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弾丸と幻想郷  作者: 紀璃人
傭兵と歪な月
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第五十九章 傭兵と「魔法使いの」ロボとの遭遇

この話は五十四章と五十五章の後にあたります。


―早苗&アリマリside―


 アリスと魔理沙は着実に竹林に近づいていた。その時目の前から迫りくる人影があった。そしてそれは、まさしく「影」だった。

 闇夜に溶け込む様なその身体には月光が怪しく反射している。装甲が何重にも重なっているにもかかわらず、身体にフィットする作りになっており、関節は円盤状の駆動部を有している。そして腕の部分が他に比べて膨らんでいる様にもみえた。

「アリス、ありゃあ何だ?」

「一応人型みたいだけど」

 アリスと魔理沙は初めて見るロボットを前にただ呆然と疑問を呈する事しか出来なかった。


「こちらワルキューレ1。交戦許可を」

『あー。早苗。今のは何だい?』

 早苗はヘルメット内部のマイクに通信回線を開き本部(にとりの家)に交信した。するといかにも眠そうで、気だるげなにとりの声が内部スピーカーから聞こえてきた。

「そこはノッてよ!こう言う戦闘部隊にコードネームは基本でしょ!」

『部隊って…早苗一人じゃないか。なんでコードネームなんかが必要なんだい?』

「散って行った仲間の思いをその身にに受けて、生き残る決意を新たに戦場に赴くたった一人の部隊長…。一人になってもみんなで戦ってる事を忘れないためにかつてのコードネームを―」

『あー。分かった分かった。聞いた私がバカだった。自分の世界もうそうに没入するのは後にしな』

「むぅー。これからが盛り上がるのに」

 いかにも呆れた声が回線に乗って聞こえてきた。どうやら結構不機嫌なようだ。

『第一、なんでオペレータが欲しいなんて言い出したのさ。オペレーション機能が付いてるのは知ってるでしょ?』

「ロボットで、戦闘なんだよ?ロボのバトルはパイロットと機体だけじゃ成り立たないの。機体の状態を逐一伝えるオペレータや戦況を俯瞰して作戦を決定する本部の人達だって必要…。ううん。それだけじゃない。整備士とか―」

『だから、機体情報はこっちじゃ分からないの。戦況も早苗が教えてくれないと判らないし、作戦を考えるのは私の仕事じゃない。整備士に至っては戦闘中は出番なし。とにかく私はいまこうして通信している意味はないでしょ?』

「冷たいよぉ!にとりぃ!」

『とにかく私は普段寝てる時間帯なの。せっかくいい夢見てたところだったのに。勝手に家に上がられてたたき起された揚句に、その用事が居る意味もないオペレータなんて勘弁だよ。用件がそれだけなら私は寝るよ』

 普段の彼女からは到底考えられないほど無愛想な声でそう言うと回線を切られてしまった。きっとモニターが付いていたならば、恨みがましい表情のにとりと言う珍しい彼女が見られただろう。

「つめたいよぉ…」


「なぁ、アリス」

「なに?」

 にとりと早苗が交信している頃、アリスと魔理沙は「早苗の声だけがスピーカーから流れてくる黒い人型の何か」をじっと見つめていた。

「あの声、早苗だよなぁ」

「そうね。彼女、いつから一人でしゃべるようになったのかしら?」

「きっとなんか辛い事があったんだぜ」

『冷たいよぉ!にとりぃ!』

 交信相手に愛想を尽かれた様な台詞を吐く早苗。魔理沙はそれを聞いてさらに可哀想になってっきた。

「妄想の中でも愛想を尽かされるなんて…。不憫だぜ…」

「妄想なんだからその辺は自由なんじゃない?きっとMに目覚めたのよ。精神的に」

「そんな巫女はいやだぜ」

 その時早苗 (パワードスーツ姿)が顔をあげて二人が近くに居る事に気が付いた。そして、外部スピーカーの電源を切り忘れていたことも。

『あ、魔理沙さんにアリスさん。どうもです』

「いまさら遅いぜ、早苗」

『あの…。聞こえてました?』

「大丈夫よ、早苗。私は誰にも言わないであげるから」

「私は言いふらすぜ」

『何をですか!?』

 早苗にとってはにとりの声が外に出ていない事など知る由もないので、心当たりがロボヲタぐらいしかなかった。しかしその事は以前既にばれているので、今更になって言いふらすだの何だの、と言った話になると見当が付かなかった。

 一方アリスと魔理沙は早苗が誰かと話しているなんて知る由もないので、(通信技術自体を知らないので)なぜ心当たりがないのか理解できず、きっと彼女が妄言を垂れ流していた事に気が付かなかったのだと結論付けた。

「何をって…なぁ」

「…ねぇ」

『せめてそれだけでも教えてください!』

「聞かない方が身のためよ」

「そうだぜ。聞いたらきっと立ち直れないぜ」

『そんなに酷いんですか!?』

「「そりゃあ…酷いな(わね)」」

 憐れみを込めた表情で、なおかつステレオで断言されてしまい、ショックを受ける早苗。…と言ってもヘルメットの所為で二人にはショックを受けている事が伝わっていないのだが。

『私の何を知ってしまったんですか…?』

「言えないぜ」

『どうしたら…いえ。弾幕で勝ったら教えてください!』

「教えるのは無理だが、口封じぐらいならいいぜ。負けるつもりはないが」

「早苗、口封じにしといた方がいいわよ。そうしないとコイツ本当に言いふらすから」

『…そうですか。とにかく内容は後で決めます』


  ――next battle is

    "marisa kirisame" &"Alice Margatroid"

         VS "sanae kotiya" in Enhanced combat exoskeleton

    ――to be Continued...


Enhanced Combat Exoskeleton は戦闘用強化外骨格の意味です。要するにパワードスーツですね。

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