クリスの懺悔、ミラノの説得
僕はまたユリアの海賊船に乗っていた。
陸より船に居るほうが長いなんて、何だか本物の海賊みたいだ。
ユリアの話だと、王室教会で発見されたクリスそっくりの物は、ムラサメが作った人形だった。
ある島で暴れているクリスの情報を得たユリアが、クリスを処刑させない為に考え付いた苦肉の策だったらしい。僕は先刻それを知らされ、クリスの暴れているという島に向かっている。
「見えました、頭領!!」
ムラサメが展望鏡を覗き、合図する。
もうすぐクリスの要る島に着く。
「最初に言っておく。」
ユリアは厳しい顔をして僕に話を切り出した。
「もしクリスがもう元に戻れぬ化け物となって人を殺し続けるなら、その時は私が射殺する。」
僕は背中に刃物を突き立てられたかのような感覚に陥った。
-射殺?
「だからミラノ、お前は全力でクリスを説得しろ。」
「……分かった!」
獣や人間の骨があちこちに散乱していた。血の臭いが辺りを包んでいる。背後に殺気を感じ、僕は咄嗟に振り向いた。
「オ前ェモ、殺スゥ。」
真っ赤な髪、真っ赤な…涙?
「泣いてるの、クリス?」
「煩ィ、死ネ。」
様子を見ていたユリアが二丁の拳銃を構える。
「待ってユリア!」
「仕方あるまい。悪魔に堕ち罪を重ねさせるくらいなら、せめて人間として、私の仲間として死なせてやるべきだ。」
クリスが僕を、獣から剥ぎ取った爪のような剣で刺してくる。僕はそれをぎりぎりで避けながらユリアに叫ぶ。
「理屈なんて知らない。人間だろうが、悪魔だろうが、関係ないよ。クリスは僕の隣で生きるんだ!これから先も生きるんだ!!」
「諦めろ、ミラノ。それは私たちの知っているクリスじゃない!!」
クリスの剣が僕の右肩を、ユリアの銃が僕の左腿を貫く。
激痛、焼けるような痛みだった。僕はそれでも腹の底から叫んだ。
「断る!!」
眼の前ではクリスが泣いている。やめてくれ、泣かせるために助けたんじゃない。泣き止んでくれ。
彼女は震えた声で僕に尋ねる。否、世界に問う。
「私は…存在、して…いいの?」
僕はクリスの涙を指で拭った。
「居てくれなきゃ、困るよ…。」
遠くで高い声がした。まるで悪魔のような声だった。
「撃ちなさい。」




