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戴冠式・王冠編

 

 僕が戴冠式に被る予定だった王冠は、何者かに粉々に砕かれてしまった。今回、王が僕に出した条件は3つ。1、王冠を壊した犯人を捕まえること。2、代わりの王冠を作り上げること3、犯人に僕自身を認めて貰うこと。そして父が今回も僕の保護者に選んだのは、海賊の女頭領・ユリア。僕は途方にくれてユリアの船の甲板から海を見ていた。

「頭領、あいつ誰ですか?」

やたら目つきの悪い背の低い男の子が僕を指差す。


「ああ、王冠を壊された王子様だよ。」


一瞬男の子の目に憎しみのような冷たい炎が宿る


「ミラノとかいうバカ王子ですか?」


(バカ王子?失敬な!)


「バカは余計だ、ムラサメ。王冠を壊した犯人を捜しにいくぞ。」

「あ、それなら俺です。」


 一同沈黙。


 僕はムラサメと呼ばれた少年に聞こえるように言った。

「金剛石よりも硬い石で作られた王冠を、君なんかが壊せるとは思えないんだけど。」

「バカはもの知らねーな。どんな造形物だろうと、必ずもろい部分があるんだよ!」

(こいつ、よりによってバカじゃなくて王子のほう取りやがった…。)


「やめろ、二人とも!!ムラサメ、なんだってそんな事をしたんだ?」

 ユリアの問いにムラサメがそっぽを向く。

「だって・・・ユリア様に馴れ馴れしいんすよコイツ!!」

「は?」

「ユリア様は俺たちの姐さんで!頭領で!肝っ玉母さんなのに!!」

 ユリアが拳を作ってムラサメをぶん殴る。

「ミラノはともかく王妃や現国王にバレたらお前は手打ちだったんだぞ?!」

 ムラサメは勢いよく壁に激突した。ユリアって本当に強かったんだ…。


「ムラサメ。」

 ユリアが冷たい声でいう。

「今すぐ新しい王冠を作れ。明朝、それを国王に献上する。」

「頭領!俺はこんな優男やさおとこをこくおうにするなんて嫌です!」

 ムラサメが首を横に振る。僕はムラサメの前に立ちはだかった。こういう時はどうすればいいんだろう。幸いムラサメは瀕死だ。力づくで頼めば聞いてくれるかも知れない。けど。


「ミラノ?!」


 僕は生まれて初めて土下座をした。

「あなたの力が必要なんだ!!僕は、今よりもっといっぱい頑張って、貴方がこれから作る王冠を被るに相応しい男になる!!だからどうか…。」

 

 チッ。

 ムラサメが舌打ちをした。

「悪かったよ、お前のこと知らない癖にあんなことして。」

 僕は顔を上げてムラサメを見た。ムラサメはばつが悪そうに、そっぽを向いた。






 翌朝。僕たちは王室にいた。

 ムラサメの作った王冠を王に見せていた。王はケースに厳重に入れられた王冠をまじまじと見つめ、賞賛の入り混じった深いため息をついた。

 ムラサメはあっさりとこう言った。

「王冠をぶっ壊したのは俺だ。」


 王は黙って聞いている。


 ユリアが頭を下げて口を開いた。

「ムラサメはかつてのお前の戦友だ。そして私の部下だ。とかいえ、この非礼を詫びるにはどんな言葉も足りぬ。ムラサメの失態は、当然私の責任だ。…手打ちにかけて気が済むのなら、それは当然私であるべきだ。頼む、若者から、お前のかつての友から未来を摘むような真似だけはしないでくれ。」


 王はユリアの嘆願を聞いて小さく笑った。


「子供の頃から、ムラサメが羨ましかったよ。仲間内では一番年下なのに、一番器用で。その奔放さにも憧れた。頼むから顔を上げてくれないか? 私を、惚れた女に土下座させるような、惨めなおとこにしないでくれ、ユリア。」


 ユリアが顔を上げる。安心感から目元が涙で少し滲んでいた。


 王はムラサメに向き直り、話しかける。

「友よ、お前の技術は素晴らしい。どうかこの国で、鉄鋼業のリーダーとしてその腕をふるってはくれないか?」

 王の問いにムラサメは深いため息をついた。

「お断りだ。俺のすべては今も昔も変わらねえ。頭領だけだ。でもって、お前と俺は友達だ。だから俺の力が必要なときは云え。俺たちはいつでも海にいる。」


 ムラサメの言葉に王は優しい顔をした。

「昔と変わらないな、お前は。」

 ムラサメも優しく笑って王に言葉を返す。

「それと、ミラノをあんまりうちの頭領に近づけないでくれ。昔のお前を見ているようで嫉妬しちまう。」




 その二人の会話を聞いた時、僕は自分がユリアに惹かれ始めていることに気付いた。

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