神代ルナ 口裂け女捕まえるって2 (ギャル警察)
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神代ルナは、自席で壁一面に貼られた被害者たちの資料に目を走らせていた。
3人の犠牲者。
ひとりは深夜の公園で、ひとりは地下道で、そしてもうひとりはマンションの非常階段で。
共通するのは、首筋に残された爪でえぐったような傷跡。そして、口元を覆う“赤いマスク”の証言
都市伝説「口裂け女」を模した犯行。
しかしそれだけでは終わらない。
ナナはこう言った。
「被害者たちには“共通の秘密”がある」
「“普通の人”じゃない」と。
犯人の動機か、それとも被害者の過去か、、。
「ん〜、な〜んか、見落としてる……気がすんだよね〜」
背後でコーヒーを啜る音がした。戸川だった。
「お前がそんなに悩むなんて珍しいな」
「おっ!戸川ちゃ〜ん☆今日もシャバーニ君みたいな顔じゃん!」
「誰がイケメンゴリラだよ!!」
ルナはファイルをめくりながら、ふと思い出す。
「あのさ〜こないだ、ナナち〜に言われたんだ……
[RC (リコレクション・コミュニティ)は終わんないよ☆]って…」
「RC……あいつ、何を知ってるんだ?」
「……たぶん全部。あの子、頭良すぎんのよ☆」
ルナは笑った。
自虐気味に、どこか懐かしそうに。
「警察学校の頃から、ナナち〜に頭脳戦で勝てたことなんて、たぶん一度もないんだよね〜」
戸川が眉を上げた。
「今でも?」
「今でもだよ。悔しいけど、たぶんね、、」
ルナは、戸川と話しながらSNS履歴の束を手に取った。
何度も見返してきたはずなのに、ふと目を止めたハッシュタグに引っかかる。
「#RCは終わらない……?」
被害者の投稿履歴をもう一度なぞる。
1人目。2人目。3人目――
すべての投稿に、そのタグが。
「……同じ日付?」
日付はすべて、一年前の同じ週末。
さらに細かく照らし合わせると、ある特定の配信イベントの直後だった。
「……配信イベント……? なんの?」
ルナはタブレットで検索をかける。
瞬時にヒットした。
[RC (リフレクション・クラブ)
主催:AI美顔診断ライブ]
“理想の整形顔”を匿名で投稿し、AIと視聴者が採点する美容コンテスト。
投票で決まる[最も美しい顔]
「なんだこれ……」
“晒された顔”、“加工された理想”、“数字で測られる美”。
それは、匿名の美の祭壇だった。
ルナはファイルをめくる。
被害者のプロフィール。
その端に挟まれていた、聞き込みメモに指が止まる。
“整形に関するトラブル有”
“顔を晒されたくないと怯えていた”
“心療内科に通っていた形跡あり”
「……共通点って……まさか……?」
さらに検索をかける。
すると、被害者3人全員が、イベント配信時に
“顔画像を投稿していた”事実が浮かび上がった。
どの投稿も、ランキング圏外。
コメントには嘲笑、罵倒、整形疑惑
「……彼女たち、晒されて、笑われて……」
だが、、ルナはさらに気づく。
その投稿のスレッド内に、あるユーザーのIDが残っていた。
r_k_mask
複数の被害者投稿に現れては、辛辣なコメントを残している。
その中の一つにあった言葉。
「お前の顔、歪んでるよ。整形ミスじゃない?」
ルナの指が止まる。
そのアカウントの過去ツイートには、ある告白が残っていた。
「もう、限界。整形なんて、しなきゃよかった」
「全部、壊された」
「#RCは終わらない」
そこに添えられた、1枚の画像。
病室のベッドと、鏡の中の“素顔”。
、、この顔、どこかで……見たことが……
ルナは、記憶を辿る。
都内の心療内科。聞き込み記録のひとつにあった名前が、閃きのように浮かぶ。
「……高峯梨花……!」
元インフルエンサー。
#RCイベントで一躍話題となり、容姿への誹謗中傷を浴びて姿を消した女。
仮面、整形、理想の顔、赤いマスク。
そして、「#RCは終わらない」
すべてが、ひとつに繋がった。
ルナは立ち上がり、スカジャンを羽織った。
「戸川ちゃん、行こ〜☆ もう一度、被害者の関係者に聞き込み!」
「……何か掴んだか?」
「うん。ようやく、ナナの“ヒント”が形になってきたよ☆」
深夜の公園。
事件と同じ場所に、マスクとフードを身にまとった女が現れる。
赤いマスクが、闇に沈んだ。
ルナは、ゆっくりと声をかける。
「こんばんは、高峯梨花さん。……もう、終わりにしよう。RCも、怒りも、、復讐も」
女の足が止まる。振り返ったその顔は、サングラスに隠されていた。
「……なんで、私の名前を」
「あなたは、あのイベントで晒し者にされた。
顔も心も……壊された。
だから、あなたは自分を笑った“顔”たちに復讐した」
ルナはまっすぐ見つめる。
「でも、彼女たちも同じように傷ついていた。
自分の顔を、誰かの評価に晒して。
……あなたと同じように、必死だった」
梨花の手が、ポケットに伸びる。
「信じられなかった……顔も、言葉も、“いいね”も全部、嘘だった……」
赤いマスクが外される。
その下にあったのは、整形の痕。
そして涙のにじむ、悲しげな“素顔”だった。
「でも……本当の顔を見せた、今からでもやり直せるよ…」
その瞬間、梨花の動きが止まる。ポケットの中の手が震えた。
そして、、背後から手錠がかけられた。
「高峯梨花……逮捕する。おとなしくしておけよ」
戸川だった。
影のように、ずっとルナの後をつけていた。
「ルナ、お前が先に動くと思ってな、後をつけた」
「うん。ま、気付いてたし☆
あーしのストーカーの戸川ちゃんなら、あーしの後ついて来ると思ってたし☆」
「誰がストーカーだっ!」
そうして、高峯梨花はパトカーに乗り連行されて行った。
翌朝。留置所で、ナナがルービックキューブをくるりと完成させる。
「ルナっち〜!やるじゃ〜ん☆さすが〜☆パチパチ〜てか、今回もウチのこと疑ってたろ〜☆」
「てへ☆あーしの“RC“違いだったわ〜☆
正直、ナナち〜のヒントなきゃ詰んでたわー☆」
「え〜☆ついに完全敗北認めちゃう〜??」
「はっぁ!……いや、最後に勝ったのはあーしだし!捕まえたのはあーし☆」
ルナは指をパチンと鳴らして、手錠のキーをチャラチャラさせて、見せるジェスチャーをした。
ナナはにやりと笑い、言った。
「わりぃーね☆ 本気のヒント出しちゃって!
ウチ、本気出したらヤバいんよ〜☆」
「ふふ……知ってるよ。でも今回は、、
こっちも本気のちょ〜〜い下、出したし☆」
二人の視線が交錯し、ふたりは笑う。
火花のように、でもどこかで信頼が宿るように。
警視庁の屋上。ルナと戸川が、紙コップのコーヒーを手に立っていた。
「戸川ちゃん。今回もありがと☆」
「おっ、めずらしっ……礼なんていいさ。
でも、お前が本気出してるとこなんて、初めて見たよ、、」
「えっ!?キモッ!あれがあーしの本気だと思ってんの??戸川ちゃん、やっばぁ〜☆
でもさ、今回は、ほんっと、疲れたよ〜。
戸川ちゃんの奢りで、スイーツでも食べなきゃ、脳がもぉたなぁぁ〜い☆」
「ふふっ、わかったよ!飯行くか!」
「おっ☆さすが太っ腹シャバーニ君!☆」
「ふっ、、殴るぞ、、」
と言うと、二人は顔を見合わせて、笑った。
ビルの上を、朝の風が静かに吹き抜ける。
事件は終わった。だが、“都市伝説”の影は尽きない。
ルナの眼差しが、また次の闇を探していた。




