在りし日の
我は魔王様――バアル・ダイ・マオハルト様に仕えていた。
それはそれは偉大な大悪魔であった。
若かりし頃の我は、不死の王よと持て囃され天狗になっており――、
しかし魔王様に殴り合いでボコボコにされ――、配下に加わったのだ。
「ジョルジュ、強かったもんね。ご先祖様もすごかったんだ」
ああ。
当時の大陸は荒れており、我を含め各地で腕に自信のあるものどもが跋扈していた。
その戦乱の世において、世界の半分を統一してのけたのが――我らが魔王様、バアル・ダイ・マオハルト。
そして、我と同じく魔王四天王の一人として力を揮ったカンナ・グレイシアが――後のカンナ・マオハルトだ……。
結婚し、やがて娘を授かった二人は――、殺された。
「…………」
我は再興の機を待った。不死身なのでな。しかし、志ならずして……例の鞄の中よ。
あれから――。
娘様は生き延びた、ということだな……。よかった――――。
「……そっか」
・・・・・・
ジョルジュ:
「しかし……また人間どもが邪魔をするか」
ロイ:
「え、っと?――魔王様?を手にかけたのは、人間なの?」
ジョルジュ:
「ああ――やはり、魔族と人間は相容れ
ロイ:
「私は人間と魔族の混血だよ」
ジョルジュ:
「…………」
ロイ:
「ワールウィンド公国は、そうだよ。魔族と人間が一緒に暮らしてる。そのために、ユーシア王国から独立したんだ、って。言い伝えられてるよ」
ジョルジュ:
「――――。汝の祖は。ムネモシュネ・マオハルト様に相違なかろうよ」
ロイ:
「そっか。ね、もっと聞かせて」
ジョルジュ:
「……そこから先は我も知らぬ話よ」
ロイ:
「……そっか」
夕陽が沈む。
夜になる前に、荒れた城内を片付けるべきだろう。
望もうと望まざると、時の流れは進んでいく。
昨日まで暖かい部屋で布団を被って寝て、
今日は差し込む隙間風に身を震わせるとしても、
明日がやってくる。
。o 〇
バアル:
『お手柄だったな!ジョルジュ!』
あれは、いつだったか。
ジョルジュ:
『なんの、これしき。魔王様のためならば』
これは、俺だ。
バアル:
『そうは言うがな……。何か褒美をやれれば良いが』
ジョルジュ:
『――――では。カンナ・グレイシアの血をいただきたく』
カンナ:
『えぇ……妾?』
…………。
バアル:
『だ、そうだが?』
カンナ:
『――――――よかろう!』
片手で髪をかきあげ、首筋を露わにするカンナ。
バアル:
『ひゅう』
俺は――、カンナのもう片方の手を取り、その指を噛んだ。
バアル:
『ジョルジュー!何を腑抜けておるかお前はー!!』
カンナ:
『クク……意気地なしめ』
できるか。
〇 o 。
書き溜めがないのと、話の展開を全然変えちゃう可能性ありますが見切り発車で出しちゃいました。