超人 篠原(仮)終(ヒーロー)
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深夜、街の一角。
人気のない裏通りに、身なりのいい男たちが列をなしていた。
地下へ続く隠し扉。その先には、闇のオークション。
[人間が商品として扱われる場所]
「記録は取られていない。監視カメラもない。警察は見て見ぬフリ。
ここにいる全員が、消えても構わない存在だと?」
天井にぶら下がる配電盤から、時を止めた彼が降りてくる。
黒いコートにフード。
見上げた誰かが口を開く寸前に、空気が静止する。
「、、了解。じゃあ、ここにいるかわい子ちゃん達、全員俺の裁きの対象ってことで」
朝、ニュースはこう伝えた。
「渋谷で発生した謎の一酸化炭素事故。十数名が意識不明の重体に。現場には“Justice is late”と書かれたメモが」
篠原はニュース映像を見ながら、コーヒーをすすってひとこと、、
「遅れてくる正義なら、俺が先に殴る。単純な話だろ?」
数日後。
ネットはざわつき始めた。
「新手のヴィジランテ(自警団)か?」
「[ジャスティスレイター]って名乗ってるやつがまた暴れたらしい」
「あれって、例の、時止め男じゃないの?」
篠原はスマホを見ながら、自嘲する。
「ヒーローネーム、つけられるって結構ダサいな。
俺は戦隊モノのレッドでもブルーでもねぇのに、、」
だが、次の事件は違った。
ある政治家の孫が、裏口入学と性加害の証拠を握られていた。にも関わらず不起訴で釈放。
その夜、彼は自宅のプールで気を失い、冷凍庫の中で目を覚ました。
傍らに置かれていたのは、USBと一言。
「お前が犯した罪は、裁判ではなく、記録で裁かれる」
証拠は匿名でメディアに送られ、翌朝には世界中で拡散された。
SNSは、もはや騒然だった。
「誰だよマジで。こえーって」
「正義の味方ってより、これ制裁の鬼だよ」
「ジャスティスレイター? ノーサンクスレイターだろ、、」
彼はSNSの通知を切った。
誰が何と言おうと、それが彼の選択だったから。
その夜、彼は木下と偶然、コンビニの前で再会する。
「、、篠原さん、最近、変わったね」
彼は少し間を置いて、答えた。
「そりゃあさ、ヒーローって呼ばれながら、助けたやつに石投げられたら、、なかなか笑えねぇよ」
木下は袋を持ちながら、少し目を伏せた。
「、、それでも、あたしは[あの日]助けられたこと、忘れてませんから」
篠原は、ほんの一瞬だけ目を細める。
けれど、何も答えなかった。
帰り道。闇夜に紛れた彼の姿を、遠くから一台の黒い車が見つめていた。
その中では、先日姿を消したエージェントの女が、誰かと通話していた。
「始まったわ。彼はもう、自分の裁きを信じ始めてる」
「あとは……世界がそれを否定するだけですね」
窓の外で、稲光が走った。
そして国の宣戦布告は、突然だった。
日本政府は[正体不明の超常個体]に対し
国内テロリスト指定を発表した。
対象は、「時を止め、裁きを下す存在」
コードネーム:J-0(ジェイゼロ)。
市民には通報の義務。
SNSでの擁護・称賛は処罰対象。
学校では、[正義の模倣を禁ずる]という通知が出回った。
篠原は、ただ静かにニュースを見ていた。
「なんだよ、、俺、政府公認の悪役かよ、
アメコミだったら、3巻目で死んでるやつじゃん」
皮肉混じりに笑って、コーヒーに砂糖をドバドバ入れる。俺はもう、甘いものしか信じられないらしい。
その日の夕方、木下が血まみれで篠原の部屋に飛び込んできた。
「[あの人たち]に襲われた……私のスマホ、盗られて……SNSで篠原さんの位置、探られてたみたいで……!」
篠原は一瞬凍りつき、拳をゆっくり握り締めた。
「、、はは、そうか。つまり、俺のせいってわけだ」
彼の視界が、赤黒くにじむ。
その夜、篠原は姿を消した。
都内の某研究施設に、不可解な現象が発生。
完全な時間停止空間が生成され、国家機能が一時停止。
直後、首相の緊急声明が発表される。
「J-0は、もはや市民の敵であり、存在自体が国家の脅威です。彼が存在し続ける限り、この国に未来はない」
だが数時間後、全世界同時配信で、J-0名義の動画が流れた。
仮面。変声。白黒の映像。
その中で、彼はただ一言だけ発した。
「人間が人間を裁けないなら、、俺が裁く。
この世界が腐ってるなら、いったん壊してから考えようか?」
国連緊急会議。戒厳令。デモ。混乱。分断。
そして、奇跡が起きる。
南太平洋沖で発生した、未曽有の超巨大地震。
各国が絶望する中、時が止まる。
地鳴りが止み、津波が止まり、プレート運動すら停止した。
その中心に、黒いコートの男が立っていた。
翌朝。世界中のテレビに、静かな映像が映し出される。
その男は、ただ一言だけ残した。
「これは俺の最後の仕事ってやつだ、、。
これ以上、俺のようなやつが生まれない世界を作れ」
そして、、彼は消えた。
そこから時は流れた。
戦争は止まり、腐敗した政治家は彼に恐れ、次々に辞職。
企業の内部告発が相次ぎ、倫理を重視する空気が世界に広がった。
誰も言わなかったが、皆、心のどこかで思っていた。
あれは、神ではなかった。
あれは、罰だったのだ。
とある日、小さな雑貨屋のガチャガチャ機の前で、一人の少年がつぶやいた。
「ねぇママ、これ、J-0のフィギュア出るって!
このヒーロー、ホントにいたの?」
「さぁ、、ママは見たことないけど、、
でも、いたとしても、きっともう誰にも気づかれないところにいるわね」
少年は笑ってコインを入れ、ハンドルを回した。
そのとき、ほんの一瞬だけ、世界の時間が止まった。
その止まった時間の中をスタスタ歩いて来て
ガチャガチャ機の中から出てきたカプセルを確認する、コートにフードの人影。
「なにこれっ!ダサっ!ハズレじゃん!」
と言うとガチャガチャ機を開け、中をゴソゴソやり
「当たりのJ-0に交換しとくな」と言うと
また、どこかに去って行った。
我々の[何気ない日常の幸せ]は、、
超人 篠原(仮)のおかげなのかもしれない、、
終




