第十六章 傭兵と食材
リリーは白玉楼に到着したが…
リリーをお持ち帰りしたシュウは白玉楼まで帰ってきていた。
「ただいま~」
「あら、どうしたの?随分早いのね、シュウ」
「あぁ、こんなものを拾ったんだが」
そう言ってリリーを幽々子に渡してみる。
「おいしいかしら?」
「どうだろうな?妖精だしな」
「で?どうしようかしら?この子」
ちなみにこの時リリーは涙目どころか号泣寸前である。おそらく「どうしようかしら」と聞こえていたのだろう。
「とりあえず妖夢にも相談しますか」
「そうね、じゃあシュウはその子の事見ててもらえるかしら?」
「了解」
自室にリリーを招きいれた。するとリリーは少しほっとしたのか号泣はしなかった、が。目が絶望に染まっている。食べる訳がないのに。
「シュウさん」
「ん?」
「食べるために捕まえたんですか?」
「いや、あれは所謂冗談でだな。マジで食べる訳じゃないぞ?」
「ホント、ですか?」
瞳に少し希望の光が宿る。なんか面白いな、この子。もう少しからかってみるか。
「たぶん、ね」
「た、た、たたたたたぶんって、な、なんですか!?やっぱり食べるんですか!?」
「妖精はあんまり美味しそうじゃないし、俺に至っては人間だし。しかも外来の」
「へ?外の世界から来たんですか?」
「ん?まぁ」
「どれくらい前ですか?」
「もうすぐ二年になるかな」
「それしか経ってないのにそんなに強いんですか!?」
「俺なんて一人じゃ未だに大した相手と戦ってないんだよ。サポートだったり、相手がボロボロだったり、模擬戦だから手加減されてたりしてね」
「そうなんですか?」
「だからまだまだ半人前だな、俺は」
そんな風に話していると外から妖夢の声がした。
『妖夢、早くシュウのところにいきなさい』
『一体どうしたんですか?』
『早くしないと「食材」が逃げるわ』
『鶏でも捕まえたんですか?にしてもシュウのところにいるってのが分かりませんが…』
「妖夢が帰ってきたみたいだな」
「そうなん…で…すか…?」
再びがくがくと怯え出すリリー。だから妖精は食べられないってば。
そして開かれる扉。ビクゥッ!!と肩を震わすリリー。妖夢と幽々子が部屋に入ってきたのだ。
「幽々子様、どこにあるんですか?と言うかこの子はだれです?随分春度が高いようですけど」
「だからその子が食材よ」
「妖精はたべられません!!」
「えぇー、妖夢はどんな味がするのか気にならないの?」
「なりませんけど…。と言うかどこで捕まえたんですか?」
「あぁ、それは俺が。リリーが襲われているところを救助してそのまま連れてきた。これだけの春度が出てくるんだ、冥界にいてくれれば随分楽だろう?」
「なるほど、そういうことね」
ん?妖夢、ちょっと不機嫌?と言うか一瞬拗ねた感じの表情をしたきがしたんだが。
「ねぇ、妖夢。ホントに食べないの?(じゅるり)」
「食べません(即答)」
「あ、あの。私はこの後どうなるんですか…?」
「幽々子様、ここに住まわせてもいいですか?」
「春度のためでしょう?全く問題ないわ(じゅるり)」
「そういう真面目な発言は涎を拭いてからにしてください」
妖夢がそっとタオルを渡した、が。それを噛んでもぐもぐしている。あぁ、そんな風に顎を動かしたらさらに涎が…。
「幽々子様、とりあえずお昼にしましょうか。シュウ」
「わかってる。手伝い、だろ?」
「うん」
妖夢と二人で台所に向かう。ふと後ろを向くと、リリーににじり寄る幽々子の姿があった。
哀れリリー。合掌。
…なぜだろう。幽々子≒食欲ってイメージが…