星への願いを叶える者
七月七日、七夕の日ですね。天の川にて分かたれた織姫と彦星が一年で一度会うことのできる日、というのはどなたでもご存じだと思います。
また、短冊に願い事を書いて飾ると願いが叶うというお話もありますね。
実際に願いが叶うの? と問われれば、叶う願いと叶わない願いが存在します。まぁこれも概ね、皆さんの想像通りでしょう。
ここで、そんな願いを叶える立場である私達、下っ端の天部のお話をしましょう。
……
「今年の七夕まで残り一日を切った訳だけど、今回はどういう方針で行きますか?」
「例年通りでよろしいかと」
私達は星宿の神々の下についてる云わば小間使いの天部で、毎年この七夕の時期になると天帝様の言いつけ通りに一年で一度会う事のできる牛宿と女宿、つまり織姫と彦星の準備の手伝いをします。
「これで何回目だったかしら? この一年に一回の作業」
「数えるだけ無駄かと思いますが」
実際に作業という物も簡素なものだ。自分たちの直属の上司である織姫と彦星の衣装の準備や、天の川を渡る為のカササギの呼び出し。
「あ、もうカササギの呼び出しは済ませましたか?」
「ええ、勿論」
「あの鳥達、この天上界に来ると時間感覚が狂うのだけは注意しなければいけませんね……」
天上界での行事の準備が済んだところで、本題の作業に入ることになります。
「私達にも部下が欲しいわよね~ほんとに」
そう言うのも無理は無い、この作業は私達だけでやらなければいけない。人間のエゴと、織姫様の投げやりによって生み出された作業。
「いくら私達みたいな神々や天部が人間がいなければどうにもならないとして、なんでその下等な願いをいちいち検閲しなければならないのかしら……」
「正直、大昔からの風習なので仕方無いことだと思いますが」
先程も会話していた通り、もう数えるのも馬鹿らしくなるほど長年この願いの検閲作業を行っています。
「昔ならよかったのよ! 何よ! 今の人口の増え方! 短冊に願いを書く人間も地球の裏側まで増えちゃったし!」
「こうしてみると人間も進歩したんですね~」
「この子、現実から目を逸らしてる……」
実際に、短冊に願いを書く発祥となった島国の人口は単純に一億を超えている。実際、その全員が書くわけではないが地球の裏までその風習が伝わっているので勿論検閲する数は億を超える。
「まー、仕方ないのでは? 悪いですけど神々は古い時代の人なの……」
「それ以上言ったら何処からか聞いていた奴に告げ口されて消されるわよ?」
実際に神々含め、私達も古い存在に変わりない。初期の頃から待遇は何一つ変わっていないし、作業内容も大きく変わることはなかった。
「……あの島国の連中が変な事始めるから……」
「それには激しく同意しておきます」
「まぁ、今更愚痴言ったところで何も変わりませんし、作業始めますか」
作業の一つ一つはやはり簡素だ。願いを見てそれが叶えるに相応しいかを見定める。
「えー……恋人ができますように? 具体性が無いわね、却下」
こうしてテキパキ処理しなければいけないものである。
「あれ、今日曇りじゃないの、この島国」
「ですね、雨が降れば中止になりますが……」
晴れてなければ、お二方が会えない、と言うわけではありませんが天気が悪いと会えない時があります。
「頼む! 雨降ってくれ!」
「これも誰かに聞かれたら消されてしまうのでは?」
「でもそうなったら私は楽だし……」
「しかし人間界の天気予報では晴れになるらしいです」
「くっ……仕方ない、やるしか……」
「……頑張りましょう」
このように、私達は人間界の皆様の願いを叶える作業をしております。もし、天の川を見る機会があったら私達のことも思い出してくださいね。
「やばい! 締め切りギリギリだ!」
今年は、ほぼ締め切りの時間までに願い事の検閲を終える事ができました。ではまた来年。




