表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 星 見人
44/81

神代ルナ レビュー0件レストランに行く1 (ギャル警察)

見て頂きありがとうございます。作る励みになりますので、良かったらブックマークと評価よろしくお願いします。


数日後の夕方。

都内某所、ファミレスの一角。

戸川はアイスコーヒーをかき混ぜながら、タブレット端末の画面をルナに見せた。


「……これが噂の[レビュー0件のレストラン]か」


「そ。ネットにも地図アプリにも載ってるのに、

だーれもレビューしてない。ブログにもSNSにも、ぜーんぜん」


「ありえんだろ。今どき飯食ったら、とりあえず誰か写真あげるだろ」


「でしょ〜? だから逆に、怖い怖い。場所も変わるんだって。この前は○○にあったのに〜って証言がいくつもある」


「……やっぱ都市伝説じゃねぇか」


「そーだよ? 都市伝説。けど、あーしはね、信じないの。

都市伝説で人が消える? んなわけないっしょ! これは殺人だよ!!」


ルナはストローをくわえながら、キッと目を細めた。


「殺人……って、お前、もう決めつけてんのかよ」


「うん、決めつけた。つーかもう見えてる。

消えた人の行動ログ、位置情報、最後にアクセスしたアプリ。全部パターンがある。

しかもそれ、ぜんぶ[意図的に消されてる]

端末に残るはずのログすら、痕跡ごと拭われてるの。人為的にね。人が消えるとき、そんな都合よくデータだけ消えるわけないじゃん?」


「……マジで異次元だなお前の頭」


「でしょ〜。だから一緒に来てね?」


「なんで俺が……」


「んふふ、それは戸川ちゃんが、あーしの保護者だからで〜す⭐︎⭐︎」


そう言ってウィンクするルナを前に、戸川は盛大にため息をついた。


「……わかったよ。ただし、現場でなんも起きなかったら、飯だけ食って帰るぞ」


「ううん、絶対起きるよ。てか、もう始まってる。

あの店の前で、次に誰が消えるか、、

それも、あーし、もう見当ついてるし」


、、その言葉の裏には、彼女なりの確信があった。

神代ルナにとって、[都市伝説]とは、ただの装飾でしかない。

その中に潜む論理。綻び。人間の欲。

それらを拾い上げて、現実の形に変えるのが、彼女のやり方だった。


翌日、日が暮れかけた頃。

ルナと戸川は、都内の寂れた裏通りにいた。

通勤帰りの人々が行き交う大通りから一本入っただけなのに、急に人気がなくなった路地。街灯の明かりはどれもどこか心もとない。


「……本当にあるのか? こんな場所にレストランなんて」


「ん〜、普通は思わないよね。でもさ、あったんだよ。昨日まで。ここに、確かに」


ルナは手に持ったスマホで地図アプリを開き、目の前のシャッターが降りた空き店舗を指差した。


「昨日の深夜ログ、ここにチェックインしてるデータがあった。投稿は残ってないけど、位置情報だけが生きてた」


「幽霊レストランかよ……まさか俺たち、心霊スポット探索に付き合わされてんじゃねぇだろうな?」


「ううん。違う。、、今日は、ここじゃないよ」


ルナはそう言って、くるりと踵を返し、路地のさらに奥へと進みだした。


戸川が小さく舌打ちしながらついていく。


ほどなくして、二人はある建物の前に立った。


古びた3階建ての雑居ビル。

1階には灯りがついている。看板には、こう書かれていた。


「DINING 雨宵あまよい


「雨宵……?」


「うん、昨日までは[月影亭]だったらしいけどね。内装も店主もまるっと変わってるのに、登録情報だけは同じIDを使いまわしてるっぽい」


「店の名前まで変えるのかよ……そりゃレビューもつかねえわけだ」


「レビューつかないんじゃなくて、つけさせないんだよ。

投稿しようとしたやつ、みんな消えてる」


戸川は眉をひそめた。「……それ、比喩じゃねぇよな?」


ルナは笑わない。その代わり、ポケットから何かを取り出した。


名刺サイズのカード。

そこには、昨日行方不明になったというフード系インフルエンサー[湊]の名前があった。


「この人、3日前に[ここの飯、人生最高]って動画撮ったっぽい。でも未投稿。カメラも見つかってない。

そして最後にアプリで開いてたのが、、

[レビュー0件のレストラン]のページ。……戸川ちゃん、これって偶然?」


「……いや、偶然じゃねぇな」


「だよね〜。じゃあ、入ろっか⭐︎」


ルナがドアノブに手をかけた瞬間、、

「チリン」と、古びた風鈴のような音がした。


重いドアを押し開けると、そこには外観からは想像できないほど美しい内装が広がっていた。


柔らかい間接照明。漆黒の床。

カウンターには白い制服を着た男が一人、無言で立っていた。


「いらっしゃいませ。二名様ですね」


笑みを浮かべた店主は、どこかで見たことがあるような顔をしていた。


、、違和感が、確かにあった。

だが、それを言葉にできないまま、ルナは静かに一言、呟いた。


「……ここだ。間違いない」


店内は静かだった。音楽はかかっていない。にもかかわらず、空気にリズムのようなものがあった。


まるで、「もてなす」ことに特化した空間そのものが息づいているようだった。


「ご来店、誠にありがとうございます。DINING 雨宵、店主の伊集院と申します」


男は年齢不詳の柔らかな笑顔を浮かべ、丁寧に一礼した。髪は銀混じりだが艶があり、目の奥は底が知れない……そしてその笑顔は、記憶のどこにも該当しないのに、どこかで会った気がすると錯覚を誘うものだった。


戸川が警戒心を隠さず周囲を見渡す中、ルナは無言で店内を観察していた。


「こちらのお席へどうぞ」


店主が指し示したのは、奥の個室だった。

暖簾をくぐると、和と洋が絶妙に混ざり合った、まるで高級旅館のような空間。


「うお、こんなとこ、どうやって維持してんだ……?」


「贅沢は、記憶に残りますから」


ふと、店主の目がルナをとらえた。笑みは崩れない。


「当店はコース料理のみのご用意でございます。

本日は[特別なコース]をご用意しております。

お客様の、、お好みは、全て把握しておりますので」


「把握、って……予約してないよ?な?」


戸川が言うと、店主はまるで質問の意味がわからないかのように、少し首をかしげた。


「ええ、だからこそ、です。こちらのお客様は、例えば、、」


そう言って、店主はルナの前にメニューらしきものを置いた。

だが、紙には何も書かれていない。


「、、白紙?」


「お客様の空腹に、合わせてご提供いたします。

言葉にせずとも、心に浮かべた料理が届く……そんな体験を、お楽しみいただければと」


戸川が小さく笑った。


「そんな都合のいい話が、、」


だが、彼の目の前に、いつの間にかスープ皿が置かれていた。

香りは、懐かしい鶏ガラの香り。色は、母の味噌汁に似た色合い。そして、、


「、、これ、オフクロの味だ」


一口、啜ると戸川の目が見開かれた。


「嘘だろ……何でこれが……」


「お腹が空いたときに、一番思い出す味を、こちらでご用意いたしました」


静かな声でそう告げる店主。

だがルナは、口元に笑みを浮かべつつも、眼だけが冷たかった。


「あーあ、、戸川ちゃん食べちゃった……ウケる」

と、呟いた後

「レビューが、つかないわけだね。うん、

美味しすぎて、、誰も帰れないって言いたいワケ?」


店主は微笑んだまま、何も言わない。

その沈黙に、答えが含まれていた。


「都市伝説で、人が消える?んなわけないっしょ。

、、これは、殺人だよ」


ルナの言葉が、空気を鋭く裂いた。


戸川が箸を止め、店主が一瞬だけまばたきする。

その刹那、まるで舞台の幕がわずかに揺れたかのように、空間の裏側が見えた気がした。



「……さぁ、幕は上がったよ、伊集院さん⭐︎。

あーしの一皿目は、[真相]ってことでいいよね?」



ルナは微笑んだまま、まだ何も口にしていない皿の前に、指を伸ばした。



            続

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ