第四十三章 傭兵とやり過ぎな戦い
気がついたら風神録に…
「今回はシュウ、”あなたの戦い方”を取材させて貰いますよ。」
文はそう告げるとシュウへと突撃してきた。
「疾走風靡」
文は風をまとって詰めてくる。シュウはそれを動き回ってかわすものの同時に文が放つ風圧弾に動きを阻害され、何度か捕まりそうになる。そして文はなかなか捕まらないシュウから一旦距離を取って再び宣言した。
風符「天狗報即日限」
宣言直後文の姿がかき消える。―いや、視認できなくなる。そして全方向から迫る弾幕をかわしながら嘆息する。
「………ふぅ」
「どうしました?全く手も足も出ません?それはそれで取材にならないんですが」
「こんな風に見せつけられると…
―その自信、とことんへし折ってみたくなる」
「…やはりとんだ戦闘狂ですね」
「やはり、とは心外だな」
「以外でも何でもありませんよ。以前から彼女の事になると見境なくなる傾向にありましたし。戦闘狂の素質は充分かと」
「そんな素質はいらん」
「で?どうやって私の自信をへし折るつもりです?」
「もちろんこうやってだ」
シュウはそう言うとおもむろにスペルカードを宣言した。
武装「ブースター」
シュウの両手足にブレスレットの様な機械が装着される。…と言っても見た目はただの金属の装甲の様なのだが、これはチカラの伝達効率を向上させる端末。つまりは出力が上がるも同然と言う事。
「何か装備したようですが、認識出来なければ意味がないのでは?」
「問題ないさ」
シュウは端末にチカラを流して、爆発させた。
「あややっ!?」
その爆発は純粋なチカラの暴風。いかに風を操ろうとも防げない。文はそのチカラに圧力によって上空に打ち上げられた。
そして無防備になったその体躯に追い打ちをかける。
砲弾「タンク・キャノン」<三連装>
1800mm滑空砲が文に向かって炸裂する。ぎりぎりで態勢を整えた文はそれを紙一重でかわす。二発目もかわしたが、その直ぐ背後で爆発が起こる。文はまたしても、今度は前方へと吹き飛ばされる。すると三発目をもろに食らってしまいさらに打ち上げられる文。
そこにさらに攻撃を加えるシュウ。
疾風「テンペスト」
文の周りに暴風が立ち込める。それには雨も含まれており、文の体を濡らす。
「…っく…。私相手に風の攻撃なんて、随分なめた真似をしますね…。風は、ただ起こすだけじゃないんですよ!」
竜巻「天孫降臨の道しるべ」
ふもとの河の水まで巻き込み、さらに肥大化する竜巻。その中には風圧弾が無数に混ざっており、その場に留まる事すら困難になる。しかし、これはかえってシュウに有利に働いた。シュウは風と同じ速度で文の周りを旋回しながら竜巻中の水分を<水素>と<酸素>に分解した。そしてシュウはスキマで風力圏から離脱して新たにスペルカードを発動した。
雷符「ヴィジテイションサンダー」
ここで皆さんには中学の化学を思い出してもらいたい。水素を酸素を混ぜた気体に点火するととどうなっただろうか。一気に爆発し、水が精製されたはずだ。それもごく少量ながら大きな爆発音を伴って。何が言いたいかと言うと、試験管程度であの爆発なのだから台風並みの水分量で行ったら…。想像を絶する爆発になる事がおわかりだろうか?つまりはそういうことである。
--ドオオォォォォォォォォォオオオン…--
上空高くで起こった大爆発は幻想郷を揺るがした。中心にいた文は流石は妖怪と言うべきか黒こげで済んでいた。…と言うかそれでも壊れていないカメラは実は凄いんじゃなかろうか?俺はあらかじめ避難させておいた妖夢と合流した。
「ねぇ、シュウ」
「ん?」
「さっきから、ちょっとやりすぎてない?」
「そう、だな…」
「今度は見つからないように行こうか…」
「あぁ」
さっきの爆発で出来た水が降り注ぐなか二人でこっそりと頂上を目指すことにした。
やりすぎた…