第六十六章 傭兵と出立の朝
シュウは月の以上が解決した(していた)事を幽々子に報告するためにミスティアの屋台を訪れていた。ちなみに妖夢は幽々子が白玉楼にいる可能性を考慮して、そっちに向かっている。屋台の前に降り立つと、いかにも常連の様にのれんをくぐった。
「よっす、幽々子さんまだいるか?」
「帰ってきたんだね、シュウ。でもねちょうど入れ違いかな」
「と言うと?」
「幽々子さんは今帰ったよ」
そう言って曖昧な笑みを浮かべると、仕込みに戻ってしまうミスティア。シュウは礼を言って帰ろうとした。その時ミスティアの屋台にある人物が現れた。
『いや~参ったよ…。アリスさんと話しこんじゃって…』
「早苗?」
『シュウさん!?まだいたんですか?…と言うか、なんで疑問形…?』
「いや、顔見えないし。あと、今戻ったってところだな」
屋台に現れたのはスーツで顔の見えない早苗だった。その手には分厚い本が握られている。
「…その本は?」
『魔理沙さんから「死ぬまで借り」てきました。魔導書ですよ』
「魔法には魔力が…いや、魔法談義は今度にs―」
シュウがそこまで言いかけた時外に気配を感じた。その気配は屋台に駆け寄ってきた。
「お嬢様と咲夜さん見てないですか!?」
入ってきて開口一番にそう訊いてきたのは美鈴だった。
『私は見てないですけど?』
「屋台に来るような人たちに思えないけどねぇ」
早苗とミスティアは知らない様だ。美鈴は早苗の姿にぎょっとしながらも落胆を隠せないでいた。そして「どうせ駄目なんだろうな…。」と考えているのが丸見えな表情でシュウにも訪ねてきた。
「…シュウさんは何か知りませんか?」
「みてはいないが、情報はあるぞ」
「ですよね…。簡単に見つかる訳g―。…え…?」
「だから情報ならあるって」
美鈴は一瞬固まったが、すぐに復帰してシュウの両肩を掴んで詰問してきた。
「なんでそれを先にいわないんですか!!??それでっ!情報って!?」
「昨日の夜に二人が人里を襲撃したってこと。それで今、刺し傷だらけになった慧音さんが療養中だ」
「なんでそんな事を…。それに、それだけじゃあ場所は特定出来ないし…。どっちに飛び去ったとかは見てないんですか?」
「めった刺しにされた奴にそれを期待するか?」
「………。」
美鈴は下を向いたまま動かない。その場に気まずい沈黙が訪れる。早苗が沈黙に耐えかねて何かを言おうとしたがその前に美鈴が動いた。腰から折るように深深と頭を下げたのだ。
「お願いしますっ…手を貸して下さい。私たちにはあの二人が居ないとだめなんですっ…」
「二人は異変解決に向かったんだろ?」
『となると永遠亭ですかね』
「二人とも…」
「あたしもそれとなくお客に聞いてみるよ」
「みんな…ありがとうございますっ」
美鈴の瞳には涙がたまっているように見えたが、それを指摘するようなものはこの場に居なかった。シュウは早苗とともに永遠亭にむかうことにした。美鈴は情報収集を続けて紅魔館で待機しているパチュリーのもとに報告に行くそうなので別れた。
『あ、結局これ必要になったな…』
「これ?」
そう言って早苗が取り出したのは小さな木片だった。
「なに、これ?」
『御神木の欠片…だって。神奈子様がシュウさんに渡してくれって』
「この木片にいったい何が…」
そう言って受け取ったシュウは木片から感じるチカラに人為的なものがある様な気がした。気になって構成をスキャンするとそこには神力の術式が組まれていた。
『それの使い方は―』
「大丈夫、理解した」
『え?』
シュウは早苗に少し離れる様に言ってから術式をなぞって力を流した。すると目の前に木の柱が下から突き上げるように飛びだしてきた。
『…。御柱…』
「まぁ、何かに使えるだろうな。とりあえず向かおうぜ」
二人は永遠亭に向かって飛び立った。
弾丸の永夜抄は夜が明けても終わらない!(ぇ