第五十七章 傭兵と傷つけられた自信
傭兵関係ないのにこのサブタイ縛りはきつくなってきた←今更www
「――お前たちの歴史も喰ってやる!」
そう言うと慧音はスペルカードを発動した。
野符「義満クライシス」
慧音の周囲に三つの固定砲台が現れた。それらは独立して楕円状の弾幕を放ってくる。弾幕はお互いに交差し絡みあいながら咲夜に迫る。咲夜は自分に向かっている弾幕の速度を落としながら確実に回避していく。しかし三点射撃によって立体的に交差する弾幕に苦戦し、攻撃まで手が回らないことに焦りを覚えていた。そこで咲夜はある技を使うことを考えた。
(こ…の…っ!厄介な軌道…!こうなったら…バニシングエブリシング!)
咲夜が二枚のトランプを残して消え去る。
「なに…ッ!どこに消えた!」
「よそ見とはいい度胸…ね!」
「…ッ!?」
慧音が危機を察知して横に飛ぶとさっきまでいた場所にナイフが「後方から」飛来した。それらのナイフはそれぞれの固定砲台に突き刺さり、消滅させた。
咲夜は厄介な攻撃を撃破した事に安堵しつつ、気を引き締めた。次は何が来るかわからない、と。そのうえで相手を威圧する事も忘れない。
「さあ、砲台は潰させてもらったわ」
「お前、何者だ…。いや、それは今問題じゃないな。理屈も感想も後回し、とにかく今は―」
「戦いの最中に考え事なんて随分な余裕ね?」 慧音は今目の前で起こった「瞬間移動」に対する驚きを隠しきれず、自分をおちつけるために思考していた。咲夜はその時間を与える訳もなく慧音に肉迫した。そしてこの隙で決めるためにスペカを発動する。
傷魂「ソウルスカルプチュア」
両手に握ったナイフを超高速で慧音に振るう。秒間何十もの斬撃をたたき込む。慧音もただやられるのではなくとっさに引いたり回りこんだりしているが殆どかわせずに受けてしまう。そのため皮膚は切り刻まれ周囲は紅くなり始めていた。そうして避けられない事を悟ったのか、はたまた慧音の中で何かが切れたのか、慧音は激昂した様に攻勢に打って出た。
「いい加減に…しろ!!!」
「え?」
慧音は咲夜に突進すると肩に拳をあて、左右に振りきって咲夜の両腕を開かせた。そしてがら空きになった顔に全身全霊を込めた頭突きを叩き込んだ。
その頭突きは咲夜にとって二重の意味で予想外の行動だった。まずはこんな攻撃手段を相手がとったこと。もうひとつは自分の攻撃を受けても動きが鈍っていなかったこと。
その事であっけにとられていた所為でろくに防御もせずにくらってしまった。その衝撃で口から流血している。咲夜は攻撃を中断し、退いた。
咲夜は改めて妖怪という生物の打たれ強さを感じていた。それ以上に慧音から感じるプレッシャーは多くのもを背負っている者のものだった。咲夜は自分にこの妖怪を退ける事が出来るのか不安になっていた。それだけ自分の攻撃が効いている手応えがないと言うのは精神的に堪えるのだ。
「やはり、貴様は危険人物だった様だな」
「なんで立っているのよ…」
「咲夜」
あれだけの攻撃を受けていながらしっかりした様子の慧音に咲夜が自信を喪失しかけた時、背後に居たレミリアが声をかけた。その眼にはしっかりとした光が宿っており、真摯に咲夜を見つめていた。
「咲夜は私の従者なのよ?しっかりしなさい」
「申し訳ございません…。時間を取ってしまって―」
恐縮する咲夜にレミリアはかぶりを振った。
「そうじゃなくて、自信を持ちなさいと言ってるの。自分が信じないで何が成せるの?」
「お嬢様…」
「血を拭いたらもう一度向かいなさい。毅然とした態度で、しっかりと。自分が決めた事、自分が成すべき事を、自分の力で遂行するのよ」
「…はい。お嬢様」
レミリアはそれだけ言うと再び後ろに下がっていった。あくまで咲夜の戦いに手出しはしない様だ。その態度に再び決意を新たにした咲夜に迷いはなく、慧音を視線でしっかりと射抜いていた。
――to be Continued...




