第二十一章 傭兵と…堪忍袋の切れ端
続き!
前回のあらすじ
異変解決のため白玉楼に乗り込んだ霊夢と咲夜と魔理沙は迎撃にきた妖夢と戦闘を行う。
妖夢の決死の一手により霊夢が浅くはない傷を抱えるも魔理沙のマスタースパークが妖夢を襲う。
そして妖夢の危機を救ったのはシュウだった…。
咲夜はシュウと霊夢の延長線上にさえぎるように立って話を始めた。その後ろでは魔理沙が霊夢に何らかの薬を渡していた。おそらく魔法の森特製ポーションってところか。
「シュウ…どうして貴方がここに…?」
「それを知ってどうする」
「それによって対応が変わるわ」
「俺の対応は変わらない」
「どうしても私たちを止めると?」
「止めはしないさ。ただ、今は人生最高に戦いたい気分だってだけだ」
「あなた、戦闘狂?」
「いやなに、報復に燃えるしがない元傭兵さ」
「報復、ね…」
妖夢はシュウの様子に気圧されていたが直に平静を取り戻した様だ。
「シュウ、私は大した傷じゃないからそんな大げさな…。第一、幽々子様から通す様に伝言を預かってきたのはシュウじゃない」
「だから止める訳じゃない。それにこれは俺の踏ん切りの問題だ」
「勝ち目が無いのにかかってくるわけ?」
「男は感情に流されやすい、所謂馬鹿なんでね」
「ホント、馬鹿ねぇ。シュウも」
気がつくと霊夢が復活していた。魔理沙のポーションは随分即効性の様だ。
「まぁ、馬鹿な奴も悪くわないぜ」
魔理沙も出揃う。
「俺は一発デカいのブチ込んだら退却するさ。超度級の一発をな」
「そんなの教えていいの?」
「それに私は紅い霧のとき最初から全部お前の戦い方を見てるんだぜ?精々目新しいのを頼むぜ」
「さっさと終わらせるわよ」
「ソイツは俺も同感だがな。…妖夢。今のうちに白玉楼に戻ってくれ。幽々子さんに粗方の事は言ってある」
「無茶はしないで…」
「分かってる」
妖夢は白玉楼に向かっていった。
「貴方一人でなんとかなるとでも?」
「おいおい。下から出てくるあれはこの高さじゃ、流石にかわせるぜ?」
「駄弁りはこれくらいだ。いくぞ」 シュウは両手にチカラを溜めてスペルカード片手に口火を切った―。
右手に溜めたチカラを前方に放出する。そしてそのチカラは銃弾を形作り、前方に飛来する。
三人は難なくかわす。
「おいおい、しっかりしろよ、シュウ」
「こんな過疎弾幕張ってどうするのかしら?博麗の巫女の事なめてるの?」
「これが彼の本気?」
「いや、あの時の方が何倍も強い弾幕だったぜ」
「それじゃあこれは一体…?」
四人は淡々と弾幕をぶつけ合っている。
シュウは顔色一つ変えずに戦闘を続ける。これは「仕事」中のサインだ。つまりは傭兵だった頃のように…。そして戦闘を続けること二十分。不意にシュウは今まで持ったままぶらぶらさせていたスペルカードを掲げる。
「宣言だ」
低く響く声で告げる。
散符「キャニスターショット」
これはさほど難しいスペルではない。縦横10発ずつ並べた弾の壁を無数に飛ばすものだ。大きく動けばかわせる。しかし今回のは様子が違った。壁が大きいのだ。縦横50は並んでいる上に二つずつなのだ。
その壁が射出され、三人は危なげなくかわす。しかし壁が通り過ぎると三人の視界からはシュウが消えていた。
壁の一つに隠れて反対まで抜けたのだ。
そして反対から同じ様に壁を放つ。
「なぁ、なんかおかしくないか?」
「そうね、なにか大技を仕掛けてくるかと思ったんだけど―」
「そうじゃない。シュウの弾幕なのに―」
「物質じゃない」
「ご名答だ、咲夜」
「たしかに、シュウらしくないわね。シュウなら相手の弾幕を固めて利用するような戦い方をするはずだけど」
「でもあの目、本気だぜ」
「それに流れ弾が何かにぶつかる前に消えてるのも気になるわ」
「こんなに周りに魔力が充ちてたら私の魔法の威力が増すだけだってのにな」
三人は気がついていないが、シュウの弾幕によって三人は少しずつ中央に寄せられていた。
そして三人が触れ合うぐらいに近づいた時、シュウは次のスペルを発動した。
「ハ、ハハッ…この時を待っていた!スペルカード!」
罪人「黒鉄の牢屋」
宣言と同時に「今までの戦闘によって充満していたチカラ」が三人のもとに集まり漆黒の輝きを放つ大理石の様な檻が現れた。縦横三メートル程の立方体である。そしてその檻の中には無数の機関銃、ガトリング、対物ライフルと言った重火器が中心に向けられている。かなりの大技な為か、シュウの息が上がっている。
「まずい!」
「何とかして突破するわよ!」
「檻の隙間も透明な何かに阻まれてるぜ!」
「こうなったら、夢想封印で…ッ!」
「無駄よ!物質化が付与されてる!」
「じゃあどうしろってんだ!」
焦りからか平静を失いつつある三人。それは以前に銃の威力をシュウに見せつけられていたからであり、シュウの本気の目が歯止めを失っていると判断したからである。
「終わりにしようぜ!?なぁ!三人…と、も…。お…?」
しかし力の限界だったのか、不意にシュウから力が抜けた。そして意識を失った様に落下し、階段の踊場脇の芝生に墜落した―。
「うぅ…。ん…あ…?」
シュウが目覚めた時には自室に寝かされていた。
「シュウ!」
「うぉっ!?」
そうして目覚めたシュウに飛びついてきた人影が。妖夢だ。彼女は泣いているようだった。
「無茶しないでって言ったのに!…ホントに……。…ばかぁっ!」
「う、悪ぃ…」
「シュウは、人間なんだから…。あのくらいの高さでも、落ちたら死んじゃうんだよ?…そんなはいや…っ!」
妖夢はつっかえつっかえにまくし立てる。
「ホント、悪かったと思ってる。約束破って無茶したことも、心配かけたことも。だから、今回だけは許してくれないか?な?妖夢」
シュウは妖夢の背中をさすりながら優しく囁いた。
「罰として、しばらく寝かさないから」
「え、あ、おぅ。」
自分で言っといて紅くなる妖夢と、突然の展開に驚くシュウ。そこに闖入者が。
「妖夢〜。シュウの具合はどうかしら?」
「「「はいるわよ(ぜ)」」」
今回の首謀者、幽々子と異変解決に来た魔理沙、霊夢、咲夜の合計四人だ。
「え?ちょっ…」
ちなみに今は布団に寝かされているシュウと上に覆い被さる妖夢。と言う体制だ。この状態はいろいろとまずい。そう思った二人だが離れる前にふすまが開かれた。
「「………。」」
「あらあら、出直そうかしら?」
沈黙は妖夢とシュウの二人。それをみた幽々子は主の痛い気遣いによってふすまをしめて、「三人とも、お茶にしましょ」と言って去っていった。
そしてその場には気まずい二人と、ふすまの間から覗き見する魔理沙とリリーだけが残された…。
という訳で妖々夢完結(?)です。
でわでわ。




