クリス惨殺
「ねえ父さん。」
僕は父と食事をしながらこう言った。
「僕、結婚するならユリアがいい。」
父はケホケホとむせこんでいる。
「ユリアだって海賊なんかより、王妃のほうがずっと幸せになれるよ!」
白ワインをくいっと飲み込んで父が言う。
「ミラノ。その頼みは、お前の父としてでなく、一人の男として断る!」
「えー、なんで?」
僕の言葉に父はため息をつく。
「あれはなぁ、私やムラサメが焦がれて焦がれて、それでも手に入れられなかった女性だ。優柔不断なお前が、気安く触れられると思うなよ。」
その時、僕は初めて父の『男』の顔を見た気がした。
ばたんっ!!
物凄い勢いで食堂の扉が開かれた。
「食事中だぞ、騒々しい。」
僕の言葉に家臣の一人が頭を下げる。
「申し訳ございません!!ですが、緊急事態でございます!!」
僕と父は家臣に促されて教会へと走った。
そこで僕らが見たものは…。
真っ赤な血で染まった髪の毛。人形のような大きさの、見慣れたはずの顔は、血の気が引いて真っ青になっている。そして何より、胸の部分が大きな杭で打たれている。
「クリス? …クリス!クリス!!認めないぞ、こんな悪戯!!」
老紳父が、そっとそれに触れる。彼も泣いているのか。
僕と老神父以外の人間はあれは人形だったと思っている。
誰かの悪趣味な悪戯として、王室では処理された。
そして数日が経った。
僕は廃人のようになっていた。父が心配している。ユリアも。それは分かっている。けれど…。
今日もユリアが僕の様子を見に来てくれた。そしてそっと耳打ちする。
「クリスが大変な事になっている。」
ユリアは父と暫く話した後、僕を肩に抱きかかえて父に言う。
「王よ、お前の宝、私が暫く預かるぞ!」




