第三十七章 傭兵と能力会議
傭兵と八雲、
完結編、
登場!
居間には我が主、まんじゅうを食べる幽々子さんと読書をしているパチュリー、遊んでいるリリー、とリリーに振り回されている(物理的な意味で)紫棒がいた。シュウが入ってくるとパチュリーが顔をあげた。
「そこの棒から聞いたわよ、倒れたんだって?」
「あぁ、ちょっと原因は分からないんだが、チカラが空っぽだったらしい」
「…そう。あと、なにやらまた新しい事を覚えたそうね」
「育成ゲームじゃないんだからその言い方なんとかならないのか?」
「シュウが私のスキマに魔法回路が見えるとか言ってたわ…―~~っ!」
紫棒はリリーによって振り回されている。その所為か発言の途中でまたしても遠心力やら急動静に耐える作業に戻ってしまった。
「見えるの?シュウ」
「あぁ。その通りに組んで力を流したらスキマを作ることもできたな」
「もしかしたら、能力が進化する可能性を示唆しているのかもしれないわね…」
「作ってみるか?」
俺がスキマを開こうとしたら永琳が俺の腕を掴んで制止してきた。
「おそらくそのスキマを開く行為には莫大なチカラが必要で、その所為で枯渇したのかもしれないわ」
「枯渇って…」
「燃料切れってことだぜ」
「それは知ってるが」
なんてこった…。せっかくスキマの回路を覚えたってのに…。
「それに先ほどは私の処方した薬の成分を当ててきました」
「…となるとやはり構成になるのかしら」
「ですよねぇ」
「なぁ、パチュリー。やっぱり私の言った通りだったろ?」
「随分前の話を蒸し返すのね。…まぁ、結果的には魔理沙の一言が無かったらこの可能性にすら気が付けなかったんでしょうけど」
「だろ?」
「つまり?」
「私たちはシュウの能力を甘く見ていた、と言うことよ」
「私は今までの彼を知りませんが」
…なんだろう。俺の能力に関する話のハズなのに、凄く置いてけぼりな気がしてならない…。魔理沙は得意げでパチュリーと永琳は思案顔、妖夢までも神妙に頷いたりしてるんだが…。どんな話?
「なぁ、妖夢。話の展開どうなってるんだ…?」
「ん?さぁ?」
「え?今頷いてなかった?」
「いや、さっきから蚊が飛んでて…。気になるんだよね…」
「……。話聞いてなかったのか…?」
「シュウも聞いてなかったんじゃないの?」
「聞いてたけど理解が追いつかなかったんだよ」
「…シュウの事でしょ?」
「そうなんだけどな」
…結局分からずじまいか。
「シュウ、聞いてるのか?」
「ん?」
「ったく…。自分のことなんだから少しくらい関心持ってほしいぜ」
「途中から話についていけなくなってな…」
そういうと今まで議論していた三人はほぼ同時に嘆息した。
「シュウの事なんだからシュウが一番分かってるはずなんだけど?」
「主観からじゃ分からない事もあると思うが…?」
「話がずれてるぜ」
「あぁそうだな。…で?話し合いの結果どういう結論になったんだ?」
「一応の結論は『シュウの能力は成長している。または全容を明らかにしておらず、少しずつ発現が起こっている』『現時点での能力はすべての構成を司る程度の能力』ってところかしら」
「…構成?」
「つまり物質化も魔力回路を分子に変換して構築されていると考えられる上に、魔力を体内に持たないのに魔法を使っているのはチカラを魔力と同じ性質を持つように構成しているから」
「あー…、要するに仕組みを弄ってると。全部において」
「それでも語弊はないと思うわ」
「それでいい。これから成長する可能性は?」
「なにも分からないぜ」
「…。まだまだ伸び代はあると」
「それはあんまりあって欲しくないぜ」
「ははは…」
斜陽に照らされながら笑うシュウ。魔理沙はその奥底に未だに底知れぬ感覚を覚えた…。
「シュウー。おなか減った~」
そう言いながらリリーが入ってきた。その手には紫棒(あちこちが折れ曲がっており、両端が欠けている上に、全体的に砂ですすけている)が握られていた。
「あ、紫のこと忘れてた…」
「私の心を折るつもりだったら随分な成功を収めたわよ、シュウ。妖精にこんなに玩ばれるなんて、屈辱にもほどがあるわ」
「いや、そう言うつもりじゃなくてただ単に忘れてた…。なんかスマン」
「いいわよ、私なんてスキマが使えなくなったらただの非力な少女ですものね」
「(少…女…???)…。いまはずすな、それ。帰っていいぞ。あと、マジでスマン」
「えぇ、一旦帰るわ…」
そう言って紫は帰って行った。
ちなみに翌日の文々。新聞の見出しは「屈強なものたちの巣窟と化した白玉楼!スキマ妖怪、春告精に玩具にされる!?」となっており、紫棒をもって氷の剣を携えたチルノと対峙するリリーの写真が大きく張り出されていたのだった…。
いつも通り幕間書いたけどそれしかストックが残ってない…