作戦会議、黒幕を探る方法は
僕達は静かに、ロットンさんが口を開けるのを待つ。ロットンさんは緊張してるのか、何回も深呼吸をしていた。
「まず、俺達はここで帰還するように通達があった。」
「ええーっ!何でよ、こんな状況で帰るの!?」
「ああ、そうするようにフェイクに言われたんだよ。」
「あっ呼び捨てしてる。」
「今は仕事じゃねぇからな。」
ロットンさんはラルフさんの言葉を流し、机にたくさんのメモを置く。フォージャーさんは、それを見て質問していた。
「ロットン、これは?」
「はい。これは私がフェイクについて調べたのですがね……この街の前のリーダー、最近亡くなっていますよね?」
「はい。ご病気が急に悪化したとの事です。」
「ですよね。これを。」
ロットンさんは机に新聞の記事を乗せる。
「フェイクと前のリーダー、武器の生産で揉めていたらしい。フェイクは今より生産を増やすべきだと主張し、リーダーと対立してたんだ。」
「それがどうしたんだ?今回とは関係無いだろ?」
「まあ聞け。理由は分からんがその後リーダーは死亡、実権を握ったフェイクは真っ先に武器工場のアップグレードを始めたんだ。これが偶然とは思えない。何か手を回して、リーダーを暗殺したのかもな。」
「そうなのか?……それと何か関係が?」
首を傾げるラルフさん。ロットンさんは少し苛立ってきた。
「黙って聞いてろ!それには多額の金が必要なんだよ。だが現状、武器を売るだけでは上手く資金が集まらないんだ。そりゃそうだろ、給料とか素材の購入で、思ったよりも使っちまうからな。それで考えたのが……ロストガルーダの卵だ。」
「「えっ!?」」
僕とミーさんは同時に反応する。だって、関係無さそうだもん!
「ちょっと調べたが、ロストガルーダの卵って物凄く高く売れるんだよ。幸運のおまもりになるみたいでな。だが、奴の住処周辺の環境が大変な事になる。だから冒険者や配信者での動向調査に留めているんだ。」
「それを……アップグレードの資金にする気か!」
「そういう事だ。だから、あの人さらい達に頼んで入手しようと企んだ訳だ。」
「……何で人さらいなんだ?」
「さっき言ったろ?普通の冒険者や配信者は受けないし、資金はたくさん欲しいのさ。稼ぐのに手段は関係無いんだよ。」
「マジかよ……。」
「ちょっと待って下さい!リーダーがそんな事をするわけがない!」
フォージャーさんは声を上げる。自分のリーダーが疑われてるんだから、怒るのは当たり前だよね。
「しかし、私が人さらい達を拘束した時、フェイクはタイミング良く現れ、奴らを撃ち抜いた。しかも、牢から出したのは誰か、それを聞くタイミングで。」
「そ、そうなんですか!?」
「ええ。更に奴らは、この街に仲間が居ると言っていた。上手く一般人に紛れたのかもしれないが、ここの職員達が常に目を光らせている。怪しい素振りを見せれば警戒出来たはず。」
「まさか……いや、そんな馬鹿な……。」
「直接リーダーが隠してたなら納得がいく。そして何より……。」
ロットンさんは、大きく息を吸って、口を開いた。
「フェイクは俺達が帰ると言った時、慌てて引き留めたよな?」
「ロットンさん、それはこの街の観光を楽しんで欲しいってフェイクさんが……。」
「ティム君も少し静かに聞いてくれ。あの場で連れて帰ったら、そのまま秘密が漏れると思ったんだろう。ここに留めて暴れされ、俺達を始末出来ればそれで良し、駄目なら鎮圧名目で奴らを始末すればいい。一応筋は通る。」
「でも……。」
するとロットンさんは、窓から外を覗く。
「最も、これは俺の妄想だ。だから明日の夜……直接街役場を叩く。」
「えっ?」
「はあ!?何言ってんだお前!?」
キョトンとしているフォージャーさん、一方のラルフさんは驚いてひっくり返ってしまった。
「奴がロストガルーダの卵を狙ってるなら、偉ーいお方との取引の証文が絶対ある。あの男ならきっちり証拠を持っているはず。証拠があれば無理やり引っ張れるだろ?」
その後ロットンさんは、僕達の方を見た。
「で、お前達には最初に言った通り、ここで帰ってもらおう。ここからは俺一人でやる。」
「ロットン……。」
「悪いな。ただの昇格試験だったのに、ここまで大事になるとは思わなかったんだ。これ以上巻き込む訳にはいかないんだよ。」
「でも、」
「分かったな?お前達五人には今日別の部屋を取ってある。そこで休んで、明日帰るように。」
「うーん……。」
そして彼は、フォージャーさんと二人きりになり、僕達は三人で別の部屋に行く事になった。
「なあ、どうする?俺達、帰った方がいいのかな?」
「はい、帰りましょう。」
「先生?」
驚くラルフさんに、僕は言葉を続ける。
「はい。僕達が居なくなれば、敵の警戒はロットンさんに集中する。そうすれば……また僕達が入っても気づかないかもしれません。」
「ねーティム、それって。」
でも、ここまで来て……僕達だけ帰るわけにはいかないよ!
「ロットンさんとは別方向から、その証文を狙うんです。それがあれば、黒幕を暴く事が出来る!」
「マジかよ!?」
「でも、これは危険な賭けです。僕達はやりますが、ラルフさんはどうしますか?」
「わん!わん!」
「かめ?」
「俺は……。ちょっと考えさせてくれ。」
うん、やっぱり悩むよね……。
「ねー二人とも。ちょっと相談があるんだけど……。」
「どうしたミー?お前も悩んでるのか?」
「いや、その……。」
「何だよ相談って。早く教えてくれよ!」
ラルフさんはミーさんを急かす。すると……。
「うん、これの事なんだけどね……。」
ミーさんは配信の機材を入れているカバンを取り出す。そこから出てきたのは……。
両手に乗る位のサイズの、小さい卵だった。
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