なんとかなりそう?
「その話聞いた限りは結構やばいと思うんやけど、なんで今、そんな呑気にパチンコ打ってるん?自暴自棄になったんか?」
「まあまあ、話は最後まで聞けよ」
あれから俺はマモと一緒にパチンコを打っていた。別に自棄になったわけじゃない。何とかなるかもしれない方法を思いついたのだ。
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俺はシエル先生との会話を思い出す。
『じゃあ、前期で留年確定ってことですか!?』
『まあ、そうなるな』
『何とかならないんですか?』
『...君の留年を回避するには単位を獲得しなければならない。この学校では授業以外でも学校指定の課外活動で単位を得ることができるが、......どれも募集期限をすぎているな』
『...そんなぁ』
『他にも方法がないわけじゃないが...』
『教えてください!』
『...夏休みが始まってすぐ7月の下旬にこの学校の学園祭、バルト・エーデル祭があるだろ?その大会の戦闘トーナメント部門で1位を取ったものには賞金100万円と10単位を与えられる』
『マジっすか?!それを早く言ってくださいよ』
『だが、これは現実的な話ではない。君は確かに優秀かもしれないがこの学校はその比にならないぐらいの努力する天才がいる。夏休みに入るまでに休学手続きをしないと後期の授業料を無駄に払うことになってしまう』
『そのことなら大丈夫っスよ!ウチは貴族なんでね。授業料ぐらい親が払ってくれますよ!それにこれしか方法がないならやるしかないでしょ』
『そうか。なら親御さんには私から伝えておく。君の健闘を祈るよ』
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「てなわけで俺はこの大会で優勝すれば全部チャラってわけ」
「自分の名を冠した祭りをこんな屑に利用される学校創設者のバルトとエーデルを思うと泣けてくるわ」
まあ、報酬に単位なんかつけてる時点で俺みたいなやつのための救済処置かなんかだろう。
「そもそもシルファじゃ優勝できへんとおもうで」
「それ先生にも言われたよ。でも一年生なんて魔法学部のどの学科でも応用戦闘学学んでないからどいつも同じようなもんだと思うんだよね。俺こう見えて実践経験あるし。その辺のやつらじゃ相手になんないとおもうんだけど」
「それは、魔法学部に限った話やろ?剣術学部はすでに戦闘経験あるで」
「剣術学部ぅ
「あんな棒振り集団が魔術師様に勝てるわけないだろ?」
「でも今年の優勝候補は剣術学部の生徒やで」
マジ?
「マジや。聞いた話によると一年生にして魔術をかき乱す剣技と斬撃を放つ剣技を習得してるらしいで」
「は?」
後者はともかくとして前者は習得者が一握りの難関剣術だ。一年生のレベルではない。
「てかなんでそんなに詳しいんだよ」
「トーナメントの賭けが行われるからや。俺はすべての試合その剣士にかけるって決めとる」
こいつはパチンコの引きは悪いがカジノやポーカーでは頭抜けた才能を有している。そんなこいつがここまで自信をもって言うならそれは本物なんだろう。
「そいつの名前は?」
「カイザー」
剣術学部剣術科のカイザー。確かこの時間は剣術学部の授業があったな。
「なら敵情視察だ。今からそいつ見に行こうぜ」