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友達になりたい


「いや〜負けた負けた……やっぱ駿は強えな〜ブランクあるとは思えねぇ」

「大輝も結構やるようになったじゃん」

「今日こそ勝ちたかったの俺は〜!」


 俺達は1on1を終えて、カメラを柏木さんから返してもらい、3人で話をしていた。


「瀬戸くんって……本当はすごい人だったのね……」

「もうバスケは辞めたんだけどね……」

「もったいないわよそんなに才能あるのに……」

「まぁまぁ、駿が決めたことだからそれでいいじゃん!そ・れ・に!俺の方がすぐに上手くなるからね、日本バスケの未来を背負う男は2人もいらねぇんだわ(笑)」

「よっ!さすが大輝!かっこいい!」

「ふふっ……少なくともそのカッコでいうセリフじゃないわよそれ」


 ニコニコしながら大の字で寝っ転がっている大輝は柏木さんの言葉に対してフォローを入れてくれる。

 なんで辞めたんだとかそう言う話はしたくなかったから大輝の気遣いに感謝だ。


「そろそろ俺は行くよ」

「そっか、まだ周るのか?」

「うーん……今日は疲れたしこのまま帰るわ」

「そかそか、じゃあ2人ともまた明日〜」

「あした〜」

「ええ、また明日」


 俺は荷物を持って正門に向かって歩き始めた。

 久しぶりのバスケも親友が彩りを与えてくれたからか、今ではそれほど悪くないと思えるくらいになっていた。


――――――――――――――――――――――――――

《由佳視点》


 さっきの2人の対決は本当にすごかった。

 10分という少しの時間だったけど、動画に撮っておけば良かったと後悔するほどに2人ともカッコよかった。


 犬飼くんの負けてても本当に楽しそうな表情をして最後まで喰らい付いていく姿はキラキラと輝いて見えた。


 瀬戸くんは……正直言って反則だとおもう。

 教室ではあんなにぼーっとして人のことを心配させておいて、バスケをしたらあんなに化けるんだもの……

 女バスの子達がいまだに瀬戸くんのことでキャーキャー言ってるのもわかるほどの衝撃だった。

 別に好きになったとかじゃないけど!私はそんなちょろくないけども!

 

「ねぇ、犬飼くん」

「んあ?柏木さんはまだ帰らんの?」

「帰るけど、その前にちょっと聞きたくて」

「ん?なんでしょ?」

「瀬戸くんのことよ、彼は一体なんなの?」

「瀬戸駿。元バスケ部の絶対的エース。以上」

「いや、そう言うことじゃなくて……教室いた時とは全然雰囲気違うし、さっき2人して泣いてたし……やっぱり気になるじゃない」

「おお、さっきの見られてたか……きゃー恥ずかしぃ〜、もしかして柏木さん覗き魔さんだったりして〜」

「ふざけないでよ」

「まぁまぁ……怒らない怒らない」

「犬飼くんがふざけるから……」


 せっかく2人で話せる機会だし、少しだけ瀬戸くんについて聞いてみたらこれだ。

 犬飼くんと瀬戸くんが仲が良いというのはわかる。

 けど、なんだかそれ以上に犬飼くんが瀬戸くんのことについて他人に踏み込ませないように戯けながら守っているような感じがする。

 あまり不用心に踏み込めば彼は私との関係などたやすく切ってしまうのだろう……

 それでも私は2人にもう少しだけ近づきたいと思ったのだ。

 

「じゃあ聞くけど、柏木さんは駿とどうなりたいわけ?」

「仲良くなりたいと思ってるわ」

「それはクラスメイトとして?恋愛の対象として?それとも、隣を歩いていく仲間として?」

「2人のようにお互いを同じくらい大切に思い会えるくらいの存在……になりたいと思ってる」

「俺たちと出会ったばかりなのにそこまで言ったんだ、理由を聞いてもいいかな?」


 ドキッとした。

 犬飼くんの表情は今までと違い、一気に真剣な表情に変わったからだ。

 きっとここを間違えればそれで終わり。やりなおし出来ない。それほどの真剣さを感じさせる空気と問いかけだった。

 それでも私はここで引き下がりたくなかった、たとえ胸の内を曝け出すことになっても、こんなに友人を大切に思えるだけの存在に出会えることはこの先ないかもしれないのだから。


「私は……」

「犬飼!いつまで休んでんだ!!練習始めるぞ!」

「あちゃー……タイミング悪かったな……まぁ、これ以上はこんなとこでする話でもないか……柏木さん、とりあえず駿を追いかけてみなよ、多分なんだかんだ正門のあたりにいると思うし、話はそれからかな」

「わかった……犬飼くん、また明日」

「あした〜!」


 犬飼くんはさっきまでの雰囲気を一変させて笑顔で練習に参加しに行った。


「とりあえず正門……よね」


 私は急いで靴を履き替えて瀬戸くんを追いかけた。

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