第四十八章 傭兵と目覚めた白狼
椛の実力とは…
「飽くまで引かないつもりですか」
「ならば私がお相手しましょう」
「それが哨戒を任された私の使命…」
そう言って嗤う椛。その笑みを前にして俺は「そういえば今日は満月だったな…」などと場違いなことを考えていた。
「ねぇ、シュウ」
「どうした?」
「あいつ、かなりヤバイよ…」
「と言うと?」
「満月の持つチカラに完全に呑まれて箍が外れてる」
「なるほど、それであの殺気と言う訳か」
「この期に及んで雑談なんて、随分な余裕ですね」
突然割って入った声に危機を感じ取り、俺は妖夢の手を引いて急上昇した。直後、さっきまで俺たちがいた場所を”刃”が通り過ぎた。”刃”としたのは刃物が反射した月明かりしか視認出来なかったためである。
「妖夢!散開だ!視覚は当てにならない!気配でかわして反撃するんだ!」
「わかった!」
とは言うものの純粋な敵意、いや害意はしっかりと察知出来るが気配となると話は違った。椛は高速で動き続けており、それでいて気配を殺している。攻撃を仕掛けてくる一瞬のみが反撃の好機だろう。
俺は直線でしかない銃弾では分が悪いと考え、初めて軍に入ったころから愛用しているコンバットナイフを手元に召喚し、両手にはメリケンサックを装着した。メリケンサックの突起部分には相手の行動を阻害する術式をスタンバイさせた。ゴーグルをかけ、その内部であるNVG(Night Vision Goggles。別名暗視ゴーグル)を半起動させる。
そうしている間に妖夢は椛の襲撃にあっているようだったがこれだけ高速で飛びまわっていると寧ろ参戦すれば妖夢の行動を妨げてしまう。
まだこっちに来るようすはないのでさらに準備をすすめる。
武装「ブースター」
完全武装「バトルセット」
不可視装甲と行動補助装置を装着。これで”人の身でありながら妖怪と同等の出力、耐久力”をそなえる。こうでもしないと箍が外れた妖怪と近接格闘なんて出来やしない。
一方妖夢。
「こ…の…っ!」
妖夢は苦戦していた。相手の太刀筋はおろか、姿すら視認できないのだから。しかしこうして張り合っているのはひとえに訓練の中で培った危機回避能力、要するに直感だけを頼りに相手の攻撃を防いでいるからだ。しかし後手後手になっており、戦況はあまり芳しくない。
「あぁもう!」
魂符「幽明の苦輪」
本来ならば「幽明求聞持聡明の法」を使いたかったがあまり消費する訳にもいかない。同期までに時間はかかるがそこは自分自身で時間を稼げばいい。
―結果としてその判断は間違いだった訳だが。
同期するにはどうしても多少なりともそちらに意識を割く必要がある。椛がそこを見逃す訳もなく高速移動の慣性と速度、パワー…全ての乗った一撃を振り下ろした。もちろん妖夢も反応したが本来ならばどう考えてもかわすべき一撃を受け止めてしまった。そうして妖夢が上空高くから地面へと眼にもとまらぬ速さで墜落していった。
――to be Continued...




