溺れる者
ユーシア王国。王都、王宮、謁見の間。
玉座を挟んで、王と聖女が立っている。
ユーシア王は、暢気に座ってはいられない。
カマッセ:
「公都の城攻めに――――失敗しました」
跪いた騎士団長が報告を述べる。
ユーシア王:
「ぐぬぬ……」
―― ユーシア王 『クサッティモ・キング・ユーシア』 ――
事前に聞かされていた話とはいえ、
王は顔を赤く青く白く百面相している。
カマッセ:
「申し開きのしようも御座いません」
騎士団長は、頭を低く下げたまま。
聖女は彼らを冷めた目で見ている。
聖女:
「で?」
―― 断罪の聖女 『シャルナ・ザッハーク』 ――
カマッセ:
「戦力の――増員を、お願い申し上げたく」
シャルナ:
「
フランキスカ:
「まぁ、まぁ、まぁ。わたくしも同行しておりましたが……どうやら強大な魔族が残っていたようです」
シャルナ:
「――そう」
フランキスカ:
「神聖ミークリッド教国といたしましては……魔族の討滅のためとあらば……助力も吝かではありませんなぁ……?」
シャルナ:
「…………」
クサッティモ:
「では――――
フランキスカ:
「ユーシアの王よ。兵も。武器も。タダではないのです」
クサッティモ:
「…………望みの金を出そう」
フランキスカ:
「我らはすべてミークリッド教のため、我らが神の為に働いております。金銭は不要。――ですが、そちらに奉仕の心があるのならば……この地に教会を建てていただきましょう」
クサッティモ:
「……約束しよう」
フランキスカ:
「――――宜しいでしょうか?」
シャルナ:
「好きにしろ。勝手に決めてから確認を取るな」
話は終わりだな。とばかりに、シャルナはその場を立ち去って行った。
カマッセ:
「すまぬ、フランキスカ殿。助かった」
フランキスカ:
「いえいえ――――」
こちらこそ。フランキスカの口角が吊り上がった。
小国、神聖ミークリッド教国がなぜ影響力を広げたか。
聖女の存在。
そして、布教。教化。
彼らにとって、土地を維持するために必要な金銭や労働力は少なく済む。
現地の人間たちが、自ずから彼らの傘下となるからだ。
主人公の影のうすさ