第三十五章 傭兵と回路
…主人公は新たなステップへ…
俺が白玉楼に帰ると妖夢が出迎えてくれた。
「ただいまー」
「お帰り、シュウ。ねぇ、それって…。」
「所謂スキマ?ポケット版」
「勝手にポケット版にしないで」
「しゃべった!?」
そう言えば妖夢の位置からだと紫の顔が見えないのか。
俺は妖夢にも見えるように紫の顔を向けてやった。
「って、紫さんじゃないですか!?」
「紫がどうしたの?」
妖夢の声を聞いてか幽々子さんも登場。
「あ、幽々子じゃない。なんとか言ってやって頂戴」
「随分と面白いことしてるわね」
「そうじゃなくて、注意してやって、っていう意味で言ったんだけど」
「楽しそうでいいじゃない」
「なんでもない。幽々子にたのんだ私が愚かだった」
「ねぇ、シュウ。これ少し借りていいかしら?」
「え?どうぞどうぞ」
これ、とは紫棒のことである。予想外の申し入れだったが断る理由もないので渡そうとして持ち上げたら…。
―ぽきっ―
「「「え?」」」
「ふぎゃ!」
紫棒は俺の手元でぽっきりと折れて、紫がいる先端側は地面に落っこちた。…紫の顔から。
「案外スキマって脆いんだな…」
「あんだけ思いっきりあちこちぶつけたら壊れるに決まってるでしょ!?」
そこで俺は初めて気が付いた。
―スキマに回路が組まれている…?―
「なぁ」
「なにかしら」
「スキマって魔法なのか?」
「…なに言ってるの?これは能力よ、魔法なんかでこんな芸当は出来ないわ」
「だよなぁ」
「どうしたの?シュウ」
「いや、このスキマの折れた断面から魔法回路が見えるんだ」
「そう?マーブル模様の紫色にしか見えないけど」
「ちょっと試してみるか」
俺はそのスキマの回路通りに魔法回路をくみ上げる。そして力を流すと―。
「スキマが出てきた!?」
「シュウ、なんで貴方にスキマが…?それは『私の』能力のであって貴方のではないはずだけど」
「いや、だからこのスキマに回路が…」
「あり得ないわ。これは能力であって感覚的なもの。回路に分析できるデジタルではなくアナログなもののはずだけど」
「いや、だって現に再現できたんだ…が…?」
おかしい、何か違和感が…。急に力が入らなくなって…。
「シュウ!?」
俺は床に崩れ落ちていた―。
果たしてシュウの身になにがあったのか!?乞うご期待!