第六十三章 傭兵と、ある夜明けと、ある夜の始まり。
タイトルなげぇorz
「魔理沙!」
いきなり降ってきた魔理沙に驚きながらもアリスは声を掛けずにはいられなかった。
「あぁ、アリス。ちょっと失敗、だな…。ははは」
「魔理沙、大丈夫なの?」
「大丈夫ですか?」
アリスは「ちょっと失敗」で済ませる魔理沙に呆れていた。それと同時に早苗が箒と八卦炉をもって、ヘルメットを腋に抱えて現れた。
「お、持ってきてくれたのか」
「あ、はい。ホントに大丈夫…みたいですね」
「魔法の実験に爆発はつきものだぜ」
「そんなミスするのは魔理沙ぐらいよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。爆発なんてめったに起こらないのよ。魔理沙はロクな考えもないのに雑な術式で実験するからそうなるのよ」
「心外だな、そんなことはないぜ」
妙に自信満々に答える魔理沙。その様子に早苗は期待に満ちた目を向ける。が、アリスは呆れを通り越して白い目をしていた。
「じゃあ、参考までに聞くけど、なにを考えて実験したら爆発なんて起こせるのかしら?」
「この実験は面白そう!ってことだけだぜ」
「へぇ~、実験ってやっぱり危険なんですね…」
「早苗、違うから。…ちなみに術式に掛ける時間は?」
「5分もあれば充分だぜ」
「……、それは爆発するわ。実験が必要なほど高度な命題に使う術式が5分で組みあがる訳が無いわよ」
早苗は魔法使いではないから、その辺の時間の基準も分からないし、話についていけなかったのでアリスに説明をもとめた。
「…もう少し詳しく言ってもらってもいいですか?」
「そうね、魔法使いじゃないと分かりづらいわね。まず、5分やそこいらで組みあがる様な術式はその辺の魔導書漁れば出てくるのよ、結果付きで。それに―」
こうしてアリスによる、魔理沙にとっては耳の痛い、早苗にとっては興味深い話が始まったのだった。そして気が付いたら太陽が昇ってきていた。
「―つまり、こう言った現象を術式によって再現するには―」
「アリスー。太陽が昇ってきたぜー。異変はいいのかよー?」
「「あ、異変…」」
アリスと早苗が異変解決に向かっている途中だった事が気が付いたころには太陽は昇りきっていた。
―シュウ・妖夢side―
「「遅い…」」
時はさかのぼって早苗が魔理沙達と戦闘を始めた頃。
ミスティアの屋台に取り残された二人は待ちぼうけをくっていた(あたりまえだが)。
「二人とも、流石に何かを食べる気分でもないだろう?」
「あぁ、結構食べたしな…」
二人は酒が飲める状況でもなかったので料理をちまちまと摘まんで待っていた。最初は鰻のかば焼き、次に牛もつ煮込み、枝豆、豚の串焼き、天ぷら、そして、新メニューとしてだすおでんの味見までした。(ちなみに全て少しずつしか食べていないので、あまり時間が潰れる訳もないのだが)
「こんなところを幽々子様に見られたら―」
「なにが見られたら大変なのかしら?」
「「――ッ!?」」
妖夢が今しがた話題にだした幽々子がミスティアの屋台に顔を出していた。
「ところで二人とも」
「すみませんでした、今行きますので―」
「私を置いてこんなに美味しそうなものを食べるなんて酷いじゃない」
「え、そっちなの?」
思わずシュウが尋ねると扇で口元を隠しながら怒っている様なそぶりを見せた(が、目の前の料理をまのあたりにして顔がほころんでいる)。
「二人とも、早く異変解決に向かいなさい。夜は短いのよ。はふはふ…」
串焼きをほおばりながらも注意する幽々子。二人は幽々子の機嫌がいいうちに店を出る事にした。