見てるぞ (怖い話し)
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夜中の2時を過ぎていた。
目は疲れているのに、頭が冴えて眠れない。
スマホをいじる手もなんとなく止まり、ため息をついてベッドに沈んだ。
部屋の照明はすでに消してあった。
カーテンは分厚く、街灯の光も差さない。
目を閉じると、まるで墨を塗りつぶしたような暗闇に包まれる。
……でも、今日はいつもと違った。
眠れないというより、何かが「気になる」
背中の奥に、冷たいものが差し込むような感覚。
しばらくして、気づいた。
何かの視線を感じている。
気のせい…、と思って、、目を開ける。
だが何も見えない。
暗すぎて、部屋の輪郭すら不確かだ。
いつもの天井が、どこまでも続く空のように広がっている気がして、不意に不安になる。
電気を点けようとして、体を起こそうとする。
……けれど、動かない。
腕も足も、背中も重くて沈んでいる。
指先ひとつ動かせない。
金縛り?
久しぶりだった。
どうにか落ち着こうとするが、冷たい視線の感覚だけがどんどん強くなっていく。
そのとき。
暗闇の中に、「目」だけが浮かんだ。
二つの目玉だけが、くっきりとそこにある。
光もないのに、なぜか輪郭だけが見える。
人間の目。
けれど、何かが違う。
まばたきもしないし、微動だにしない。
こちらを、じっーと見ている。
目が合った瞬間、胃の奥がギュッと冷たくなった。
心臓の鼓動がやたらとうるさく響く。
視線はそのまま、音もなく、近づいてくる。
そして聞こえてきた。
フゥ……ッ…… フゥ……ッ……
誰かの息遣い。
濡れていて、重くて、肺に水が入っているような音。
それが、どんどん近づいてくる。
そして、その中に、、、誰かを呼ぶ声?
「……◯◯……」
自分の名前が混じっている。
囁き声のように、息とともに流れ込んでくる。
再び。
「……◯◯……」
耳で聞こえたのではない。
頭の中に直接、声が落ちてくるような感覚。
目玉が少しずつ、輪郭を持ち始める。
それは顔へとつながり、首へと伸びていく。
長い、長い首。
だけど…見たことも無い形。
人の形に似ているようで、何かが違う。
そしてその“顔”が、笑った。
目で、笑った。
口は見えないのに、
その視線だけで「笑っている」とわかってしまった。
すると次の瞬間、
冷たい何かが、布団の上から足元に触れた。
ゆっくりと、這うようにズリズリと這い上がってくる感触。
全身が凍りついたまま、声も出せない。
だれか、たすけて。
と思った瞬間、、、
パッ、と電気が点いた。
一気に視界が白んだ。
部屋は静かで、そこには誰もいなかった。
右手が布団の外に出ていて、ベッドの脇に置いたリモコンを握っていた。
……自分で、無意識に押したのかもしれない。
はぁ……と、大きく息を吐いた。
体中は冷や汗でびっしょり…
何もない。やっぱり、夢だったのか。
ふと、目に入ったスマホの画面が光った。
通知が一件。
知らない番号。
本文は、たった一言。
「見てるぞ」
息が止まりかけた。
スマホを伏せて、立ち上がろうとしたときだった。
鏡が目に入った。
壁にかけた、大きな姿見。
自分の後ろに、、
自分を見つめるもう一つ、“目”があった。
笑っていた。
そして、まばたきもせずに、こっちを見ていた。
目だけ笑いながら………。




