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弾丸と幻想郷  作者: 紀璃人
傭兵と歪な月
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第六十一章 傭兵とオペレータ

オペレータはオペレーションシステムの事で、人じゃぬぇですよ。


 レールガンの存在に絶望している二人とは裏腹に、早苗は焦っていた。なぜならある問題に直面していたからである。その問題は「電池切れ」。レールガンは消費電力が激しいのであまり撃てない事をオペレータに忠告されるまで忘れていたのである。しばらく使用を控えて動いていれば充電出来るのだが、この暫くがどの程度なのか把握できていなかった。節約しようと出力を下げたら一度耐えられそうになってしまった。


[残り電力20発分]


 リロードをしたら視界の右下端に残弾ガイダンスが表示された。一方、マルチスコープを使ったレーダーによると敵の人形は残り26体。全部命中させてもあまる。早苗はその事実に舌打ちをした。いくら出力を落としたとはいえレールガンを防げそうなほど堅牢な守りをこの手で破れるのだろうかと言う疑念が頭をよぎった。しかし本来の目的がこの戦いでない以上、弾切れまで粘るのは得策ではない。そう思い、使う武器を右手の機関銃と左に持ち替えた補助デバイスに切り替えた。


「お…?アリス。レールガンが止まったぞ」

「弾切れかしら…?」

 そこで魔理沙はハッと何かに気が付いた様だ。

「…。と言うかなんで私たちはぼーっと見てるんだぜ!?」

「…それもそうね。挟むわよ」

 そう言うと二人は散開した。


 早苗の視界ディスプレイに二人が行動を開始した事がウィンドウ表示された。風で人形を覆い、カマイタチの要領で切り裂きながら挟まれまいと移動する。

「アリス!弾幕薄いぜ!」

「分かってるわよ!」

 魔理沙の指摘でアリスが人形を新しく20体追加する。

『キリが無い…。元を断つしか…ッ!』

 アリスに狙いを移行した。それはアリスにも伝わった様だ。早苗はアリスに向かって肉迫する。自速にスーツの性能が加わった高速域でアリスの近くまで潜り込む。アリスは早苗に手元の人形を向かわせる。早苗はデバイスを格納し銃を左に持ち替えて右手で人形を殴り飛ばし左の銃を突き立てゼロ距離射撃で黙らせる。そうして人形の包囲網を突破しさらにアリスに迫る。

「アリス!」

「大丈夫!構わないで!」

 魔理沙が援護射撃をしようとするが、二人は旋回しながら高速移動しているので迂闊に攻撃出来ない。もし、精密射撃が苦手な魔理沙が攻撃しようものならアリスもろともあたってしまうだろう。アリスは後ろに下がりながらスペカを発動した。


偵符「シーカードールズ」


 突破した際に後ろに残してきた人形とアリスが新たに取り出した人形で挟み撃ちにするようにレーザー照射の網で早苗をとらえた。ゴーグルを守りながらもレーダーを元にアリスを追い続ける早苗の目の前にウィンドウが現れる。


[対魔法装甲に切り替えますか?]

[yes/no]


『対魔法装甲?』

『魔力を動力に変換し機動性と耐久力を高めるモードです』

 思わず漏らした早苗の疑問にオペレータが答える。受け答えが出来る事に驚きながらも魔法装甲を展開してみる早苗。すると、下側に表示されている機体情報の数値がアリスのレーザーを受けて上昇していく。しかし、駆動部の負担もまた、増えていく。これを見た早苗は早期決着を心に決めてアリスに向かって突撃した。

「効いてな…ッ!?」

 アリスは視界を覆い隠すレーザーの網から飛び出してきた早苗に反応出来なかった。そしてお互いに触れられる距離になったところで、早苗がアリスの鳩尾に掌底を叩きこむ。アリスの手から魔導書がこぼれおちる。

「くぁ……っ!」

「アリス!…あぁ!もう!」

 魔理沙が苛立だしげな声をあげてスペカを起動した。おそらく何も出来ていない自分への苛立ちが多分に含まれているのだろう。


彗星「ブレイジングスター」


 魔理沙は最大速度で二人のもとに特攻した。早苗がアリスに追い打ちを掛けようとした時アラームが鳴った。魔理沙の攻撃によるものだ。


[Enemy 急速接近]

[危険度 高]


 早苗はアリスのこめかみに一発いれるとその反動を使って離脱した。そしてアリスを魔理沙に向かって飛ばす。

「「――ッ!」」

 魔理沙は急いでスペカを中断してアリスを受け止めるべく急ブレーキをかける。が、止まりきれる訳もなく、とても強い衝撃とともにアリスを抱えて離脱していった。

「アリス!大丈夫か!?」

「魔理沙…。気にかけてる場合?ちょっと脳を揺すられた程度よ」

 額には脂汗が滲み、身体と声が震えているにも関わらず、アリスはそう言って突き放した。 

「…アリス」

「それよりも魔導書を落とした事も痛いわね…」

「アリス」

「さて、どうしようかしら…?私は並行感覚が曖昧だから動きづらいし」

「アリス!」

 自分を置いて話を続けるアリスに魔理沙は怒鳴りつけていた。

「…なによ」

「アリスは下がってろ」

「んな…」

 アリスの顔から色が失われる。直後怒りにも呆れにも似た声で魔理沙に語りかけた。

「今の見てなかったの?魔法がてんで効かないのよ?一人じゃ辛いのが目に見えて―」

「アリス。無理してんのが丸分かりだぜ」

 魔理沙の指摘に言葉を失うアリス。

「とにかく下がってろ。さっき私は何も出来なかったからな」

「で、でも…」

 反論しようとしたがその時にふらりとバランスを崩して落下しそうになるアリス。その表情には足手まといになってしまう事に対する悔しさと申し訳なさが入り混じっているようだった。

「アリスは頑張ったぜ。だからちょっと、地面に腰をおろして待っててくれよ。な?」

 魔理沙はそういうとアリス頭に手を置いて、わしわしと撫でてから早苗のもとに向かった。


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