第十章 傭兵と『近接弾幕』
どうも皆さん。例のあの門番がやってきますぜ。
かくして俺たちは紅魔館に辿りついた。壁は目にしみる紅で、外壁も屋根もすべてが紅くなっている。
そして門に降り立つ俺たち。そして――。
門に倒れ伏す女性を見つけた…。
「…中国。霊夢にやられたのか…」
「みたいだな」
美鈴の体には無数の針やら札やらが刺さっており、周囲の土は抉れていた。
「じゃあ入ろうぜ」
「おい放置しといていいのか?」
「別に良いんだぜ。これから殴りこみかける屋敷の門番を起こして戦う道理はないぜ」
「確かに、この状態からさらに叩くってのは…」
「ここは、通しませんよ。今日だけは、ね」
気がつくと美鈴は立ち上がり、構えをとっていた。
「お二人とも、練習なら明日でもいいんでは?」
「今回は異変解決にきたぜ」
「尚更通せませんよ、門番ですからね。二人同時に来たらどうです?」
「その必要はないぜ。シュウが単独撃破してくれるからな」
「ひとまかせかよ」
「じゃあ私は先にいくぜ」
そう言うと魔理沙は門の横手に移動し―。
「壁なんかじゃ私の力は止められないぜ…。
恋符「マスタースパーク」!!!」
壁にマスパをぶち込み開いた穴から入って行った魔理沙。
「しかたない。シュウ、行くぞッ!」
「口調が変わったのは仕様か?―っと」
美鈴は軽口を叩いている俺に一瞬で肉薄するとまっすぐに突きを放ってきた。よく見ると彼女を周りからは妖気が…否、純粋な”気”が立ち上っている。…。ちょっと真似してみるか。
俺は妖力を身にまとい体中に充満させた。するとなんだか体が軽くなった気がした。
(これが美鈴の機動力の一端をになっていたのか…)
「シュウ、気なんか練ってどうするつもり?まさか近接格闘で勝負する気じゃないだろうね?」
「近接、か。ははっ良いじゃないか。『近接弾幕』といこうか」
こうして新たな形の弾幕勝負が幕をあけた―。
先手をとったのはシュウ。接近し、膝に向けた蹴りを放つ。美鈴は余裕を持ってシュウの足を絡めようと足で応じようとして、空を切った。シュウは蹴りの途中で後ろに飛んだのだ。そして下がり際、足から弾幕を飛ばす。
しかしこの程度でどうにかなる美鈴ではない。美鈴は状態をそらしてかわし、シュウにむけて弾幕を放つ。シュウはそれに弾幕をぶつけて「落とす」。
直後、シュウの目の前に美鈴が肉薄し、その勢いでひざ蹴りをする。シュウはそれを両手で防ぐ。
(っ!?重いっ!)
予想以上の衝撃にシュウが固まる。そこに美鈴の猛攻が加わる。
右フック、左ローキック、正面からの突き、顔面に向けたストレート、腹部へのひざ蹴り―。
次から次へと打撃を繰り出す美鈴。シュウはそれを捌き、いなすので精一杯だった。しかしその状態は長くは続かず、シュウはハイキックをかわせず思わず防いだ、が。衝撃は押し殺せるはずもなく横にたたらを踏んだ。その時美鈴はすばやくカードを取り出し、スペカを発動した。
(この距離でか!?かわせる訳がな…)
気符「地龍天龍脚」
美鈴が大地を踏み込む。すると衝撃が地面を伝わりシュウの体をはね上げる。少し距離が開いた。そして追い打ちをかけるように美鈴渾身の飛び蹴りが放たれる。
(ここしかない!)
シュウは後ろに吹き飛びながらもスペカを発動する。
砲弾「タンク・キャノン」
シュウが前方に突きだした手のひらに、直径1800mmの”砲弾”が出現する。
(喰らえ、渾身の!)
そして美鈴に向けて放たれる。
(1800mm滑空砲!!!)
「うらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「てえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
弾と飛び蹴りがぶつかって大爆発を起こした。お互いに吹き飛ばされて、シュウは意識を失った。
気がつくと門のあたりは地面が窪んでおり、煙が立ち上っていた。どうやら気絶していたのは一瞬の事のようだった。美鈴は門を突き破って、玄関の中まで飛んで行っていた。
「あちこち痛ぇや…。早いとこ魔理沙に追いつかないとな」
シュウは紅魔館の中へと飛び立った。
「全く、シュウも無茶なことしますね。お嬢様にはかないっこないでしょうに」
その場には苦笑する美鈴だけが残されていた。
と言う訳で辛くも勝利したシュウです。
というか今回の紅魔編はシュウの成長をみせる意味合いもあるのですが、この美鈴は最初からボロボロと言うねwww
…じゃないといくら強くなったって勝てる訳がないじゃないか。妖怪に。