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みつけてくれた

少女:

「帰った」


よく似た少女:

「おかえり。服」


少女:

「借りた。許せ」


 少女の一人は、ワールウィンド領でジルと出会った白の少女。

 もう一人は、白の少女によく似た――瓜二つの少女。

 彼女たちは双子である。

 同じ服装をしていると、誰も見分けがつけられなくなる。本人たち以外は。

 なので、普段は色違いの装備をしている。


よく似た少女:

「いいけど。どうした」


少女:

「やべぇババアがいた」


よく似た少女:

「?」


少女:

「二人で行動すべき」


よく似た少女:

「強い?」


少女:

「強い」


 と、そこへ。


シャルナ:

「――――そうしていると、本当にそっくりね」


 シャルナが声をかけると、双子は揃って跪いた。


シャルナ:

「ふふ。鏡の中に迷い込んだよう」


 少女と、よく似た少女は、シャルナを中心に対称を描く。左に。右に。


 シャルナは微笑む。

 右の掌を少し上げ、


シャルナ:

「聖女の右腕。ウルリッカ・ヌル・オーエン」

よく似た少女:

「――――はい」


 左の掌を少し上げ、


シャルナ:

「聖女の左腕。ウリヤーナ・ヌル・オーエン」

少女:

「…………はい」


シャルナ:

「――――征くわよ」


双子:

「「はい。シャルナ様」」


・・・・・・


 双子の故郷は辺鄙なド田舎の村だった。

 彼女たちは、産まれたそのときから気味悪がられた。

 双子の出産がそもそも稀。

 成長するにつれて――――変わらず、彼女たち双子は瓜二つであり続けた。

 村の人間たちは、彼女たちを忌み子と呼び、遠ざかっていった。


 あるとき、この村に聖女が来るらしいと噂になった。

 双子は興味がなかったが、村の人間たちはせっせと歓迎の準備をはじめた。

 村の人間たちは、双子に表に出るなと厳命し、村はずれの家屋に押し込んだ。


 食事の匂いが濃く漂ってきたことで、双子は聖女が村に来たらしいと察した。

 何も食べていない。

 双子はお腹を空かせていた。

 何か食べるものを探した。

 家屋の中には何もない。

 双子は外に出た。


シャルナ:

『あら――』


村の長老:

『忌み子どもがッ!外に出るなと言っただろう!!』


シャルナ:

『…………、あの二人は?』


村の長老:

『へぇ、出来の悪いやつらでして――聖女さまのお目汚しをするわけにはと隠しておったのですが』


 大人たちに見つかった。

 文句を言われた。

 そんなこと言われても。と双子は思った。

 双子は何も言わなかったが、双子の腹の虫は抗議の音をあげた。


シャルナ:

『ねぇ』


 見慣れない女――聖女であろうが――が話かけてきた。


シャルナ:

『あなたたちの信じる教えは何?』


 双子は、知恵は回る方であったので、


『『みーくりっどきょうです』』


 と答えた。

 聖女はにこりと微笑むと、温かいパンとスープを手ずから渡してきた。

 双子には、これが正解なのだと分かっていた。


シャルナ:

『村長。――あなたの信じる教えは何?』


村の長老:

『ひっ――ミークリッド教です!!』


シャルナ:

『おかしいわ。私の記憶では……。子どもに食事を与えてはならない、などと……聖典に記載があったものかしら……』


村の長老:

『あ……いや……』


シャルナ:

『あなたの信じる教えは、ナニ?』


村の長老:

『お、お助けを――』


 長老は跡形も残らず消された。

 強い光で、影すら残らないかのように。


シャルナ:

『くだらないわ。迷信。誤信。正しき道は一つ――明確に示されているというのに』


 聖女は双子に手を差し伸べた。


シャルナ:

『私と来る?』


 双子に断る理由はなかった。

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