写るな 写すな (都市伝説)
「ストーリー、やばいもん写ってんぞ」
深夜1時、松永からのLINEが届いた。
俺がさっき投稿したストーリー動画。
終電を逃して歩いて帰る途中、自撮りでふざけて上げたやつだった。
「何が? 俺しか写ってねぇよ」
「、、スローで見てみ」
言われた通り確認して、ゾッとした。
0.8秒目、俺の後ろのビルの隙間。
白い服の誰かが、ピースして、笑っていた。
翌日から変なことが続いた。
自販機のガラス、電車の窓、スマホのホーム画面。
一瞬だけ、何かが[俺の後ろ]に映る。
最初はぼんやりした影だった。
でも徐々に、はっきりしてきた。
白い服、黒髪、のっぺりとした顔。
こっちを見て、笑っている。
俺はストーリーをすぐに削除したが、意味はなかった。
それは、ずっと俺の背後にいた。
「なあ松永、あの動画、、なんなんだよ」
呼び出して問い詰めると、奴は明らかに動揺していた。
「、、ごめん、送ってないやつ、まだあるんだ」
スマホを渡された。
そこには、俺のストーリーをフレーム単位でスロー再生した動画。
0.8秒目、白い服の、それが確かに笑っている。
しかも目が、見ている俺と「バチッ」と合っている気がした。
俺は「ふざけんな……なんで黙ってた」と言うと、
松永は「写った人間は、次の[写り手]になるって話、知ってるか?」と返した。
「、、は?」
「誰かの後ろにそれが写る。で、次はその写った人間が、別の誰かの後ろに、、」
「つまり、写った時点で、、もう、俺の番ってことか」
その晩、なぜか松永が失踪した。
警察の聞き込みも空振りだった。
上司は俺を疑ったが、証拠も動機もなかった。
ただ、気になったのは警察がポツリと漏らした一言。
「この1年、同じような失踪が7件あるんです。
いずれも、最後にSNSのストーリーを投稿してる。
内容は、、夜道での自撮り。
で、どれも、、誰かが[後ろに写ってる]って通報されてる」
それを聞いて、ようやく気づいた。
これは都市伝説なんかじゃない。
「写る」という行為が、何かを招く。
写すな。写るな。
じゃなきゃ、次はお前が[そこに立つ]番だ。
そして、今。
俺はこの最後の動画を投稿する。
動画の冒頭にはこうテロップを入れた。
[スクショ厳禁]
再生ボタンを押すと、俺が深夜の路地裏で自撮りをしている。
1秒目、俺の右後ろに、何かが写る。
白い服。黒髪。
にやけた顔で、ピース。
俺は画面を一時停止し、拡大した。
その顔は、、松永だった。
彼はもう、[向こう側」にいた。
画面の奥から、まるで俺にバトンを渡すように、笑っていた。
「な? 次は、お前の番だ!」
「くれぐれも夜道の撮影にはお気をつけください、、」




