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魔法大学エンジョイ勢  作者: 水筒 硝子
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留年確定

この世界では、小学(6年)→中学(3年)→大学(4年)→大学院(2年)が一般的な世界観となっています。大学院に関しては現実と同じく研究職志望以外はあまり行きません。

 受験期は生まれてから初めての地獄だった。


 血のにじむような努力、思うように結果が出なくて泣いたあの日。この地獄は15歳の自分にとって耐えがたいものだった。


 終わらない勉強の末。時間が経つにつれ冷めていく熱とモチベーション。少しでも自分と勉強を繋ぐ糸が切れたら逃げ出してしまうのではないかという不安。それらが俺の中で混ざり合って現実と向き合う度に最悪な思いにさせる。


 そして、それらを抑えるために俺は想像するのだ。


 入学後の華々しいキャンパスを。勉強から解放される妄想を。大学の友達と遊びに行ってこれだけ勉強してよかったねと笑いあえる日々を。


 そして、地獄の夏を乗り切り、焦りの秋、覚悟の冬を超えて俺は試験を受けた。


 正直、手ごたえはなかった。落ちたとすら思った。それでもいいとすら思った。

 

 ただ、一年の執念の結果を見るためだけに重い鉛のような足で大学に向かった。そして見た。


「...受かった」


 喉からようやく言葉を絞り出した。大きな声すら出なかった。


 俺は第一志望の大学に合格した。



:::::



 エーデル魔法大学。


 エーデル帝国立の大学であり、言わずと知れた難関大学である。4つの学部を設け、魔法学部、剣術学部、医学部、教養学部とあり。その中でも人気学部である魔法学部の学科の平均倍率は驚異の1000倍である。一番倍率の低い学部学科でも200倍はあるハイレベル大学。


 そして受験は筆記試験と実技試験に分かれ、どちらも難易度は高い。


 その入試難易度、倍率と国内だけでなく国外のあらゆる大学と一線を画す学業実績から世界最高峰の大学と呼ばれている。


 そーして、そんな大学の魔法学部魔法学科に進学したのがこの俺シルファ様ってわけ。倍率1000倍?よゆー、よゆー。簡単でしたわ。あんなん三日勉強すれば受かるって。


 エーデル魔法大学に受かった以上、人生は勝ったも同然だ。留年さえしなければ学校推薦で国のそれなりの地位に就くことができる。だけど留年なんて滅多をしない限りはないだろう。つまりここで四年間過ごし学校推薦を受けるだけでいい。


 出世街道まっただなし。あー、受験頑張った甲斐がありましたわ。...いやいや頑張ってないけどね?全然余裕だったけどね?


 学校生活も入学してすぐはいろいろ慌ただしかったけど、最近はようやく落ち着いてきた気がする今はサークルに入り、友達もできて遊んだりして夢に見てた大学生活そのものだ。毎日が楽しい。


 

 今も授業を抜けて友達とパチンコを打っている。だが、これは仕方のないことだ。大学から飛行3分圏内に賭博施設があることが問題なのだ。サークルの先輩もよく見かけるしこの大学ではよくあることなのだ多分。


「駄目やシルファ。今日も全然当たらへんわ」


 こいつはマモ。この大学で一番仲のいいやつだ。入学したてで右も左もわからない頃、俺はこいつと仲良くなってもともとインドア系だった俺に遊びを教えてくれた。パチもこいつから教わったのだ。まだ知り合って数か月だが、こいつは親友だ。


「そーだな、今日は引き悪いし、ここまでにしてそろそろ帰るか」

 

 今日は二万負けでも昨日五万負けたから、実質勝ち。耐えたー笑。定員に玉をカードへ交換してもらい、謎の骨董品屋さんで現金と交換する。この数か月何回も繰り返した慣れた動作。 


 金の分配も済み、飛行魔術を使い学校に行き飯を食っていると、手元の魔法板からメッセージが届いた。


『魔法学科一年シルファ。至急、進路課に来なさい』


 覗き見ていたマモが言う。


「なんかしたんか?」


「心当たりはないけどな。特待生の話とかかな?俺結構成績よかったみたいよ?」


「そうやったらこの時期やと遅いやろ。もうすぐ夏休みやぞ」


 そりゃそうか。じゃあなんだろ。とりあえず行ってくる、そう告げて俺は一人進路課に向かう。


 失礼します、そう言って扉を開く。進路課には女教師がいた。髪は金色、背が高くて少し気の強そうな顔をしている女性。その女性が足を組んでこっちに青い目をやった。骨盤を痛めそうな態勢だなとおもった。


「魔法学科一年のシルファと申します。呼び出しがあったのですが、どのような要件でしょうか」


「君がシルファ君か。私は進路課のシエル。要件は...そうだな、隣の進路指導室に来てくれるか?」


 進路指導室。面談ぐらいでしか行ったことないんだが。とりあえず言われるままに部屋に入り、言われるままに席に着く。 


「さて要件だが、まずなんで呼ばれたのかわかるか?」


 うーん。心当たりないっすねえ。


「入試成績良かったんで特待生とか?」


「は?」


「あ...。ス、スミマセン」


 なんだよシエル先生めっちゃこえーよ。


「はぁ。君単位について、今どういう認識だ?」


「単位ですか?必須単位は全部取っていますし大丈夫なんじゃ...」


 シエル先生はまた軽くため息をつく。


「必修さえとっていれば進級できるのは普通の大学だけだ。この大学のルールは少し特殊でね。前期15単位とっていないと卒業できない。説明を受けたはずだが?」


 ......なんか聞いたことがある気がある気がするようなしないような。


「君は必修7単位を合わせて前期13単位。あと2単位足りない」


 冷汗が流れる。心臓がやけに早く鼓動する。こんなのは受験期ぶりだ。


「つまり君はこのままいくと」




「留年確定だ」



 



 


 

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