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王妃の結末



 砲弾が放たれて数分後。



 粉塵が上がっている。辺りは煙に包まれて何も見えない。

 僕がクリスの無事を確認していると、遠くでムラサメの声がした。


「頭領?…嘘だ、頭領…ーっユリア!!」

 ユリアが僕たちを弾き飛ばして庇ってくれたのか。ユリアは、ユリアは無事なのか。

「ユリア!!」

 僕とクリスはユリアの元へ駆け寄った。



 ユリアは息も絶え絶えに話す。

「ムラサメ、私の最期の願いを聞け。…今から、頭領はお前だ、これからも船を…私たちの、国を頼むぞ…。」

「国なんか知らん!俺はお前だから付いてきたんだ!皆だって同じだ!!」

 ムラサメがユリアの肩をきつく抱きしめる。

 ユリアはいつもと同じ慈愛に満ちた微笑を浮かべた。

「クリス、ミラノ。ごめんな。こんな世界をお前たちに託すこと、すまないと思ってる。けどな…それでも次代を担うのは、お前たちなんだ。…私たち大人はお前たちに自分の生き様を見せる以外、何もできない。…何もしてやれないんだ…。」


 僕はユリアの傷口から流れる血が怖かった。血の止まらない傷口が怖かった。このままじゃユリアが死んでしまうんじゃないかと怖くて堪らなかった。

「ユリア、もう喋らないで! 傷口がーっ…」

「クリス、お前の取り巻く世界を否定するな。ミラノ、決してクリスの命を諦めなかったお前の、治めるあの国を見たかった。…大丈夫、お前たちならきっと大丈夫だ…。」


 ムラサメがユリアをきつく抱きしめた。

「ユリア。俺の、生涯をかけて守りたかった…。」

 ムラサメが砲撃してきた船に宣戦布告する。

「海の王者・無敵艦隊を敵に回して楽に死ねると思うなよ。」

 僕はムラサメを御した。


「何故止める?!」

 ムラサメが僕の胸座を掴む。

 僕は砲撃してきた船の旗に見覚えがあった。あれは確か…。

「王妃の船だ。だったらご指名は僕だよ。クリスを頼む。」

 僕はクリスをムラサメに預けて、王妃の船に飛び乗った。



「航海には連れて行かないって言ったハズだけど?」

 僕の言葉を聞いた王妃は舌打ちした。

「これは航海などではございませんわ。わたくし、皆様を殲滅せんめつしに参りましたの。亡霊退治の事故に見せかけてね。」

 王妃の目は本気だった。

「ねぇミラノ様、貴方を見てると苛々しますわ。…私を好きになって。それができないなら死んで。私を映さない貴方の心なんか要らない。この世に存在することさえも許さない!…物言わぬ死体になった時、もう一度貴方を愛してあげる!!」


 僕の剣は彼女の心臓を貫いた

 僕はその時、彼女を初めて正面から見た。

 彼女もまた、脆い、少女だったんだ…。それでも…。


「僕はお前を忘れない。一生憎んで忘れない。」


 僕の言葉に王妃は幸せそうな顔をして泣いた。

「ようやく、私を見てくれた。…胸が、痛いわ…そう、これが…恋なのね…。」

 

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