山田ヨシオ 34歳 無職 (ギャグ)
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山田ヨシオ、34歳、無職。
人は彼をこう呼ぶ。
「起きてる時も寝てるみたいな男」
毎朝10時に起きる。いや、正確には「目は開ける」だけ。
布団からは昼すぎまで出ない。
「社会との断絶」を誇るように、今日も天井を眺めながら呟いた。
「朝から何かしようって考えるやつ、たぶん火星人だな、、」
そんな彼の自宅、ボロアパートの203号室に、突如宇宙人が現れるのは、その直後だった。
ベランダの窓が青白く光る。
「ふぅわぁ!またYouTube見すぎて目に残像がぁ、、」と目をこすったその先に、UFO。
「ピーガガガ、山田ヨシオ、カンリョウ、、」
「ん? 宅配?」
気づけば、ヨシオの体は光に包まれた。
次に目を覚ましたのは、宇宙船の中だった。
「んだこれ、、宇宙ミュージアム? 夢? 現実逃避が進化しすぎてない?」
ヨシオの前に立つのは、キラキラのローブを着た細身の異星人たち。
でもどこかマヌケ。みんな、妙に目がデカくて動きが芝居がかっている。
「グラシト・ナーヴァ・ヨシオ・クランノス!!」
「いや、何語?てか落ち着けよ、俺はただの、、」
異星人のひとりが、深々と膝をついた。
「、、地球の伝説が、本当に実在したとは、、」
意味がわからない。
でも、なんか…空気的にヒーロー扱いされてる気がする。
そのままヨシオはフカフカのイスに座らされ、銀色のフルーツを差し出され、脚をマッサージされはじめた。
「ちょ、なにこれ。リゾート? 俺、死んだ?」
だが彼の戸惑いなどお構いなしに、宇宙船の中では通訳AIが彼の過去を勝手にでっち上げていた。
「この者こそ、[沈黙の惑星・地球]にて修行を積みし、言葉を捨てた智慧の戦士。[動かざる知性]とも称される存在である!」
「え、なにそれ。俺ただ布団から出てなかっただけなんだけど…」
しかも、宇宙語を理解できないヨシオが、寝ぼけて手をぐるぐる回しながら「あ〜眠ぃ〜」と伸びをすると、、
異星人たちが一斉に立ち上がり、拳を掲げた。
「おっ、、おおっ、今のは[宇宙循環のポーズ]!」
「調和と均衡を示す、かつての預言者しか使わなかった動きだ!」
「もはや疑いようもない、この者が我らの[レガシィ]だ、、!」
こうして山田ヨシオは、本人の知らぬところで宇宙艦隊の司令官に任命される。
夜、個室でヨシオは毛布にくるまりながら言った。
「、、なんかさ、俺の人生、めっちゃバグってる気がする、、」
でも、次に目を覚ましたとき、彼の隣には「副官」と名乗る、真面目すぎる宇宙人と「地球語を解析中」と表示された翻訳AIが待っていた。
「司令官、目覚めていただき感謝します。我々は次なる星を解放しに向かいます」
「え、あの、俺、布団に戻っていい、、?」
宇宙の命運は、今日もこのどうしようもない男の肩に預けられた。
しばらくすると「司令官、10分後に惑星ヴァルスとの外交交渉です」と聞こえてきた。
朝から全力で寝ぐせを撒き散らすヨシオに、副官ナイアが淡々と伝える。
「いや待て、外交!? 俺まだ[hey!Siri!]も滑舌悪くて反応しないレベルなんだけど!?」
ナイアの長い触手のような腕が、翻訳AI端末を差し出す。
「地球語のデータは現在53%解析中。現状では誤訳が出るため、身振り手振りでの意思伝達が最適です」
「それ、さっき[俺らしいっすね〜]って解析して言ってたAIが言うセリフか?」
宇宙戦艦カリスト号の会議室。
重厚なドアが開くと、紫色の肌をした戦闘種族ヴァルス代表団が入ってくる。
全員ゴリゴリの武装。目が完全にバキバキ。殺る気だ。
ナイアは小声で「彼らは1秒でも侮辱と取れる動きをすれば、すぐに開戦します。お気をつけて」
ヨシオ「え、そんな繊細な見た目してる!? いや無理無理無理、、彼ら、完全にキマっちゃってるよ??」
プレッシャーで手が震えるヨシオ。
とりあえず動揺を隠すため、いつものクセで両手の指をパタパタ動かし始める。
それが、全てのきっかけだった。
ヴァルス代表「、、むっ!? 貴殿、それは[千星舞]ではないか!」
ナイア「[千星舞]? それは、、伝説の和解のサイン、、」
ヨシオ「え、あの、これ? 指がむず痒くて、、」
さらに気まずさを紛らわすため、テーブルの上のナッツを1つ投げて口でキャッチ。
→「むっ!我々の祖、ラ・ムス将軍と同じ所作だと、、!」
ごく普通のあくびをしたら
→「戦は眠りに過ぎぬという哲学を暗示してるのか?」
足がしびれて貧乏ゆすりしたら
→「[地震舞]、、それは我らの星の魂のダンス、、!!」
その結果、、
「ヴァルス連合、銀河平和条約に同意!」
一同、宇宙拍手(手から光を放つ)
ヨシオ、ポカ〜ン。
ナイア「、、司令官、これほど完璧な外交は前例にありません」
ヨシオ「、、ねえ俺、もしかして[何もしない]が最強なのでは?」
翻訳AI「解析完了率:56%。現在のあなたの地球語を[無意識の神託]として登録しました」
その日の夜。
銀河中のニュースにこう流れた。
銀河史上最も不可解で偉大な和平交渉
指先一つで戦争を終わらせた地球人、山田ヨシオ
「静かなるレガシィ」、ついに宇宙に名を刻む。
ヨシオ、ポカンとした顔で寝室のベッドに倒れこむ。
ヨシオ「…いや待って、俺、戦争止めたんだっけ? 宇宙平和のために…」
ナイア「司令官、少し気になることがあります。あなたは意図的に何かを伝えたのですか?」
ヨシオ「いや、あんな手で伝えられるわけないだろ、、何が伝わったのか、俺が聞きたいよ、、」
ナイア(少し疑念を抱く)「……それでも、あなたの所作には確かな力があります。どうして、あなたはそれを意図して行うのでしょう?」
ヨシオ「え、いや、ほんとに偶然なんだけど。まぁ、だいたい寝ぼけてるだけっすよ」
ナイア「それがどうして、あんなに多くの命運を動かすのでしょうか、?」
ヨシオ「、、はは、あんまり考えたくないな、それ。なんか自分が一番理解できてないって怖くない?」
その翌日。
ヨシオがぼんやりと宇宙テレビをつけると、宇宙平和条約のニュースが流れていた。
どこか他人事のように、宇宙ピザの箱を開けながら見ていたが、途中でふと気になった。
地球の代表として和平交渉をした人物
その後ろに映し出されたのは、まるで神々しい人物がスポットライトを浴びるシーン
「いやいゃ、俺、そんなドヤ顔してないけど?」
続く




