魔館の二人をまとめてスキマに閉じ込めて、一気に永遠亭を占拠し始めて…。てゐも一緒に逃げてたんだけど、途中で捕まって…。」
『それじゃあ、あのウサギたちは―』
「スキマから出てきたものよ。見覚えがないもの…。それに出てきた奴らは武器を持ってた」
『それじゃあうどんげ―』
早苗は再び何やら話していたがシュウの頭はまたしても思い出そうとしていた。
(うどんげ…うどん、げ?うどん毛IN!?こいつ、外道か!)←(五十一章参照)
シュウをある種のカルチャーショックが襲う。その所為か、シュウは思いっきり声に出していた。
「外道か!」
「『へ?』」
突然の叫び声に固まる早苗達。二人がシュウの方を向いたとき、後ろの「地面から」人影が飛び出してきた。その人影は小柄な少女で頭にはウサミミ。その手には巨大な杵。
「外道と呼ばれちゃ、出ない訳にはいかないね!」
そう言って飛び出した少女はその杵でうどんげを思いっきり横なぎに打ち据えた。遠心力や梃子まで使って全力で放たれた打撃は彼女を吹き飛ばし、永遠亭の壁に衝突して止まった。
「…てゐ。どうしt…うわぁ!?」
うどんげはそこまで言ったところで壁に開いたスキマへと呑まれてしまった。いまの発言からして目の前の杵を持った少女はてゐと言うらしい。そしてそのスキマから大量の武装ウサギが現れた。
「お前たち、生け捕りなんて面倒な仕事は終わった。残るは獲物の人の子」
そう言って杵を地面にたたきつける。先端部が地面に埋まって容易に抜けそうにない。
「これからは狩りの時間だよ!」
そう言って杵を柄を持ち上げると、木の太い部分が地面に残り、刃が姿を現した。その得物はどう見ても鎌だった。




