第三十一章 傭兵と猫叉と
定期テスト真っ最中!
(なにやってるんだ…)
シュウは藍と別れてから里に辿りついた。
里は相変わらず平和は印象を受ける。というか実際に平和なんだがいかにも、と言う意味でだ。
ちょうど昼下がりのためか授業を終えた子供たちが遊んでいたり、主婦のみなさんが井戸端会議を(本当に井戸の脇で)やっていたり、店番の青年が居眠りをしていたりする。…寝るなよ、門番じゃあるまいし。
俺はその青年をおこすついでに磯部餅を買って、かじりながら寺子屋に向かう。
しばらくすると懐かしい建物が見えてきた。改めて見ると結構小さいな。この中に数十人の子供が詰めて勉強をしてるって凄くないか?
とにかくこうして目の前で立ち止まっていても仕方ないので入ることにした。
まずは慧音のもとに向かおうとして職員室目指していると教室からこえが聞こえた。どうやら中に居るようだ。中を覗いてみるとだいたい大学生ぐらいの青年と慧音が教壇を挟んで話していた。
「先生、どうしてダメなんですか…」
「やはり、人と妖では寿命が違いすぎるからな」
「それでも俺は―」
「残される身にもなって考えたか?私だったら無責任な事は言えない」
「それって、気持ち的には問題ないって事ですか…?」
「それは…」
お?これはいい雰囲気なんじゃないか…?ここで登場する訳にも行くまい。俺は校庭に向かうことにした。
俺が校庭に行くと数人の子供と妖精+妖怪が一緒になって遊んでいた。里の子供の中でも上級生で最近少し弾幕を覚えた生徒が五人とチルノ、大妖精、リグル、ミスティア、あとは見覚えのない猫叉の妖怪の五人が五対五でサッカーをしている。楽しそうに遊んでいるところを止めてしまっても悪いので用具庫に向かい、中のボール籠に精製したボールを補充していく。よく見るとバットが一つ折れていた。このぷにぷになボールで折れるとは思えないのできっとどこかにぶつけたんだろう。そのバットも一旦力に還元してから再度精製しておく。
そこでシュウは外が静かになっていることに気が付いた。どうしたんだろうか?なんだか何かに警戒していて、攻撃する前のような静けさだが…?
不思議に思いながら外に出ると―。
「撃て―!!!!」
大量の弾幕が迫ってきていた。
「へ?」
俺は一瞬硬直したが、視界を埋め尽くす弾幕を避けようとして、用具庫の存在を想い出して物質化することにした。
被膜「マテリアル・フィルム」
するとそれらの弾幕はこの程度の幕すら貫通することなく落ちていった。一体なんだ?
「…?シュウじゃないの?あの人」
「大ちゃん!あいつがこんなところにいるわけないでしょ!」
「うーん。僕はその人にはあまり関わりはないしねぇ。あの一瞬じゃあ分からなかったけど、大ちゃんがいうならその人なんじゃない?」
「なによ!リグルまでうたがうの!?」
「「だって、ねぇ」」
「ちょっと、そんなこと言ってる暇はないよ…。あの人傷一つ無いみたいだし…。あんなに強いんじゃ、勝ち目が…」
「大丈夫だって、橙。きっと、知り合いだから」
…。どうやら勘違いだったみたいだが、これで里の人間だったらどうするつもりだったんだろうか?子供たちなんかは俺の戦いを何回か見てるから、怒らせたらマズイと思ったか直ぐに謝りに来たので不問にすることにした。…と言うかこのメンツなら怒っても無駄そうだけどな。
「で?いきなり攻撃してきた訳は?」
「私が、強いチカラを感じて。もしかしたら危険なんじゃないかと思って…。この人数ならやれるかなって思ったから…」
猫叉の少女が耳を垂らしながら申し訳なさそうに弁解してくれたが。…こいつはそうはいかないようで。
「またあったわね!リベンジよリベンジ!!」
「やめときなよ、チルノちゃん…」
「一瞬で負けるのが目に見えてる気がするけどね」
「そうねー」
ちょっと、久しぶりに遊んでやろうかね。
「そいじゃあ、みんなかかってきな。まとめて相手してやんよ」
「そうこなくっちゃ!」
「ぼ、僕たちも!?」
「もちろん。あ、そうだ。寺子屋のみんなは参加するなよ?命は一つだ」
「どどどどどうしよう。シュウさん本気だよぉ。や、やっぱりみんな止めよう?」
大妖精が慌てているが俺たちは裏手の丘で弾幕をすることにした。里のみんなは観戦したいとのことなので、マテリアルフィルムで保護しての観戦となった。
かくして俺は久しぶりの弾幕ごっことなったのだ。
と言うことで次回は戦闘です←